11月14日、日曜日の朝、シネマカリテで見ました。
今年の前半にMUBIでピックアップされていた“In the Soup” (1992) のAlexandre Rockwellの新作。
監督の実の子供たちと妻をキャスティングして撮った家族と子供たちの世界。 ほぼモノクロで、子供たちが海ではしゃいだりしているときだけドリーミィなカラー画面になったりする。
Billie Holidayから名前を貰ったBillie (Lana Rockwell)と弟のNico (Nico Rockwell) はぼろぼろのおうちでいつも酒でよれよれの父Adam (Will Patton) の面倒をみながら逞しく楽しく暮らしていて、どうしようもなくなった時だけ別居して長髪の筋肉バカみたいなBeaux (ML Josepher)と暮らしているママEve (Karyn Parsons)のところに身を寄せたりしている。そのうち、クリスマスを前に泥酔したAdamがまじでしょうもない狼藉働いて、療養施設でアル中の集中治療を受けることになってしまったので、再びママとBeauxと暮らし始めるのだが、BeauxもクズなDV野郎でうんざりしていた。
そんな時、やはり親なし宿なしのひとりで近所をふらふらしていたBillieと同い年くらいのMalik (Jabari Watkins)と知り合って、一緒に憎たらしいBeauxの野郎を倒して(殺しちゃったかもしれない)フロリダに行くんだ/行こうぜっていう彼と一緒に3人で放浪の旅に出るの。
どんなに酷い状況で困ったことをされて辛くても子供たちはダメなパパが好きだし、Beaux(と一緒にいるママ)は嫌いだし、嫌なことから抜け出すために後先考えずに自分たちの王国を目指して旅立つ子供たちのお話しで、最後にどんな結末がくるのかわかっていても、彼らが追っかけて見ようとした世界にカメラはひっついて捕まえようとする。
ふたりと同じように虐待されてきた子であるMalikは彼らより少しだけ大人で、ふたりに花火とかはっぱとかいろんなことを教えてくれたりもするし、旅の途中で出会ったトレイラーに暮らす老夫婦は優しくご馳走してくれたりもするのだが、やはり彼ら姉弟とは少し違っていて、なんか違うんだけど、と思っていると..
“In the Soup”は映画を作りたい、っていう強い想いを抱えた主人公(監督)が、その想いのせいか目指すところからどんどん離れてとんでもない方に連れて行かれて巻き込まれて散々な目にあうドラマだったが、これも姉弟ふたりの楽しかったころの家族への強い想いにいろんな過酷な試練が襲いかかってきて、でもふたりの手は決して離れることがないの。酷くなればなるほど、彼らの想いは固まっていくので切ない - それってそんなに許されないことなの? なんで? って。
そんな彼らの道行をBillie Holidayの”I’ve Got My Love to Keep Me Warm” (1955)とか、Agnes Obelの“September Song”とか、Karen Daltonの“Something on Your Mind”とか、もちろんタイトルであるVan Morrisonの”Sweet Thing” (1968)が流れて、Billieがこの曲を口ずさんだりもする。(この曲って、大人になってしまった歌い手が子供時代のことを歌ったものではなかったかしら?)
でもとにかく、そんなふうにして描こうとした”Sweet Thing”はとってもSweetな、いまここにしか現れない得難いものとして描かれていることは確かで、これもまた監督個人の子供たちに対する強い想いが形になったものだとすると、べたべたのよれよれからどうにか離れてぎりぎりのところで作品になっているかんじはした。
子供たちもよかったのだが、Will Pattonのぼろぼろのよろけ具合がものすごくよくてたまんなくて。お酒が飲めないのであんなふうになる、のは無理だとしても、なかみは既にあんなかんじであんなふうに這いつくばってでもなんとかやっていけますように… あと残りすこしになった今年だけでも、ってサンタさんに祈る。
鎌倉で田中絹代の監督デビュー作と2作目を見てきた。 ものすごく素敵だったのでびっくりした。なんでこれまで見られなかったの? って改めて。 鎌倉はすごい人出で、なんなの? と思っていたら八幡宮があるからなのね - と今頃知った。 八幡宮ってなんなのかあんましよくわかんないのだけど。
11.23.2021
[film] Sweet Thing (2020)
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