9.15.2020

[film] De Jueves a Domingo (2012)

7日、月曜日の晩、MUBIで見ました。あと3日で見れなくなるよ、って出ていたので。

チリの女性監督Dominga Sotomayor Castilloさんの監督でデビュー作。昨年BFIで彼女の最新作 – “Tarde para morir joven” (2018) – “Too Late to Die Young”を見て、すばらしい青春映画だと思ったのにこれの後に続いたこの作品上映は疲れてて逃してしてしまったのでその借りを返す。英語題は”Thursday till Sunday”。

まだ外が暗い明け方に、車でどこかに出発しようとしている家族がいて、ママのAna (Paola Giannini)はパパのFernando (Francisco Pérez-Bannen)に「こんな状態で行ってもいいの?」ってちょっと棘のあるかんじで聞いている。家族はこのふたりに小学校高学年くらいのLucía (Santi Ahumada)と低学年で無邪気なManuel (Emiliano Freifeld)の四人で、木曜から日曜まで、サンチャゴの北の方にあるキャンプ場を目指してドライブの休暇に出かけるらしい。

子供達ふたり – 特にManuelの方はまだなんにもわからないのでほぼ動物と同じく好き勝手に放牧されているのだが、Luciaはいろんなことに気づいたり敏感になり始めた年頃で、姉として弟の面倒を見たりしつつ、泣いたり叫んだりして許される年齢ではないことを自覚し始めている。 なので父と母がそれぞれなにを思ってどうしようとしているのか、とりわけふたりの間の見えない空気を読む – なにが起こっているのかを真剣に学習しようとしていて、パパとママの間の仲があまりよくないらしいことについては気になっている。 カメラはその辺のLuciaの表情 – あまり起伏は激しくない、が故に映りこむ – を繊細に捕えようとしていて、ここが単なる家族の休暇を撮ったホームビデオとは異なる。というより微妙な亀裂も含めて木曜日から日曜日までの家族の背景が「楽しい休暇(見込み)」になったとき、そこに何が映りこむのか、という難しいテーマに取り組んでいて、うまくいっているのではないか。

途中で友人たち親子と落ち合った時にそこのパパとAnaが親しげにしているのにFernandoが少しつんけんしていたり、キャンプ場に着いてからもいろいろすれ違ったり、ママがひっそり泣いていたりするのを見たりしたときのLuciaは、どっちにつく以前のところで、みんな一緒に遠出したのにぜんぜん楽しんでいないし自分もあんま楽しくないし、こんなことがあっていいのか? 家族っていったいなんなんだ? って。

人里離れた田舎にコミューンのようにみんなで寝泊まりしてわいわい共同生活をする場所を作る場面は、“Too Late to Die Young”にも出てきて、監督の幼少期の思い出が反映されていることをBFIでのトークで話していたが、ここで少女は子供たちの立ち入ることができない、思いが通用しない夜のような大人の世界があることを知るの。

Luciaがもう少し年を重ねると“Too Late to Die Young”になることを考えると、それってこの頃のことだったのかしら? って胸が痛くなるけど、そこまで切実でもない – Luciaだったら“Too Early to Die Young”って言いそうな、そんなほっとけなめんな、のぶっきらぼうなかんじも悪くない。
雰囲気としてはスペインの山奥の子供時代を描いた”Summer 1993” (2017)にちょっと近い。 泣いても笑ってもえんえん車で運ばれていってどうにもならないところとか。 でも肝心なのはあの年、ひと夏のお話ではないこと - 木曜日から日曜日までで、またすぐに巡ってやってくる、そういう日々のことなのだと思う。

もちろん、車の上にしがみついたまま走ったり、川遊びをしたり、パパに運転を教えてもらったり、みんなで歌ったり、よい思い出になりそうなところもいっぱいあって、そこはふつうにいいなー、なんだけど。


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