9月6日、日曜日の昼、池袋のグランドシネマサンシャインのDolby-Atmosのシアターで見ました。
前日にみた”The Odyssey”と共に今年を代表する作品たちであるのかどうか、など。
監督はYouTuberだったKane Parsons、これが長編映画デビューで低予算で大ヒットした(やっぱり)A24の。
ホラー、というふれ込みだったが表面だけだとぜんぜん怖さはなくて思弁SFのようなものとして入ってくるのかも。画面は意図的に30年前のビデオ映像の粗い画質と当時のアメリカのオフィスの滅入るようなのっぺりした薄黄色系で統一されていて、怪物やバイオレンス、血だまりの欠片やその気配はごく僅か - 音だけが全方位で圧してくるAtmosなので余計に、かもしれないが - 壁や通路を見つめて考えざるを得ない、という。
90年代の頭 - の日付が入ったビデオ映像が冒頭に流れるので、現代から90年代を振り返るようなお話? かと思ったらずっと90年代のままで推移していく - アメリカ西海岸の郊外で”Captain Clark’s Ottoman Empire”という格安家具店を経営しているClark (Chiwetel Ejiofor) は元建築家だが失敗して妻とも離婚して、お店の家具で寝泊まりしている自分に絶望して、セラピストのMary (Renate Reinsve)のところに通ったりしているのだが、怪しい自己啓発ビデオを出している彼女自身が相当いろいろ抱えていそうな。
郊外のぶっとんだ家具屋、というと”Punch-Drunk Love” (2002)でPhilip Seymour Hoffmanがやっていた役とか、半壊したセラピストというと、間もなく最低の邦題で”If I Had Legs I'd Kick You” (2025)がリリースされるRose Byrneを思い起こしたりするので、ぜったいになんか起こりそうなことは確か。
家具屋の調子のよくない電気系統を見にきた電気屋が、変なふうに取り付けられたブレーカーを見つけて、夜間に室内の明かりが妙な動作をしだしたのでClarkが調べていると、ドアもなにもない壁に光の輪郭が瞬いていて、そこを押したら壁の向こう側に行けてしまう。壁の向こう側には延々と続く空間 - 標識が裏返っていたり椅子が半分埋まっていたり下に抜けていたり、できそこないのモダンアートのような不気味なBackroomsのネットワークがあって、そこから元のオフィス/家具屋/住処に戻れることを確認したClarkは熱中してそことの行き来を繰り返して地図を作って、仕事場の社員ふたりを呼び出してビデオで撮ってみようとする。
彼らがビデオを持って入った先から展開される映像と顛末は”The Blair Witch Project” (1999) - 見たことないけど - の世界のようになってびくびくなのだが、そこにあったもの、なのか見出されたもの、なのか、これらの異物にMaryと、更にはAsync Research Instituteなる怪しい機関の科学者らしきPhil (Mark Duplss)が絡んで、フランシス・ベーコンの身体とか、なんでこんなことになってしまったのか、この先なにが起こるのか、等が続編以降で語られていく? のだろうか。
日本のオフィスビルはそもそも小さいのでそんなかんじはないのかもしれないが、アメリカの郊外の箱として深く考えずにでーんと建てられただけ、のような建物(箱)のだだっ広いばかりで奥に広がっていくバックルームの深い意味があるとは思えない配置とか広さとか殺伐さって、なんで? どうして? と陰謀めいた何かを想起させないわけにはいかなくて、そこに目をつけたのはうまいかも。例えばDavid Lynchだとどうしてもヒトの脳奥の病理や妄執に向かいそうなところを、空間の方になんかした? 起こった? って問うて、その返事の返し方が変だぞ、とか。
あと、80年代の終わりから90年代ってインターネットの登場でオフィス内の配線とかサーバー用の部屋の確保とかレイアウトを抜本的に見直すことが割とあって、北中南米の古めのビルでそれをやると、これなに? みたいな器具とか機械が発掘されて、そのまま棄ててなんか起こったらやなので放置、みたいなのばかりだったのを思い出したり。
もういっこは、オフィスの延長(書庫スペース廃棄)のような流れでクラウド等が登場して仮想でマルチのBackspaceが立ちあがって、これらが相当に入り組んで同期異常などが起こると例えばー。
でも、Clarkが壁をぬるりと抜けて向こう側にいく描写だけちょっとなー。あくまで即物的な行き来の世界のなかでしかありえない、とんでもないことを表現してほしかったかも。 向こう側に行った後はあれでよいけど。
既にいろんな人が言っているのだろうが、”The Odyssey”は神々の世界のBackroomsに迷いこんで20年間彷徨って還ってきた昔の人類のお話、だとか、少し前の”The End of Oak Street” (2026)もこれだろう、とか。
でも映画ってそもそも、単層的なBackroomsを繋いでそれらしく見せる詐術として発展してきたものよね?
9.14.2026
[film] Backrooms (2026)
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