6.27.2020

[film] Yourself and Yours (2016)

21日、日曜日の昼間、Lincoln CenterのVirtual Cinemaで見ました。日曜昼間のホン・サンス。

今ここでは『浜辺の女』(2006)、『自由が丘で』(2014)、とこれの3本がかかっていて、これだけ見ていなかった気がしたので。
『あなた自身とあなたのこと』。2016年の東京国際映画祭で上映されているのね。

画家のヨンス(Ju-hyuk Kim)のところに友人が訪ねてきて、ヨンスの婚約者のミンジョン(Yoo-Young Lee)がバーで酔っ払って暴れているところを見た、という。彼女は昔そうだったけど今はもう暴飲はしない、って誓ったはず、ってヨンスは返して、でもミンジョンに聞いてみたらあたしはもう飲まないし飲んでないしそんなこと言ってるのは誰? って激怒して家を出て行ってしまう。(夜中に身に覚えないことをあんなふうに言われたら頭くるよね)

今度は別のカフェで彼女はジェヨン(Hae-hyo Kwon)に声をかけられて、前バーで一緒に飲んだじゃんとか言われるのだが、それも覚えがなくて、あーあたしは双子だから、もうひとりの方かも、とか言って打ち解けて、でも何度か会ってやっぱお別れしましょう、になって、同様に映画監督のサンウォン(Joon-Sang Yoo)にも同じカフェで声をかけられて、そこにジョエンも現れて、一瞬険悪になるけど同じ学校であることがわかってなにそれ、だったり。そして何回も妄想したりミンジョンのことをめそめそ忘れられないヨンスもやはり同様に..

ここでタイトルになっている「あなた」がミンジョンから見た男性のことを言っているのか、男性から見たミンジョンのことを言っているのか、作者から見た登場人物のことを言っているのか、もっと一般的なことなのか、どこに置くのかによって映画から受ける「教訓」みたいなのは変わってくると思うのだが、見ている間はこんなのどこがおもしろいんだろうか… ってなってて、終わってこういうのを書きはじめるとじわじわ湧いてくる、あたりがホン・サンスだねえ、って。

ミンジョンは冒頭に一緒にいるヨンス以外のここで出会う誰に対しても「あなたとは会ったことない、誰?」といい、下心しかない男はそれをきっかけにあれこれ突っこむ、というゲームみたいな駆け引きのなかで、男たちの過去の記憶とかイメージにある「あなた」とそれらを一切受けつけようとしない「あなた自身」がぶつかって、「恋の駆け引き」みたいのってこの両者を一致・統合させようとにじり寄っていくやりとりが快楽だと思う(なので男たちはがんばる)のだが、ここでのミンジョンは、それをはなっから放棄するのでこれってどういうことなのか、って。

他方で、そんな事情はどうあれ酒のんでだらだらやっていればなんとなくできあがってしまう、という(ホン・サンスの)いつものあれもあって、こういう世界を深いというのか酷いというのかわたしにはよくわからないしわかりたくもない。でもそういう条理みたいのがあること、それがホン・サンス的世界のひとつの根幹をなしているらしいことはなんとなくわかる。

恋愛をどこそこの到達点まで行ったら勝ちとか負けとかのゲームからできるだけ遠くに置いて、最初のぬるま湯というか冷や水というかの緊張感をだらだら持続させるためにずっとうろうろ彷徨ってひたすら飲んで、を繰り返して懲りないの。 本人たちが幸せならそれでいいやって、こっち側から眺める。

で、ただそういう目で改めてこの作品を見てみると、もうちょっと突然偶然のびっくりとか、え? そっちにいくの? っていう惨劇を目の当たりにするような崖から突き落とされるようなお手あげ感はあんまなかったかも。あまり遊びがなくてきれいに纏まりすぎているような。

でも久々に見ることができてなんか懐かしかった。


2日前からずっと書いているけど、とにかく暑すぎてなにもかも嫌になって夕方にWhole Foodsに駆けこんだら、ちょうど店内で”Friday I'm in Love”がかかった、っていうのが唯一のピークだった金曜日。

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