11.18.2018

[music] Alison Statton, Stuart Moxham and Spike

11日、日曜日の晩、Café Otoで見ました。

Young Marble Giants (YMG)としてはもう活動しないようなのだが、このメンツであれば、と。
70年代の終わりから80年代の初め、今はpost-punkとしてカテゴライズされる彼らの音ってなんだったのだろう、といまだに考えてしまうことがあって、簡単にいうとそういうことをいまだに考えさせてしまうくらいに後継のない、ぽつんとそこに出てきた音であり声だったのだなあ、と。 変なところに置かれってそのままにされた大理石のようなやつ。

7時半にドアが開いて、開演は8時半で、右手からStuart, Alison, Spike、Stuartはちゃんとした身なりのスーツ姿で、ぜんぜん関係ないけどSlapp Happyの時のPeter Blegvadさんとおなじような佇まいと雰囲気。 お客さんの前で演奏して、何かを広めてるのだからね、って。

で、彼が新しいのだってやるもん、と新曲の弾き語りから始めて、ぜんぶ新曲だったらどうしよう… と思ったけど続けて”Salad Days”をやったので少しほっとして、そこから先の流れはリラックスして次なにやろうか、と3人で目配せしたり相談して、Alisonは歌詞を探して譜面台に乗せて、せーの、で始まって、時折間違ったりして、2分くらいでしゃん、と小石に躓くようにしてぷつりと終わる。

2台のアコギの絡みは悲しいほどぺらぺらで爪と弦がぶつかる音まで容赦なくぎこちなくて、そこに乗っかるでも被さるでもなく、爪と弦と等間隔で波を寄せてくるAlisonの歌と声。 融和しない、でも分解もできない、石ころ(大理石)のように冷たくそこにあるだけのすかすかした音と言葉と。

愛想 - 不愛想とか暖かい - 冷たいとか、そういう形容から離れて弦が爪弾かれて物理的に震えるのとおなじように声もそこにある。 "Final Day"が終わったところでStuwartが今時点で米国政府が保有している核兵器の数は..  とニュースキャスターのように喋り始める、そんなようなトーンで奏でられていく静かで喧しい音楽。

欲を言えばもうちょっとだけWeekendの曲があればなー、だったけど、The Gistの曲を結構やっていたのが嬉しかった。”Love at First Sight”なんて何十年ぶりに聴いたけど、いい曲だよね。(Stuartも自分が書いた中で一番いい曲かも、って)

1回のアンコール含めて1時間半くらい。お喋りが半分くらいだった気もしたが、すばらしく充実していた。彼らのキャリアをおさらいする、というだけでなく、それを通して我々のここ30 〜 40年の”La Varieté”を考えさせてくれる、そんな隙間と余裕がいっぱいあって。

Stuartが、初めてロンドンでライブをやった時のことを話して、その時一緒に出たのがThe Raincoatsで、フェミニストみたいな人達がいっぱい来ていて怖かったことを思いだす、と。その時に端の方がざわざわしていたのでRaincoatsの関係のひとがいたのかしら。

お土産にStuartの詩が載っている小冊子 - 挿画はWendy Smithさん、ものすごくちっちゃくStuartのサインがある – を買った。(£10)

直接関係ないけど、今年も音楽関係のドキュメンタリー映画祭 - Doc'n Roll Film Festivalがあって、ばたばたしているうちに気づいたら終わりそうで、その頃になってメニューを見てみれば”The Wedding Present: Something Left Behind”はあるわ、RaincoatsのGina Birchさん監督による“Stories from She Punks”はあるわ、ばかばかばか、って頭を抱えたのだが、10日の夕方にBarbicanで1本だけ見たやつ。

Anne Clark: I’ll Walk Out Into Tomorrow (2018)

Anne Clarkさんは80年代初にVini Reillyと、更にはJohn Foxxとの共演盤を出していた人で、いつの間にか消えちゃったなあと思っていたのだが、実情はVirginから全米進出をする手前でマネージャーとかにお金とかぜんぶ持ち逃げされて、沈黙せざるを得なかったのだと。

でも彼女は北欧に渡ってずっと音楽(ややエレクトロ寄り)を作り続けていて元気です、という近況も含めた報告ドキュメンタリーだった。 上映後にはAnne Clarkさんも登場してQ&Aもあった。80年代初期のあたりのことをもう少し知りたかったんだけどな。

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