11.04.2018

[film] Bohemian Rhapsody (2018)

10月25日の木曜日、Picturehouse Centralで見ました。BFIのIMAXで見るべきだったのかもしれないが、Dolby Atmosのとこでいいや、にしてしまった。

英国のレビューは全般にあんまよくなくて、まあそうかな、って。
音はものすごくよいし、これだけでもでっかい音のシアターに聴きにいく意味はあると思うし、Freddie Mercury を演じたRami Malekもよいと思うし、ところどころバンドのよい絵が描けているところはあると思うけど、でもこれがQueenというバンドを描いたドラマなのだとしたらだめだ、っていう。だってQueenなんだからさ。

世界的な大成功の裏側ではこんな.. ていうバックステージものの定石で、しかもそこに人種のことやHIVやLGBTQのエッセンスがちょっとづつ入ってくるのであれば、いまどきこんなにおいしい話はないのかもしれない、けどQueenに関してはそんなの見たくない。だってQueenなんだから。

Queenは自分が中学生の頃に最初のピーク - AerosmithがいてCheap TrickがいてKissがいてQueenがいた洋楽の幸せな時代 – があって、でも自分にとってのQueenは2ndまで、「手をとりあって」のあたりに来るともうこれ無理、になってSex Pistolsの”God Save The Queen”を聴いたあたりから離れてしまうことになる。(でもラジオで今泉さんのQueen情報はちゃんと聞いていたからそんなに疎遠でもなかった気がする)
であったとしても、そんな彼らの全盛期がいかにゴージャスで圧倒的だったかを知るものとしては、あれがFreddie Mercuryの実像だったのだとしても見たくなんかないし、なによりFreddieがこれ見たら怒るとおもうよ。

Freddie Mercuryはワイルドで異形で獰猛で傲慢で問答無用で、周囲をあんぐりのぼけナスに変えてしまう圧倒的な、完全無欠の、パーフェクトな変態だった。その解析不能な変態を天文物理学者とか歯医者とか電気技師とかの理系ギークが取り囲む奇怪な花園に仕上げたのがQueenで、ビジュアルも漫画みたいにわかりやすくて、こういうのが奇跡的にそろっていたからこそ彼らの音楽 – ハードロック -はどれだけ言葉を尽くしても語りきれないくらいのきらきらとスリルと華麗さに溢れたものとして襲いかかってきたのだが、そういう魅力を正面からぶちかまして客を鷲掴みにしないでどうするよ、てことなの。
彼らがどれだけ華麗なレースを繰り広げて伝説のチャンピオンとなったか、そこらにいくらでも生えていそうなステージパフォーマーとか、60-70年代のロック泥沼物語と同列に置いて矮小化しないでほしかった。 Queenを知らずに来ている若い子たちにこんなめちゃくちゃをやってスターになった連中がいたのだということ叩きつけてほしかった。

1985年、Wembley StadiumでのLive Aidのパフォーマンスが始めと終わりに置かれていて、ここでの「奇跡の」復活に至るまでが物語として描かれるのだが、当時、Freddieやバンドがあんな状態にあったなんて殆どの者は知らなかったし、でも、それでも圧倒的なパワーを見せつけたことを聞いて、あ、戻ってきたのね、とふつうに思った。だからこの映画を見てやってくる感動と、当時の人達がパフォーマンスを見て感じたそれはおそらく異なる、そこが(そこも)なんかなあ、だったの。
Queenはそんな配慮しなくたって、Freddieの拳を振りあげたあのポーズだけで圧巻だったのだからそこを掘りさげてほしかった。 ていうか、Live Aidのとこはあんな小細工しないで当時の映像まるごとそのまま使えばよかったんじゃないの? (Bob Geldofとかかっこよすぎやしないか)

あとね、John Deaconはただのよいひと、Roger Taylorはいらいらしてるひと、Brian Mayはなんも考えてないひと、みたいに描かれているけど、そんなわけないの。バンドのひとりひとりのキャラがばらばらに立ってて、でもそこにすばらしいケミストリーがあった、Freddie Mercury物語じゃなくて、Queenのバンドストーリーであるなら、そこは最低限押さえてほしかった。(ひょっとしたらこれ、Freddie Mercury物語なの?)

もういっこいうと、彼らの音楽の志向 - オペラ的なトータルアート、美への執着 - 特にファッションのとこはフォーカスして欲しかった。レコーディングしてツアーして内輪の喧嘩、そんなのばかりじゃなかったに決まってるのに。

タイトルにもなっている”Bohemian Rhapsody”がフルで流れないのもなんかさー。
“Wayne's World” (1992)で再発見されたこの曲の魅力をあの映画がもたらしてくれた以上のカタルシスで本家にぶちかましてほしかったんですけど。

なんかどうでもいいことばかり書いてるけど、Live Aidのとこ、改めてあの日、日曜の昼間にTV中継ぶち切られたことを思い出して当時の怒りが再沸騰した。あのせいでいまだにフジTVはだいっきらいだし、ああいう恨みって30年以上経っても消えないもんなのね。

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