3.10.2021

[film] Moxie (2021)

3月6日、土曜日の昼、熱にうなされながらNetflixで見ました。 Amy Poehlerさんが監督ならば見るしかあるまい。久々に見た気がするハイスクールもの。原作は2015年に出たJennifer Mathieuの同名YAノベル。

シングルマザーのママ(Amy Poehler)と二人暮らしの高校生のVivian (Hadley Robinson)は新学期の高校に行ってもSNS上で早速外見のランキング合戦が始まっていることにうんざりで、同じ教室の新入生Lucy (Alycia Pascual-Peña)が、スポーツ万能で弁もたつっぽい、でもみるからに嫌なやつのMitchell Wilson (Patrick Schwarzenegger)とやりあっているのを見ても自分からなにも言ってやれないことにもやもやしている。Lucyが校長室に行って校長(Marcia Gay Harden)にMitchellの件で文句をいっても"harassed"なんて言葉を使ってはいけない、とかやんわり言われたり、一部の女子から見ると学校ぜんぶがそういう空気の中にある、と。

そんな時にVivianはベッドの下のママのトランクケースにママが90年代に作ったと思われるriot grrrl周辺のzineの束を見つけてへー、って思ったので、自分でも男子なめんなとか学校ふざけんな、みたいなのを作ってそれを”Moxie”って名付けて、夜中にコピー屋に持っていってプリントした紙束を女子トイレに置いてみたら評判を呼んで、それが学園の地下で広がって、タンクトップを着てきただけで帰宅をさせられた女生徒の件や初めから男子が前提になっているようなスポーツ奨学金対象の選定の件などをめぐってもう黙るもんか、の空気が広がっていく。

VivianはMoxieを作っているのは自分だ、とは明らかにしないままLucyたちと一緒に抗議活動をするようになって、それと共に幼馴染のClaudia (Lauren Tsai) - アジア系で親が厳しい – とは距離ができてしまったり、彼女に興味を持っているらしい Seth (Nico Hiraga)が理解者となってこっそり助けてくれたり、男友達を連れてきたママなんか別に勝手にすれば、になったり、家族親友周辺に定番の摩擦や衝突を起こしながらもMoxieを中心とした女性たちの勢いは止まらない。こうして彼女たちは勝つべくして勝って、それはいいんだけど、従来の学園コメディの痛快さとはちょっと違うやつかも。

いまの米国のハイスクール事情をまったくわからない状態で、それでも昨今のSNS界隈のフェミニズムに対する揶揄や理不尽で卑怯で幼稚で低脳な攻撃を横から眺めた上で書くけど、まずAmy Poehlerさんが、この内容を今の若い女性たちに向けて伝えようとしたこと、empowerしようとしたこと = Vivianの行動はぜったい正しいし、それをひとりの娘が(ブログでもSNSでもなく)zineを通してやろうとしたのもそうだと思うし、やっちゃえ、しかない。

でも、それでもいくつか気になったところを言うとー。

90年代のriot grrrlやBikini Killが歌っていたのって、好きにするからほっとけ、だったと思っている。どんなボロ着たって、何日も風呂に入らなくたってそれはあたしの自由だ、あたしが決めるんだ、何が悪い? だった。でもここでVivianが訴えることって、自分も含めた周囲の女性たちの反抑圧、反差別とかそういうので、そこにはなんかギャップがある。riot grrrlだったらzineを作ったらこれあたしが作ったんだ読んでね、って手渡ししたと思う。Vivianが最後の最後まで自分が書いたことを明かさなかったのは(おそらく)自分の周囲にある空気みたいなものに対して個人として立ち向かうことの難しさを最初から感じていたからで、それはそれで考えさせられる - 彼女のやり方がおかしい、と言うのではなく、ああなってしまうことはよくわかるので、そこまで大変になっているのだろうなあ、って。「わたし」の戦いから「わたしたち」の戦いへの変化。「わたしたち」にならなければ戦えないくらいにやってられない手強い何かがあるのか、と。

そして、90年代にああいうzineを作っていて、今もSleater-Kinneyの猫シャツを着ているようなママがなぜ娘の活動から距離を置いて外側に突っ立っているのか? わかるところもわからないところもある。ここは国際シンポジウムでも開いて徹底的に討論してほしいところ。

繰返しになるけど、Vivianの戦いは、彼女の側とそうじゃない側の間で起こる。男子はMitchellのようにすんごく嫌なやつか、Sethのようにペットみたいなよい子かに分かれてしまう。あんな水と油みたいに分かれるもんだろうか。その境目をぶっこわす救いようのないバカとかMeanなgirlsとかが出てきて暴れてほしかったんだけど。

Moxieを作り始めた頃からBikini Killの”Rebel Girl”とか"Hey Girlfriend"ががんがん流れてきて気持ちよいのだが、Vivian自身は聴いたことあったのだろうか? ママの傍で聴いていたのだったらあんなにくよくよ悩まなかったのでは.. とか。 

そういえば最近はNetflixで”Cobra Kai”も見ている(いまSeason3のまんなかくらい)のだが、あれもなんかきつい。”The Karate Kid” (1984)のシリーズをリアルタイムで見ていた時、あれは当時いっぱいあったバカ娯楽映画のひとつで、笑いながら見ていた。でも”Cobra Kai”はそれなりに成長した彼らがまじでがんばっていて(適当にやっててほしかったのに)、子供達はみんな彼らの戦いのために駆り出されているような。みんななんであんなバカな大人に乗せられて戦わなきゃいけないのか、いまの学園って、そんなに熾烈なの? とか。

でも、自分が高校のときに学園ドラマとか見てもばっかじゃねーの、しか思わなかったので、今の子達もそんなふうであってほしい。あんなの絵空事だ、っててきとーに無視しといて。


久々に外に出たら、ミモザもモクレンも桜も咲き始めていてあーあ、だった。
 

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