6.14.2020

[film] Days of the Bagnold Summer (2019)

9日、火曜日の晩、Cursor Home Cinemaで見ました。なんとなく。なかなかほっこりするいいやつだった。
原作は同名のグラフィック・ノベルだそう(未読)で見てみると絵の方も味があるのだが、映画も滋味深い。

英国のどこかの郊外に暮らす母と息子 - Sue Bagnold (Monica Dolan)とDaniel Bagnold (Earl Cave)がいて(あと老犬もいる)、ママのSueはずんぐりむっくりの短髪メガネで、息子のDanielはべったり黒髪長髪黒ずくめのメタル野郎で、まずこのコントラストがたまんないのだが、夏を前に、Danielは夏休みを過ごす予定だったフロリダ - 離婚した実父が住んでいる - に行く予定が直前にキャンセルされて絶望してカリカリしてて、SueはDanielの気持ちはわかるもののどうすることもできないし、一方的にやつあたりされるのは違うと思うので毅然としなければ、って踏ん張ってて、とにかく他人からすればどうでもよいかんじに漲っておかしいふたりの緊張関係が最後まで続く。

せっかくのティーンの輝けるサマー!のはずがなんで.. の呪いで、互いに憎みあって陰惨なふうになるかというとそうではなくて、フェミレスみたいなとこに行けば目を合わせずにむくれあっているくせにデザートのケーキは分けあったり、ママが今日は海に行く日だから、と言えばDanielは黙ってついてくるし、なんかよいの。

することないならバイトでも行けば、と言われたのでDanielは履歴書を適当に書いて、いろんな店に入ってチラシみたいにぶっきらぼうに配るのだが採用されるわけもなく、本当はメタルバンドで歌いたいのでメンバー募集のビラを貰ってきてそいつらが練習している家の前まで行くのだがいくじなしで思いきれない。

学校の図書館で司書をしているSueは、窓口業務をしている時に歴史の先生に声をかけられて電話番号を貰って、かけてみようかどうしようか散々悩んで、息子に隠れて思いきって電話してレストランでぎこちなくデートしてみたりする。

どっちも他人とうまく会話できないのでそれぞれに対しても小声で愚痴とか悪態しか吐けない母と子が小さく溜息ついて天を仰ぎながら負けるもんか、ってにじり寄っていくんだか離れていくんだかの日々(Early Days, Salad Days, Dog Daysとか小見出しがつく)を重ねていく、そのとことこしたリズムが素敵で、音楽はこれしかないだろう、というくらいにBelle and Sebastianの楽曲がはまっている。はまり具合としては“About a Boy” (2002)のBadly Drawn Boyと同じくらい、というのがわかるひと?

Danielのメタルバンドの方は、意を決して一軒家のガレージのシャッターを開けてみたら中で演奏していたのは小学生の3人組で、ヴォーカルとしてオーディションを受けたら入れてくれて、決まっていなかったバンド名は彼の提案で、”Skull Slayer”になるの。 聴いてみたいな。 というわけでBelle and Sebastianの隙間にたまにデスメタルみたいのがごーごー聞こえてくる。 英国郊外にありそうな風景、でもある。

SueとDanielがふたりで部屋にいるシーン、向かい合うシーン、エスカレーターを移動していくシーン、食事をするシーン等の画面の色味、割り方、家具の配置とかとってもよいの。 いろいろ考えて作ったのかも。

Danielを演じたEarl Cave氏はこれが映画デビューで、みんなが知っているNick Cave氏のご子息なの(事故で亡くなった彼とは双子の..)。 声も素敵なのだから歌ってもよかったのに。
Sueのママも、実際に見たこと会ったことはないのにいかにもその辺にいそうな英国のママのかんじで、Bridget Jonesが年頃の息子をもったらこんなふうになるのかもしれない。

子供の頃の夏休みなんてこんなもんだったなー、って。そんな友達もいないし塾なんてなかったしお小遣いとかそんなになかったし、一日がとっても長くて、「することない」がいっぱい -  そんなことを思い出させてくれたり。


今日でGrenfell Towerの火災から3年、だそうな。 朝起きたら西の方に煙が立ち昇っていた平日朝のことを思い出す。そこからずっと被災者の人たちは苦しんで闘っていて今もそうで、それを言うならBlack Lives Matterの人たちもずっとそうだったのだ。 そういうずっと続いてきた痛みや苦しみを、そういうのが常に存在する/存在してきたことを正しく伝えるのが歴史とか社会の授業というもので、そういうのの理解なしに奉仕も貢献も感謝もあったもんじゃないでしょ、ていうことを学校の人たちに言わないといけないのって、なんか絶望的よね。

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