3.12.2021

[film] Goodbye Charlie (1964)

3月6日、土曜日の昼間、有料のYouTubeで見ました。

前にCriterion Channelで見たVincente Minnelli監督の”The Bad and the Beautiful” (1952)がおもしろかったのと、”Two Weeks in Another Town” (1962)とこれはハリウッド内幕ものと呼べそうな3部作のようになっているとThe New Yorker誌のRichard Brodyさんが書いてて、でも”Two Weeks..” はストリーミングでは見当たらなかった。のでこれを。 邦題は『さよならチャーリー』。

George Axelrodの1959年の同名舞台劇が原作で、舞台ではLauren BacallとSydney Chaplinが主役を演じたとか、プロデューサーのDarryl F. Zanuckは最初この企画をBilly Wilderに持って行ったが蹴られたとか、主演はMarilyn Monroeのところにも行ったけど蹴られたとか、いろんなエピソードがあるみたい。

洋上で歌えや踊れやの豪勢なパーティが開かれていて(ものすごくいっぱいいる人の間をスムーズに抜けていくカメラすごい)、そこでライターのCharlie Sorrel (Harry Madden)が自分の妻といちゃいちゃ別室に行くのを見たハンガリー人映画プロデューサーSir Leopold Sartori (Walter Matthau) - パーティの主催でもある - がCharlieを撃ち殺して海に落っことす。

Charlie亡くなるの報を受けた小説家で友人のGeorge (Tony Curtis)は葬儀に参加するためにパリからCharlieの自宅があるマリブのビーチハウスに飛んでくるのだが、着いてみるとその場にいるのはいかにも義理っぽいガールフレンド2人とマネージャーくらいで(いかにCharlieの人望がなかったか)、幾重にも哀しくて、ひどいことにGeorgeは借金と滞納税金まみれのCharlieの管財人にさせられている。

そんなのもあってソファで疲れてぐったりしていたGeorgeは夜中にドアを叩くBruce (Pat Boone)と毛皮のコートに包まれて前後不覚になっている若い女性 (Debbie Reynolds)に起こされて、Bruceは全裸で彷徨っていた彼女をハイウェイで拾った - 自分は予定があるからって彼女を置いて出ていっちゃうのだが、翌朝Georgeは錯乱した彼女に起こされて、彼女は自分はCharlieである、と主張する。なに言ってんだか、っていうGeorgeに彼女はこの家のどこになにがあるかとか、Charlieしか知らないような過去のふたりの悪事あれこれについて語るので、本当に彼女は彼であるらしい。

どうしたらよいのかわからないのでとりあえず彼女を未亡人Mrs. Charlie Sorrelということにして表に連れて歩くと、あのCharlieに未亡人がいた、っていう噂が広まり、それから拾った彼女のことを忘れられなかった大金持ちでマザコンのBruceが戻ってきて、こいつと結婚できれば借金はぜんぶ..  とか、保釈されてでてきたLeopold は鼻の下をのばして自分が殺したex-男性のところに寄ってくるし、彼女のゴージャスな見栄えでいろいろ回りだしてお決まりのお色気騒動も巻き起こって、すると今度は銃を手にしたLeopoldの妻が現れて..

堕落しきった生活を送ってて、友達も恋人もひとりもいないすれっからしのハリウッド映画人が、女性に転生した途端にモテモテになって、でも同時に自分の過去も含めていろんなことを学んで、よくなってきたかも、と思ったら全く逆のパターンにはまって殺されてしまう - 殺されたのは幽霊なのかも、だけど。

というのと、翌朝Charlieはやっぱり死んじゃったのか、ってしょんぼりしていると、近所に住むという外見だけは間違いない「彼女」が扉を叩いて、そしたら彼女の連れていた犬が…

公開当時だったら因果応報かわいそうー/おもしれー、で終わってしまったのかもしれないが、いまの我々にとっては当時の先端産業におけるジェンダーのありようをかなり的確に反映しているなにかとして読むことができて、いろいろおもしろい。 それは中身がCharlieであっても外見があんなであればあんなに(表面上は)厚遇されるのか/周囲の男たちは厚遇するのか、っていうのと、そのことをこれまで女性をそんなふうに扱ってきた(中身は未だ男の)Charlieも皮膚の内側でむずむず実感する、っていうのと、でも厚遇といっても、女性的なふるまいを前提とした表面的なちやほやでしかなくて、性役割期待をひっくり返すようなところまではいかない。時間の問題、というよりも単に男性&老人支配の手強さが。

あとは、Charlieが女性の内側で感じる女性の性とか肉のかんじと、GeorgeがCharlieを包んでいる女性に魅力を感じたときに生じるなんとなくホモセクシュアルな気まずいかんじって、つまるところなんなのか、とか。

あとは、Charlieの外見のトランスフォーメーション - 男性 → 女性 → 犬 が「堕ちていく」イメージだったのだとしたら、それって… とか。 今だったら、殺された女性が男性の身体に転生して現れるほうがおもしろいよね(すでにどこかにあった気が?)

で、これらはこの作品のドラマとしての欠陥を示しているわけではなくて、「夢」の裏側で魑魅魍魎がうごめく異界ハリウッドの異様さを(「リアル」というよりも)正確に映しだしている感があってやっぱりVincente Minnelliすごい、になる。 

もちろん、着せ替え人形になって無邪気にはしゃぎまくるDebbie Reynoldsのすばらしさと、それにど真ん中で応えるコスチュームの素敵なことったら。だからハリウッドすごい! になるのは思う壺なのだろうけど。

↓ の『乱れる』もこれも1964年。 同じ地球上で作られた映画とは思えない。
 

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