8月30日、木曜日の晩、CurzonのBloomsburyで見ました。英語題は”The Guardians”。原題だと女性のGuardianたち、ということ。
監督がXavier Beauvois、主演がNathalie Baye、撮影がCaroline Champetier、音楽がMichel Legrand、原作はErnest Pérochonが1924年に書いた同名小説、というぱりぱりのフランス映画。 アライグマが出てくるSFとは関係ない。
第一次大戦の1914年から18年頃のフランスの田舎で、息子たちはみんなドイツの方に戦争に出てしまっていて、Hortense (Nathalie Baye)は娘のSolange (Laura Smet - 実の娘ね)と家族の農場を切り盛りしていて、でも年齢もあるしきつくなってきたので、町に相談にいってメイドのFrancine (Iris Bry)を雇うことにする。両親のないFrancineは真面目に黙々と働いてくれるのでHortenseは気に入って、彼女との契約を延長して農作業は捗るようになる。
という大変だけどあまり波の立たない農作業と前線からたまに汽車で帰ってくる男たちがいて、Solange の夫のClovis (Olivier Rabourdin)とかHortenseのお気に入りの息子Georges (Cyril Descours)とか、彼らはそれぞれに戦場での自分たちの行為やその記憶に苦しんだりしていて、だからといって女たちにはどうすることもできない。 教会で報告される戦死者の名を聞いて慟哭したりするくらい。
やがてGeorgesがFrancineと仲良くなって、手紙をやりとりしたり村の外れで密会 – とっても素敵なシーン - したりするようになって、でも彼には元々家族公認の許嫁のような村娘がいたのでそれがHortenseの気に障って、あと村に来ていたアメリカ人兵とFrancineが話しているところを誤解され、Francineは一方的に解雇されて、でもでも彼女のお腹には..
四季を通してゆったりと時に厳しく描かれる農村の風景 - 手作業から機械とかトラクターが入ってだんだんに近代化していく – と、それに寄り添って汗かいて働く女たちの間に割りこんでくるこんなメロドラマ - これも男たち抜きでもなんとか回せている畑仕事とおなじように、なんとかなってしまう – そういう大らかなうねり、その中にあって、それを揺るがずじっと見つめる女性たち - Les gardiennes - を描いた作品で、なかなかよいの。
男たちは前線で命をかけて戦い、女たちは懸命にそれを支えた、みたいに熱くねちっこくドラマチックなやつじゃなくて、てめーらが勝手に起こした戦争だろてめーらで始末つけろ、こちとら畑とか牛とか手一杯で構ってるヒマねえんじゃぼけ、みたいなかんじ。 直接そんなことは言わないけど、運命を受け容れるでも抗うでもなく、ひたすら耕して蒔いて刈っていく、彼女たちの仏頂面のなかに刻まれているそういう過ぎていくものとか時間に対する態度、かっこいいったら。 かっこいいというか、それまでの戦争でも彼女たちはずーっとそうだったのだろうな、ていう。
その辺のゆったりした、どちらかというと冷たく突き放したような労働と人々の描き方が素敵で。
あと、ここに出てくる男たちはどこまでもしょうもなくて、しょうもないっていうのは暴力を振るうとか卑劣とかそういうのではなくて、農作業観点ではほぼなんもしてない。 ここに居場所がないから戦争に行ったのか、戦争行ったらバカになっちゃったのか、やれやれ、って思った。こういう「戦争」映画はいいなー。
第一次大戦下のフランスを描いた映画、というとSerge Bozonの“La France” (2007) って大好きなのだが、あれも女性が男装して戦場の夫に会いにいこうとする勇ましくてかっこいいやつだった。 あの戦争、そういう(ってどういう..)ものだったのかしらん?
9.12.2018
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