13日、土曜日の晩、ふつうのYouTubeでお金払って見ました。
待望のJudd Apatow新作。日本の洋画好きの人たちがClinton Eastwoodの新作を待つのと同じようなかんじ(いや、違うかな..)で待っていた。
前作(ドキュメンタリー以外)の”Trainwreck” (2015)が主演のAmy Schumerの原作だったように、今度のも主演のPete Davidsonが脚本に参加している。長さは136分。
Scott (Pete Davidson)は24歳、高校を中退して職につかないまま、タトゥーアーティストになりたいけど特に努力もしないで仲間とマリファナ吸って、恋人未満のKelsey (Bel Powley)とセックスしたりだらだらしている日々。消防士だった彼の父は彼が7歳の時にホテル火事の消火作業中に亡くなり、母のMargie (Marisa Tomei)は病院のERでナースをしてて、妹のClaire (Maude Apatow)はよいこで対岸の大学に進学するので家を出ていくところ。 Scottだけ、幼時に父を亡くした経験とADHDもあるので母も妹もとっても気にかけて心配しているのだが、彼はそんなの気にしないで地元Statenの王様として傍若無人に振舞ってて懲りない。
ある日みんなでだらだらしているところに子供が寄ってきてタトゥーを彫りたいっていうので、いいよって少し彫ってやろうとしたら痛いって逃げちゃって、その後にその子の父親 - Ray (Bill Burr)が彼の家に文句を言いに来て小競り合いになるのだが、Rayは翌日に戻ってきてMargieに丁寧にお詫びしてお食事でも、って誘うの。こうしてRayとMargieは親密になっていき、ScottはRayのふたりの子供の学校の送り迎えまでやらされて、そういうのがおもしろくない彼は自棄になってめちゃくちゃしたら家を放り出され、行き場がなくなった彼の前にはRayの仕事場で、かつての父の仕事場でもあった地元の消防署が…
Judd Apatowは、初期の“The 40-Year-Old Virgin” (2005)とか“Knocked Up” (2007)といった下ネタ満載のおふざけコメディ(個人的にはそう思ったことないけど)から少し離れて時間も長尺になってきて、”This Is 40” (2012)あたりからぶっ壊れて周囲から相手にされなくなった主人公がなにかを見つけてもち直す - 実はそんな変わってないけど - ようなドラマを語るようになって、そういうのって苦手なはずなのだが、彼のがなんかよいのはなんでだろうか?
単純にいうと、ダメだった人が洗濯されてきれいなよい人になるのではなくて、ダメな人は多少はよくなるけどダメなまま、周囲がそれを受け入れてなんとかするようなお話しになっているのと、更には周囲にいて絡んでくる連中も決して「まとも」とは言えないみんな傷を抱えて穴に嵌まった人たちであることが明らかになる – そういう構造のドラマになっているから。それは同調や適応を促してくるようなドラマではなく、出会いと発見が転がしていくドラマで、恋愛ですらそういうやつで、それは我々みんながふだんうんざりしたりしてるしょうもない世界のそれと地続きだから。そして、そういう地続きのありようを説明するには2時間以上必要なのだと思う。
(あと、”Trainwreck”もそうだったけど、これらをいつも父の不在、がドライブしている)
Scottが消防署のなかでみんなにからかわれたり弄られたりしつつ、署員のSteve Buscemiたちから生前の父の姿 – 決して母から語られることはなかった – を聞くところなんてたまんないし、他にもいろんなエピソード – 薬局襲撃とか、消防署に現れる血まみれ男とか、ScottがRayにタトゥーしてあげるのとか – があって、どれも王様のそれとしか言いようがないの。
とにかくPete Davidsonはすばらしいのだが、それ以上にすんばらしいのがMarisa Tomeiで、ScottのママとしてRayの恋人としてせわしなく立ち回って、彼女の瞳がじわってなって声が震えだす瞬間て、なんでいつもこっちまで震えてしまうのだろう、って。
あと、Scottの彼女役で出てくるBel Powleyさんも、そういえば”The Diary of a Teenage Girl” (2015)で激怒したママに家を追い出される役だったねえ。
音楽は今回はヒップホップ系がやや多めであんまし来なかったのだが、ひとつだけ、消防署のみんなと歌うThe Wallflowersの”One Headlight”が。これってPete Davidsonが実のパパと車のなかでよく歌っていたんだって。そしてエンドロールに出てくるそのパパ - Scott Davidsonって... (あとは劇場で)
いまのきつい時代、ほんとうに必要なのはApatow印のコメディだって改めて思った。
なんか彼の映画って見ていくのって好きなバンドを追っていくのと似ていて、最初の頃は勢いだけのバカバンドって見ていたのに、だんだん上手くなって深みも出てきて新譜が楽しみになって、一緒に成長してきたようなかんじ。あくまでもかんじ。
スタテン島、一度も行かないままだったけど、やはり行ったほうがよいのだろうか。でもほんとなんもなさそうだねえ..
曇って晴れて通り雨が来て湿気があって、という夏の前夜模様が続いていて、そうなってくるとLunaの”Penthouse" (1995)を出してかける。 NYの6月にも合うけどLondonのにも割とあうの。
6.16.2020
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