2月28日、日曜日の昼、Criterion Channelで見ました。この日が監督Vincente Minnelliの誕生日であることを知ったのは見たあとだった。原作は1949年に雑誌に掲載されたGeorge Bradshawの小説 - “Of Good and Evil”。 邦題は『悪人と美女』。
ハリウッドで、映画監督のFred (Barry Sullivan)とスター女優のGeorgia Lorrison (Lana Turner)と作家のJames (Dick Powell)がそれぞれパリにいるJonathan Shields (Kirk Douglas)から電話だと言われて、彼とは話したくない、って拒んでいる。大物プロデューサーのHarry Pebbel (Walter Pidgeon)が3人を自分のオフィスに呼んで、Shieldsが君たちと一緒に映画を作りたいと言っている、君たちが過去、彼との間でいろいろあったことは知っているつもりだが.. ってひとりひとりの回想シーンにつながっていく。
やはりハリウッドの嫌われ者プロデューサーだったShieldsの父の葬儀で知りあったShieldsと監督志望のFredは、お金や後ろ盾がない中でB級映画のアイデアを懸命に練って、ようやくPebbelからそれなりの予算を調達することに成功するのだが、その映画の監督にはFredではない別の名前があったのでFredは裏切られた、って。 でもそれ以降の彼はオスカーを受賞するほどの名声を得る。
続いて彼が下積みの時代に尊敬していた有名俳優の邸宅で、彼の娘でアル中でぐでぐでだったGeorgia Lorrisonと出会って、危なっかしい彼女を励ましたりしながら主演女優として使って、スター女優にまで育てあげるのだが、彼女がShieldsを求めて彼の家を訪れたとき、別の女優と一緒にいるのを見て、彼とは縁切りして別のスタジオに出ていく。
最後に田舎の大学教授をしながら小説を書いていたJamesがShieldsの目にとまって、彼に映画の脚本を書いてもらおうと思ったShieldsは、Jamesの妻のRosemary (Gloria Grahame)ごとハリウッドに呼んで、やかましい彼女に俳優のGaucho (Gilbert Roland)をあてがって一緒に遊ばせておくと、Jamesの脚本は捗るのだが、一緒に乗った飛行機の墜落事故でRosemaryとGauchoが亡くなって、ふたりの逢瀬を仕込んでいたのがShieldsだったことがばれるとJamesは出ていく。 けど、その後にピューリッツァー賞を受賞する。
それぞれのエピソードはどれもShieldsによって強引に映画の舞台裏に引っ張りこまれた彼らの、それぞれに映画に賭けていた情熱がShieldsの裏切りによって中断されたり台無しにされたり、散々な経緯を辿って、でもその後にそれぞれはそれなりに成功したりもしている。でも、それでも最後にPebbleが改めてShieldsからの電話に出てみるつもりはないか、って聞くと、全員がNO ! なのだが…
映画製作というお金も人も必要な大博打に全身で打ち込んで入れあげて、自分のしたことに一切反省しないし謝罪しないShieldsがいかに人非人だったか、彼らに対する裏切りの仕打ちはひどいので、もう二度とあんな奴とは仕事しない、になるのは当然だよね、っていう展開なのだが、他方で映画製作のおもしろさに引き摺りこんでくれた最初に彼の仕事があったことも確かで、それぞれの回想はそれぞれがまるで映画のようにおもしろかったりする。
この当時のプロダクションシステムと今のそれは当然違うのだろうから、ここで描かれるShieldsの「裏切り」のダメージがどれくらいのものなのか、なんとも言えないのだが、その後に彼らが継続してこの仕事に携わることができたところを見ると、切り捨てて終了、のようなものでもなくて、むしろしょうもないけど映画製作ってすばらしいな、みたいに見えてしまうところは、こっちが甘いのかしら。
Shieldsのキャラクターは、David O. SelznickとOrson WellesとVal Lewtonのミックスだとか、Georgiaの父のモデルはJohn Barrymoreで、彼女はDiana Barrymore(Drewの叔母)がモデルだとか、そこに Judy Garlandの要素も少し入っているとか、いろいろあるらしい。
とにかくKirk Douglasが抱きあげたLana Turnerをプールに落っことすシーンとか、Lana Turnerが彼の邸宅を訪れてElaine Stewartとすれ違うシーンとか、ため息がでるような素敵なところがいっぱいある。全体としてはひでえお話だねえ、って思うけど、”The Bad”と”The Beautiful”だけでこれだけのものが作れてしまう驚異。
“The Last Tycoon” (1976)にしてもこないだの”Mank” (2020)にしても、この頃のハリウッドって本当に怪しい変な人たちがうようよしていたんだろうな、って改めて。
昨日ワクチン接種を受けて、12時間経ったけどべつに、とか書いていたが寝る時間になって、両腕を中心に全身に鈍痛、頭痛に微熱(体温計が電池切れ… )がぐあんぐあんにやって来て今日はいちにち死んでた。こんなことなら、接種を週のあたまにして平日に具合悪くなれば仕事もさぼれるかも(程度のことを考えるくらいには元気)。
夜にはBlack Country, New Roadのストリーミングがあったので見る。 彼らのレコードはオーダーしたものの他のリリースと合わせる事情でまだ届いていなくて、ほぼ初めて聴いた。 アンサンブルはほぼ予想していたかんじで気持ちよいったらないのだが、このバンドですばらしいのはヴォーカルではないか。
3.07.2021
[film] The Bad and the Beautiful (1952)
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