11.15.2021

[film] 花嫁の寝言 (1933)

11月6日、土曜日の五所平之助特集の『人生のお荷物』からの三本目、正確には四本目、この回は二本だて。

結婚したばかりの会社員小村(小林十九二)とまだ卒業できずにうだうだしている学友4人(斎藤達雄、江川宇礼雄、大山健二、谷麗光)が酒場で呑んでいて、4人はまだ学生なのに小村はひとりだけちゃんと卒業して就職して妻まで貰ってけしからんぞ、ていう話になって、しかも花嫁(田中絹代)は寝言までかわいいっていうし、と小村がひとり先に帰った後も延々恨み言が続いて、そんなにかわいいって言うのならみんなで見てやらないといけない - 花嫁の寝言を聞きにいこう! おう! ってみんなでぞろぞろ小村のうちに向かうと、彼はまだ帰っていなくて、事情をまったく飲みこめない花嫁は戸惑いながらも連中を家に入れて.. (← ふつうぜったい入れちゃだめでしょ)

ここまでの学生(壁にはKEIOって貼ってあるよ)の発言と挙動だけでレッドカード10枚分くらいのひどさなのだが、ナンセンスコメディだし、ということで許されてよいの? ってあきれて見ていると、学生たちは飲んだくれたまま畳の上で雑魚寝しちゃって、そこを夜更けに泥棒(坂本武)が襲って身ぐるみ剝いじゃっていい気味なのだが、当時はこれをみんなで見て笑っていたのかしら。

(これも、またしても)すべては酔った席でのこと、なのだろうけど、花嫁の寝言を聞かせろ、になる発想とか神経がわかんないし(花嫁だろうがなんだろうが他人の寝言に興味ある?)、それをみんなで共有しようとか、気持ちわるいーしかない。戦後の映画でも結婚した夫婦の家に呑み屋からそのまま同僚とかがなだれ込んで、妻はしょうがないって顔で甲斐甲斐しく給仕する場面をよく見たりするけど、とにかくにっぽんのビジネスの、会社とか呑みの「場」の尊重されっぷりっておかしいよね。(いろいろ見てきたし、コロナを経てゾンビのように復活しているのがうんざりだし、隔離緩和のビジネス優先だってほんとにひどすぎるし)

“Home Alone”みたいに家に入ってこようとする連中を田中絹代がぼこぼこにしてやればおもしろかったのに。

こういうのを経て田中絹代は自分で映画を撮らねば、って強く決意したのだと思う。

花婿の寝言 (1935)

映画宣伝的には「帰ってきた寝言!」みたいになるのだろうか、変わらずにひたすらバカばかしい(褒めてる)のだが映画としてはこちらの方がおもしろい。

新しめの住宅地で仕事を始めようとしている怪しげな心霊媒師(斎藤達雄)がそこらにいた酒屋の小僧(突貫小僧)にこの近所で奇妙なこととか困っているネタのありそうな家庭はないか? って聞いたらあるよ、って新婚の康雄 (林長二郎)と幸子(川崎弘子)の家を紹介する。ここの奥さんは朝にだんなを送りだすと寝ちゃうんだよ、って。 心霊媒師はそれを確認すべく隣の家に聞いちゃったらそこに住んでいたのが康雄の会社の同僚の彦助(小林十九二)だったもんだから火が燃え広がり、康雄の耳にも届いちゃってありえないーけしからんー離縁じゃ! って花嫁の父(水島亮太郎)と花婿の母(高松栄子)を巻きこんだ大騒ぎになるの。真相を明らかにすべく心霊媒師が幸子に催眠術をかけてみると..  結論はわかるよね。

まず、ごくふつうの話として、夫を送りだしたら、リモートで会議が終わったら、気分が乗らなかったり疲れていたら昼寝くらいするし、させろだしー。

『花嫁の寝言』が俺たちに見ることができないものを隠さず見せろ、っていう学生の腐った欲望に根差したものだとすれば、『花婿..』のほうは、夫に24時間奉仕すべき花嫁がそんなこと(昼寝)しているなんて許せない!っていう家族・ご近所一同が信奉する権威とか規範に根差したもので、どっちにしてもターゲットにされていい迷惑なのは花嫁の方で花婿はおろおろしているばかりでしょうもない。これはハラスメントなんかではない、花嫁が「家族」になるための試練みたいなものだとか言うのであればほんと吐き気しかない。いまのSNSのしょうもなさも元皇族の若い彼女に対するクソ報道も同じ極めて幼稚でグロテスクななにかに根差したものだって思い知ってほしい。ほんとにおおきなお世話なことばっかし。

どっちも昔はこんなにひどかったのだ、というので笑ってもいいけど、あんま笑えなかったのは、おそらく今のいろんなことが思い出されてしまったから、という意味ではとてもよい映画だった。 と思う反面、戦前から大して変わってないよね、だから戻りたくてしょうがないのねクズどもは、ってうんざり。


表参道の駅にたまごっち25周年て..  Union Squareのトイザらスに並んだなあー。あれ、なんだったのかしら。

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