12月1日、木曜日の晩、BBC iPlayerで見ました。
Steve McQueenによるSmall Axeシリーズの3つめ。これも実在の人物をモデルにした本当のお話し。タイトルは英国国旗の3色を示す、日本ならRed and White ?
主人公が子供の頃、父親のKenneth Logan (Steve Toussaint)が明らかに差別的な職務質問を受けた後に故意に暴行されて大怪我をする現場を見たりしている。時代は70年代後半~80年代初、大きくなった彼 - Leroy Logan (John Boyega)は大学で科学捜査の博士号を取得しているのに突然警官になる試験を受ける、というので家族も父親は激怒してありえん、と背中を見せる。妊娠している妻も不安げだし、親しかった友人も離れていく。
ポリスアカデミーの試験では学力も体力も申し分なく、面接では君のような優秀な学生がなぜ? と聞かれたりする。彼は何度かネガティブな勢力と闘うこと、ブリッジとなって警察を内側から変えたいのだ、ということを言うのだが、実際に警官として配属されてみるとそこは差別と偏見まみれの地獄で、無視されるロッカーに落書きされる同じカラードの同僚は折れているし、現場に出てみれば黒人からは裏切り者のように見られるし言われるし、囚われた黒人容疑者への容赦ない暴行に対してもどうすることもできない – その容疑者がカメラを通してLeroyを見つめる目の強さ。がんばればがんばるほど同僚からは距離を置かれて孤立する。そのくせダイバーシティの象徴のように警官募集のポスターに起用されたりする(どっかの国みたいね)。
映画は家族からもコミュニティからも弾きだされてほぼひとりで奮闘し葛藤する彼の孤独と対話するかのように向き合い続ける。この点は”Mangrove”とは対照的で、”Mangrove”がコミュニティが団結して警察の暴力と闘う話だったのに対し、これはたったひとりで警察内の暴力や差別や偏見と闘う。裁判のようなリングも具体的なケースも味方になる弁護人も相談できる身内もいない。こんな状態でどっちを向いてなにができるのか - - “Red, White and Blue” ?。
そういう最中、Leroyがパトロール中に不審な影を目撃したのでバックアップを呼んで、そいつを工場の奥の方にひとりで追って暴行されてでも反撃してなんとか捕まえて、というシーンの迫力ときたらすさまじいのだが、それ以上にバックアップを呼んだのに何もしないまま談話室で笑っていた同僚たちに対して爆発する怒りがまたすごい。訴えられた彼らの顔から笑みは消えるのだが、でもおまえの話を聞くつもりはない、そういう顔になる。
この後、追いうちをかけるように、自分だけに昇進がないことを知らされたら.. ? 自分がLeroyだったらこの後どうするだろうか? 映画はここで終わって、答えは示されず、我々の足下に投げられる。これがほんの40年前の警察の内部で起こっていたことなのだ、と。 (事実としてはこの後、Leroyは辞めずに留まって、99年にNational Black Police Association (NBPA)を設立する)
Leroyの立場に置かれたとき、Leroyのようにひとり立ち尽くしている人を見たとき、あなたはどちら側に立ってどう動くのか、ということを問われているの。ここまで来てもなお、うちの国に差別はないから、とか能天気に言うのか - 言うんだろうな、あの警官たちのように。
とにかく主演のJohn Boyegaの抑制と爆発を小刻みに繰り返す演技がすばらしく、ここに貫かれてある怒りについては、誰もがそのまま彼がほんの数か月前に行ったBLMのデモでのスピーチを思いだすに違いない。あそこで彼は涙でぐしゃぐしゃになりながら心の底から怒っていた。放映前のBBCでのインタビューでもそこを指摘されると、照れ臭そうにしていたので、本当だったのだろうし、この映画で描かれた内容とBLMが訴えていることの根っこにギャップを見いだすことは難しい(残念なことに)。
音楽は、ルーツレゲエが流れる”Mangrove”とは異なって、Al Greenの“How Can You Mend a Broken Heart?”や“For The Good Times”が絶妙のタイミングで降り注ぐ。このテーマでAl Greenだよ、すごい! あと、Marvin Gayeが流れてきた白人の同僚の部屋でこれいいよねー、と言ったら無視される、というちょっと辛いエピソードも。
“The Undoing”を見終えたので、”Dash & Lily”っていうのを見始めた。Two Boots(ピザ屋)が出てくるのがうれしい。NYのピザ食べたい。
12.09.2020
[film] Small Axe: Red, White and Blue (2020)
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