2日の日曜日の午後、CurzonのSOHOでみました。
”Ida” (2013)のPaweł Pawlikowskiの新作。 原題は”Zimna wojna”。”Ida”と同じくコントラスト強めのモノクロ。
監督を招いたQ&Aとかライブとか公開前に何度かあったのだがいろいろあって行けず、見てからあー行けばよかったかも、って後悔した。”Ida”でも音楽– Jazzが重要なkeyになっていたが、これもすばらしい音楽映画。そして政治と。
40年代後半のPolandの田舎で音楽家のWiktor (Tomasz Kot)と放送局のクルーがテープレコーダーに農民たちが歌うその土地の民謡(これがすばらし)を録音したりしているのが冒頭。次は学校のようなところで若者たちの生歌やダンスのオーディションをしていて、選ぶ側のWiktorはそこですごく巧いわけではなくて癖があるけど活きのいい銀髪のZula (Joanna Kulig)から目を離せなくなる。
やがて音楽学校でのレッスンを経て若者たち(含. Zula)はWarsawに連れていかれてポーランド音楽の饗宴 - 要はソヴィエト= スターリン様へのプロパガンダとして利用されるのだが、その頃には音楽監督WiktorとZulaは恋に落ちて親密になっていて、巡業先の東ベルリンでふたりで落ち合って逃げる算段をするのだが、約束の場所と時間にZulaは現れなかった。
50年代前半、(おそらく東ベルリン経由で国境を越えた)WiktorはパリでJazzバンドのピアニストをして暮らしていて、そこに少しやつれたZulaが現れて、消えて、現れて、結局ふたりは互いに吸い込まれるように一緒に暮らし始めるのだがごたごたが絶えなくなり、そのうちWiktorにもZulaにも本国からの追っ手が。
お国のための音楽活動、という事情で出会ったふたりとその愛がお国を越えて生き延びようとしたらそう簡単にはいかなくて試練がたっぷり、のような単純なお話しではなくて、男女の愛の難儀なことといったら国家間の冷戦みたいに裏ではぼこぼこに殴りあってぼろぼろになっていいことなんてひとつもないんだから、と。 もちろん「みたいに」ではなく当時のほんものの冷戦に起因する国家間の裏取引のなかでほいほい洗濯機にかけられて雑巾みたいになっていくの。
いろんな見方ができると思うしまずはふたりの恋愛の物語には違いないと思うのだが、例えば田舎の、その土地のフォークソングが国際的なところに出て行って最初は売れるんだけど漂白されて使い回されて戻ってきて再び地元で弱々しく地声を獲得する、そんな物語を夢想することもできる。
そういう真面目なのもあるのだろうが、とにかく再会する度により激しく引っ掻きあって求めあって傷だらけになって、それでもなんだか寄り添おうとする2匹のノラ猫がたまんなくよいの。好きで、好きだからやってるんでしょ、なのだろうし、それにしてもこのふたりは50年代の雑然としたパリ、殺伐としたWarsawのモノクロの絵のなかですばらしいシルエットを描く。
特にZulaを演じたJoanna Kuligさんのざらっとした銀のノラ感と、どれだけ引っ掻かれて振り回されても黙ってピアノを叩くことしかしないWiktorのDuoって、たまんないひとにはたまんないと思う。
音楽映画として見てもいろんな種類の音楽の作りだす渦と都市の陰影との交錯がよくて、この辺どうやってリサーチして落としていったのか、興味あるかも。でっかい音、よい音のシアターで見て浸って(できればふたりで)踊ってほしい。サントラぜったいほしい。
予告でも聴くことのできる主題歌みたいな ♪おぃよぃょぉー♪ の歌(聴けばわかる)、耳から離れなくて、空耳アワーに応募するなら早いもの勝ち、かもしれないよ。
50年代のパリ、著名な女性詩人役でJeanne Balibarが、映画監督役でCédric Kahnが出てくる。ちょっとはまりすぎ。
今日はLFFのメンバー先行予約の日だったのだが、1時間遅れて入ったらもうぜんぜんだめだった。
もうちょっと偉いレベルのメンバーにならないとだめか… BFIであんなに見てあげてるのにさ。
9.06.2018
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