11.10.2021

[film] Eternals (2021)

11月7日、日曜日の午前、Tohoシネマズの日比谷で見ました。ふつうの2Dで。
ほんとうは初日に見たかったのだが、あれこれ入ってしまって見れなくてとってもくやしかった..

原作はMarvel Comicsの同名コミックで、MCUの26番目で、当然スーパーヒーローもので、そういうものとして見るとあれこれ問題だらけなのかもしれないが、Chloé Zhaoの新作としてみると、すごくおもしろい。 あーこういう出し方をするのだなー、って。これを任せたMarvelの方もえらい。

何千年もの大昔に宇宙に何人かいる管理人とか支配者みたいなCelestialsのひとりのArishemが地球に巣くう化け物・魔物・ドラゴンみたいなDeviantsを退治すべく10人のEternalsを送り込んで、彼らはDeviantsと戦いながらひ弱な人類の成長とか進歩を見守って – 技術の獲得についてどこまで干渉すべきかの議論や葛藤はある - 7000年くらい人間のふりをして駐在してきて、16世紀くらいに最後のDeviantsを葬って使命を終えた彼らはそれぞれの土地でそれぞれの生活を送っている。でも天から帰ってこいの指令がないのはなんでだろう? と思い始めたころー。

現代のロンドンで学芸員をしているSersi (Gemma Chan)はSprite (Lia McHugh)と一緒に暮らしていて、恋人のDane (Kit Harington)とCamdenで会っていたら突然Deviantsに襲われて、そこをSersiの元カレ&夫でとっても強いIkaris (Richard Madden)が現れて救ってくれて、あいつらはなんで蘇ってきた?やばいかも.. ってアメリカの荒野にいるリーダーのAjak (Salma Hayek)を訪ねると彼女は殺されていた..

動揺しているSersiにArishemからのお告げが聞こえてきて、Externalsを率いる次のリーダーは君だ、って言われ、更に衝撃だったのは彼らExternalsのそもそもの機能とか役割とか、そもそも地球っていうのは.. というところで、さらにさらに、使命終了の期限まであと7日だか6日しかない、とか。ここのところはテーマの核心に近いし、賛否両論の源泉になっているところだとも思うのでここではあんまし触れない。 現地駐在員が消えてしまった統括責任者からの引継ぎ一切ないまま、本社から一週間でオフィス締めるから宜しくねって、いきなり丸投げされてしまうかんじ(生々しすぎる)。

こうして彼ら(Sersi, Ikaris, Sprite)は散り散りになっているEternalsを世界各地に訪ねていくの。地球の前のアサインメントでの記憶が消えずに苦しんでいる戦士Thena (Angelina Jolie)の面倒をGilgamesh (Don Lee)が見ていたり、Bollywoodの大スター&監督として成功しているKingo (Kumail Nanjiani)がいたり、同性婚をして家族と暮らしているPhastos (Brian Tyree Henry)とか、アマゾンの奥地で原住民と暮らすDruig (Barry Keoghan)とか、先生をしているMakkari (Lauren Ridloff)とか、それぞれの数百年があって興味深い。

その再会を通して、Sersiは自身のリーダーとしての資質と使命について悩んで、他のExternalsとはこれまでの地球との関わり-地球をどうすべきか - について議論して、腹を括って進化したDeviantsと戦って地球と人類を救うことにする。この辺の逡巡は、“Songs My Brothers Taught Me” (2015)~“The Rider” (2017)~“Nomadland” (2020)などを通してアメリカの土地に縛られつつもそこを出ようと、その根を断ち切ろうとあがく辺境の人々を描いてきたChloé Zhaoの諸作の主人公たちと比べてしまう。

彼女の過去作での主人公たちと明らかに異なるのは、こっちの世界には明確な善悪 - 善は微妙だけど少なくとも邪悪さ、のようなものがあること、はっきりと上位にいて運命とか使命とか圧をかけてくる支配者・権力者がいることで、ここに従うのか背くのか、どっちにしてもなにしても無駄だぞ、って言われる。でも、どうせ無駄だし消えてなくなるのであれば、最後の最低のラインとして、自分は「忘れないこと」を選びたいのだ、って。

ここにはこれまでのヒーローの悪を倒して未来に向かう圧倒的な力強さなんて微塵もなくて、でも彼らが護ってきた地球の民の「忘れない」ようにしてきた何か – 映画とか物語とかも含まれる - が彼らを突き動かす。ここにはすべてを忘れてなかったことにして突き進もうとする大国 - アメリカ、ロシア、中国 - や近代社会への、更には気候変動への視座(批判) – そこからこぼれ落ちた人々への目線 - もはっきりとある。そして、この視点のとっても大風呂敷で汎ヨーロッパ的なありようがアメリカで受けないこともなんとなくわかる。

そしてその舞台上で立ちまわるEternalsの、各々の属性に配慮しすぎではないか、というくらいの魅力 – ここがみんなわかりすぎるくらいにわかるので勿体ないわ、って。ひとり一本分の映画撮れるくらい - Chloé Zhaoには10年かけてそれぞれの“Nomadland”を撮っていってほしい – で、各Avengersの”Avengers: Endgame” (2019)に至るまでのストーリーを圧縮して押し込んでいるような。これはChloé Zhaoが昔からやっていたキャスティングの勝利なのだろうが、ひとりひとりの嵌まりようがすばらしい。

これまでのMCUとの整合もあんなもんかしら。Blipのこともやや苦し紛れに説明されていたし。でもあの大地震とか指が出てきたあたりでDoctor StrangeやCaptain Marvelは顔を出しそうなもんだけど。WandaのあのときだってSpriteが傍にいてあげたらな、とか。

Phastosが広島で人類に原爆のテクノロジーを与えてしまったことを悲嘆するシーンがあって、技術のところはわかりやすいけど、ホロコーストとかサフラジェットとか公民権運動など、差別や憎悪にまつわる悲劇のところには見守るだけだったのか、とか。昔からずっといる学芸員というとSersiの他にDiana – Wonder Womanがいて、彼女も第一次大戦のときはがんばったけど、第二次大戦ではなにもできなかったなあ、って。彼女たちがどちらも学芸員という職業なのは、なんかあるような。

もちろんこんなの漫画のお話だし、きりがないのだが、こういうのに思いをはせないとやってらんないくらいやってらんなくてしんどいのが今なの。 もう一回IMAXで見ておきたいかも。


こないだオーダーしたApichatpong Weerasethakulの”Memoria”本がもうドイツから届いた。はやい。
ぜったい何か禍々しいものが映り込んでいそうな撮影現場の写真多数に書き込みいっぱいのシナリオに撮影日誌に。Hernánが捌いていた魚の捌き方もちっちゃい図入りで書きこんであるの。おもしろいったら。

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