3.06.2021

[film] Quo vadis, Aida? (2020)

2月27日、土曜日の晩、Curzon Home Cinemaで見ました。

Jasmila Žbanić作/監督によるボスニア・ヘルツォゴビナ映画で今年のアカデミー国際長編映画賞に同国からエントリーされている。1995年に起きたスレブレニツァ大虐殺 - 8,000人以上のボスニアのイスラム教徒が、ムラディッチ - Mladić将軍の指揮下にあった部隊によって虐殺された悲劇を扱ったドラマ。

元教師のAida (Jasna Đuričić)はスレブレニツァに駐留する国連平和維持活動部隊 - 実質は軽装備のオランダ軍 - の通訳としてスレブレニツァに侵攻してきたMladić (Boris Isaković)の軍と市民の交渉(といっても一方的に決められるだけでなにもできない)のテーブルに同席したり、人が溢れかえっている国連軍敷地内と敷地外のそれぞれの市民にメガホンでメッセージを伝えたりしている。

敷地外の人々は安全圏のように見える敷地内に入りたくてぶうぶう沸騰しているし、敷地内に入ったとしてもこの先にどうなるのかは保証されていないのでどんより荒れている。Aidaは敷地外にいた夫と息子ふたりを自分のIDバッジを使ってフェンスの中に入れて匿うのだが、やがてMladić以下の武装した兵士たちが現れて、女性・子供と男性たちを仕分けして別々に移送を始める。 そして彼らがそのまま武器持ち込み禁止区域であるはずの敷地内にそのまま入ろうとしてきたのでAidaは直接、国連軍の司令官Karremans (Johan Heldenbergh)にそんなの許したらだめだろう、って必死で文句を言うのだが、Karremansは嫌気がさしているのか目に涙を浮かべて諦めているようでなんの手も打とうとしない。

このままではいけない、とAidaは別室に匿っていた家族3人に国連職員のIDカードを与えてほしい(一緒に脱出できるから)、と国連関係者に掛けあうのだが、誰一人としてその権限を持っているのが誰なのかわからないとか規則は規則とかたらい回しにされて、もういい! ってIDカードを作る機械のところに走っていくと今度は機会が壊れていて… で、ずけずけ押し入ってきたMladić側は当然...

決死の形相で基地内を走りまわるAidaの脳裏には平和だった時代の高校のミスコンのカラフルなダンスシーンが思いだされたりして、それは余りに映し出される今の地獄と乖離しているので夢の中のようで、見ていた時はなんでここにこんなシーンが? って思うのだが後になって重く効いてくる。

虐殺から25年が経った昨年にも9遺体の身元が判明したりしていて、十分に生々しくて、映画の最後にはスレブレニツァの女性たちと、殺された8,372人の息子、父親、夫、兄弟、いとこ、隣人たちに捧げる、と出る。

想定通りに機能せずに大量の犠牲者を出してしまった国連軍 – 国際社会の罪や限界について問題提起する、というよりも虐殺されてしまう人々をその傍らにいた人はどんなふうに見つめ、守ろうとしたのかをひとりの女性の激情と共に描きだす。 偶然だろうが、こないだ見た”Dear Comrades!” (2020)も虐殺の現場で行方不明になった娘を探してひとりで走り回る母親の映画だった。

“Quo vadis, Domine?”  - 「主よ、どこへ行かれるのですか?」 - 『ヨハネによる福音書』のなかで、キリスト教徒への迫害が酷くなっていたローマを離れようとしたペトロがキリストに会い、これを問うたペトロにキリストは「私はローマに行って再び十字架にかけられよう」と答える。カメラは後半ずっと走っていくAidaの背中を追っていくのだが、彼女も何度でもかの地に戻ってひとり地面を見つめることになるのだろうか。

生き残ることができるのが、迫害を逃れてあることができるのが女性なのだとしたら、男性は相変わらず自分のマスキュリニティの虜でなんも見よう考えようとしないバカばかりなのだとしたら(たぶんそう)、彼女たちの目と背中を追っていくしかないのかも。 ほんの25年前のこと、というよりも現在進行形でウィグルやミャンマーやシリアで - 世界の至るところで、もちろん日本でも、起こっている暴力にどう立ち向かうことができるのか、我々ひとりひとりの問題として見るのが正しいのだと思う。


今日の昼、ワクチン注射を受けてきた。 英国はまずNHSに入っていることが前提で、でもまだ入っていなかったので、それの登録〜問診とかがあって、それが済んでしばらくしたらIMで接種できる2〜3日後の候補日がきて、返したらすぐに来いって。紙に書いたりは一切なくて、腕をだしてる間にコロナかかったことある? アレルギーはある? 注射で気分わるくなったことある? って聞かれて返事したら3秒後に刺されておわり。大丈夫? も聞かれずにそのまま動線に沿って外に排出されてばいばい。家畜を捌いていくようなスピード感、かっこいい。これはNHSを楽にするためにやっているので、自分らは家畜でいいの。 

12時間が経過して、まだなんとか。  

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。