3日の月曜日の晩、BFIのJoan Crawford特集で見ました。
“Possessed”って、彼女の評伝本(by Donald Spoto, 2011)のタイトルにもなっていて、31年にもClark Gableと共演した同名の映画(内容は全く別もの)があるのだが、31年の方はタイミングが合わなくて見逃してしまった。邦題は『失われた心』。
そしてこれもすごかった。それにしてもこの時期の彼女って、“Mildred Pierce” (1945) – “Humoresque” (1946) - “Possessed” (1947) - “Daisy Kenyon” (1947) と主演していて、どれ見てもとんでもないの。この作品もアカデミーの主演女優賞にノミネートされている。
ロスの路上を焦燥しきって真っ青な女性が彷徨っていて、うなされるように”David.. David…”て呟いていて、そのまま倒れて救急車で病院に運ばれる。(ここまででもう十分にこわい。彼女をなんとかしてあげて、って)
担当の精神科医が見たところではスキゾフレニー(統合失調症)による心身喪失状態にあるようだ、と。
やがて意識を取り戻した彼女は少しづつ過去を語り始める。
Louise (Joan Crawford)は、Washington, D.Cのお金持ちのDean (Raymond Massey)の家で住み込みの看護婦 - ほぼ寝たきりのDeanの妻のPaulineの世話をしていて、それとは別に池向こうの近所に住むエンジニアのDavid (Van Heflin)にべったり一途に惚れてて、一緒になりましょう、と誘うのだが遊び人ぽいDavidはつれなくて、まともに相手をしてくれない。
そんなある日Paulineが家の前の池に入ったのだか落ちたのだか亡くなってしまい、Louiseは自分がしっかり見ていなかったからではないか、と苛まれるのだが、他方でDeanからは突然結婚してほしい、と言われて驚愕し、このタイミングで? あたしはDavidが好きなのに? とか、でもここで断ったらここを辞めるしかなくて、他に行き手があるわけでもなし、とか悩んで、Deanの娘Carol (Geraldine Brooks)からは財産目当てで父さんを取るのね、とか言われるし、大変なの。
結婚したらしたでDeanの会社に雇われたDavid(なんで雇うのよ!)が頻繁に自宅に訪ねてくるようになり、そうしているうちにDavidとCarolがみるみる仲良くなって婚約までしそうになっているのを見ているうちに...
筋だけ追っていくとなんか突拍子もない、変な展開の連続なのだが、真面目なLouiseの目で見てみればひとつひとつの出来事がいちいちトンカチの一撃でダメージがでっかすぎて、だんだんに自分の内面の声が他人の声として聞こえてきたりその逆が起こったり、Paulineは実は自分が殺したのではないかとか、Carolを階段から突き落とす妄想に飛び起きたりとか、そんなふうに現実との境界がだんだんに薄れていく(+それが実感として掴めない)様がリアルすぎて怖いったらない。
(この辺の描写は従来のハリウッドのそれというよりヨーロッパ - ドイツの表現主義映画のよう。そのままサイレントにできる)
それはもちろん、Louiseが悪いわけではなくて、誰も悪いことなんてないのだが、自分の愛を受けとめて貰えないことから始まったこんな自分も世界もなくなっちゃえの妄想ループに絡まってしまうとあとは転がり落ちるだけ。 抜け出すことは難しい。
スキゾフレニーの患者の演技をするためにJoanは関連する本を読み、医師にインタビューして病院にも6週間通ったそうで、それなら当然かも、の凄まじさだし、女性のメンタルイルネスを扱った映画として米国だけではなくヨーロッパのアートハウス系のシアターでも受け容れられたのだと。
それにしてもDavidの股間を撃ち抜いた直後に少しだけ歪む彼女の口元、夢に出そう。
9.18.2018
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