12.17.2020

[film] Sound of Metal (2019)

11日、金曜日の晩、MetrographのVirtualで見ました。
メタルをテーマにした音楽ドキュメンタリー、ではなかった。

監督は”Blue Valentine” (2010)や”The Place Beyond the Pines” (2012)のDerek Cianfranceの下で脚本を書いていたDarius Marderで、Derek Cianfranceは本作の原作としてクレジットされている。

Ruben (Riz Ahmed)は恋人のLou (Olivia Cooke)とふたりでBlackgammonていうパンク/メタルデュオでドラムスを叩いていて、RVで寝泊まりしながらツアーをこなしている。のだが、ある日突然Rubenの耳が聞こえなくなってきて、Louの動きを見ながらなんとか合わせることはできるものの、よくならないので薬局に行って医者を紹介してもらって診てもらうとこれからどんどん悪くなるので予断を許さない、人工内耳を入れればなんとかなるかも知れないが保険も効かない高価なものなので、当面は安静にしていること、と言われる。けどRubenはふん、てライブをやめない。

自分の生活のすべてだった音楽が、音の世界が失われてしまう - 生活もできなくなるしLouもそのうちいなくなってしまうかも知れない、という危機に直面してもお金を貯めて手術を受ければなんとか - そのためにもツアーを続けよう、というRubenにLouはだめだ、って返して、Joe (Paul Raci)という男がやっている聴覚障害者の施設に連れていって、こんなのやってられないと抜けたりの後に、とにかくいまはRubenがよくなるのが先だから、ってLouは彼を説得して、Rubenはひとり施設に入る。

施設に入っても基本の手話ができないわからないし、周りは子供たちばかりなので初めは不良で落ちこぼれの転校生みたいにふてくされて外に出てタバコとか吸ってばかりなのだが、毎朝早起きして紙になんでもいいから思っていることを書く、とか課せられたことをやっているうちに馴染んでいって、子供達に太鼓を教えたり、Joeからはこのまま施設に残ってくれないか、と言われるようになる。

でも、ソロになってパリでひとり機材をいじってライブをしているLouの動画を見て、自分にはやっぱり音楽しかないんだ、って思い直しRVに置いてあった機材とRVそのものを売ってお金を作って人工内耳のインプラント手術を受ける。インプラントがうまく動作するようになるまでの間、施設にいさせてくれないか、というRubenに、Joeはここは「ハンディキャップ」がある人のための施設ではないので悪いけどだめだ、と断る – ここはそういうことか、って考えさせられた。

手術から数週間後、インプラントのスイッチを入れる時がきて、Onにするのだが、ヒスノイズが混じったりバランスがおかしくなったり、チューブの中にいるような混沌とした聴界が現れて、期待していたほどではないのだが、これ以上はどうすることもできない。この状態でベルギーに滞在しているLouの実家を訪ねると、彼女の父のRichard(Mathieu Amalric - 突然でてきたのでびっくり)が迎えてくれて、裕福な彼女の実家でパーティに加わったりしたその晩、バンドの再開についての話をして…

ヤク中から回復したばかりで音楽とツアーが全てだと思っていた – 感覚と神経に依存して生きてきた男 - それを失った時に見せる戸惑い~怒り~怖れ~絶望~疲弊~孤独~手探り~手応え、などなどをRiz Ahmedは、ひょろ長い手足と狂信の何かを負った者、失うものが何もない者の目で、全身をフルに使って演じていてすばらしいったらない。一時期のRyan GoslingやBradley Cooperが、それより昔にはRobert De Niroがやったように危うい状態にある生を画面にそのまま曝けだしている。

全体のサウンドデザインが画期的で、Rubenの状態にはどう聞こえている/聞こえていないのかを発症時のもこもこ狭窄から施設での無音生活 ~ インプラント装着まで、生々しく再現していて、その有音・無音の錯綜した状態とRubenの感情がダイレクトに繋がっているさまがよくわかる。

そしてそんなRubenの軌跡と彼の頭になだれこんでくる音の世界が交わって反転するラストの一瞬がすばらしいったら。その瞬間の彼の表情を見てほしい。

もちろんトレーニングを受けたらしいRiz Ahmedさんの叩きっぷりもなかなか(予告をみて)。GISMやEinstürzende NeubautenのTシャツ着てたりとか(そんなふうな音?)。

話題になって、いま絶賛ストリーミング&上映中の”Mogul Mowgli” (2020)も見なきゃだし、1月にはBFIで彼の特集もあるし、彼の”Hamlet”も楽しみだし。


あんまりにもこの先の展望が暗くてひたすらつまんないので、とうとう”The Mandalorian”なんかを見始めてしまった。もともとまったくだめだったがもう相当だめになった(←自分が)気がしている。

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