12.23.2020

[film] Panto! (2014)

18日、金曜日の晩、映画監督のCarol MorleyさんがTwitterでやっている#FridayFilmClubが復活していて、そこで見ました。

ドキュメンタリー映画作家 - Jeanie Finlayさんによるドキュメンタリーで、この日の上映は彼女のサイトに行ってメールアドレス入れるだけ。iMDBとかにのっているオリジナルタイトルは”Pantomime”。なんだかしみる素敵なクリスマス映画だった。

パントマイムって、マルセル・マルソーとかが無言でやるあれ(こちらは「マイム」と呼ばれる)ではなくて、イギリスではクリスマスシーズンに家族で楽しむ歌あり踊りありのどたばた滑稽劇のことを指す。起源は16世紀くらいまで遡るらしいのだが、演劇としてのスタイルが確立されたのは18世紀頃で、元はバレエやオペラの上演後に演じられて、派手な衣装と演出で客席との掛け合いもあって、家族みんなで劇場で楽しむの - というのもこの作品を通して学んだ。

Sheffieldの少し下、地方都市のNottinghamにあるNottingham Art Theatreでクリスマスに上演される予定のパントマイム - "Puss in Boots" - 『長靴をはいた猫』のオーデイションに若者から老人まで、男女いろんな人たちが集まってオーディションをしていくところから。 演劇好きの素人、元劇団俳優、失業して家出してばかりの人、脳卒中から回復した人、などなど多様な経歴の人たちがいて、共通しているのはみんな芝居 - 特にパントが - 子供の頃の記憶と直結していて大好きだって。割とのんびりした演出家の女性、その下の少しかりかりした助手の女性、とかのスタッフの対比もおかしくて、全体としてはプロのプロダクションというより素人の寄せ集め手作り劇団で、でもシアター自身に予算もないのでスケジュールもきちきちで、でもやっぱり利益を出すことも求められている、と。

パントマイムでは主人公の男の子は女性が演じて、The Dameを男性が演じることになっているのだが、それぞれの俳優たちのグチのような悩みとか、初日に向かってこまこま多方面から噴出してくる問題がおもしろくて、特にそれが爆発して収拾がつかなくなってみんなが頭を抱えだすドレスリハーサルの様子が笑っちゃいけないのだろうが、楽しい。でも誰かの情熱とか知恵とかチームワークがそれらひとつひとつを解決していくわけではなくて、みんながなんとかなるじゃろ、みたいなノリで適当にやっている(ような扱いと撮り方と)。

こうして迎えた初日、裏側ではみんなそれぞれの持ち場でじたばた悶絶しているのだが、なんとか進行していくスリルがたまんない。 ドキュメンタリーとしては撮り方とか編集とかやや雑なかんじもするのだが、その適当な感じもこのテーマと題材にはうまくはまっているかんじがした。

で、とにかく客席の方はQueenの曲とかも一緒に歌ってくれて、子供達も喜んでくれたみたいでよかったねえ、になる。

こっちのTVでやっている大人気の”Strictly Come Dancing”とか、同様のお料理のとか、好きでやっている人たちが競ってがんばって、みんなよかったすごいよ! って最後に全員で感極まって泣いちゃうようなイギリス人の熱い気性、が割と出ているかんじで、自分が若い頃に憧れたイギリスのクールネスってこれの反対側にあったのかも、とか思ったりするのだが、このところ慣れてきたかも - コロナでみんな弱っているし、やさしくならないと。

でも、子供の頃にこういうのを家族で見た子が演劇とかバレエを好きになるのって、ほんとうによいことだよなー、って思った。


とにかく、冬至を過ぎて、ここから日が少しづつ長くなっていくことだけが希望だわ。
あと、Bad Religionの”Christmas Songs” (2013) (白盤)が届いたので、今年はこれを。

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