9.10.2018

[film] Humoresque (1946)

8月26日の夕方、BFIのJoan Crawford特集で見ました。
“The Spy Who Dumped Me”を見た後で、放出されるエモのあまりの違い、その落差に目をまわした。

NYのコンサートホールで、ヴァイオリン奏者のPaul Boray (John Garfield)のソロ公演が突然キャンセルされてしまうのが冒頭で、彼はすべてを失って意気消沈しているふうで、そこから遡ってなにがあったのか、を追っていく。

Paulの子供の頃、食料品店を営むパパが彼を連れて誕生日プレゼントを買いにいくと、そこにあったヴァイオリンが欲しくてたまらなくなってしまい、パパはふざけんなもっと男の子らしいのにしろ、とその要望を蹴るのだが優しいママが後で買ってくれて、彼はそれを手放さずにずっと練習し続けて上手くなって、大恐慌でお店の経営が苦しくなって家族からぶーを浴びても練習を続けて、やがてピアノのSid (Oscar Levant)と組んでドサ回りをして少しは稼げるようになっていく。

ある晩、バイトで呼ばれたお金持ちのパーティでそのホストのHelen (Joan Crawford)と出会って、Paulは初めつんけん相手にしなくて、その後寄ったり離れたりを繰り返すのだが、3度の結婚を通してずっと愛に恵まれてこなかったHelenと、学校の頃からの友達Ginaとかママとか優しく温かい女性ばかりに守られてきたうぶなPaulの間のいろんな壁を乗り越えて、というか壁故にというか、マンハッタンのバーとかロングアイランド(Hampton?)の海辺にあるHelenaの別宅とかを舞台に緩やかにふたりの絆は深まっていって、Helenaはちゃんとしたマネージャーを付けてPaulの全米ツアーをバックアップして成功して、でもそのうちPaulが結婚しよう、と言い出すといろんな困難が再びおもてに湧いてくる。

目の圧だけで軽々とNYの社交界の陰も陽も操ってしまう凄腕マダムのJoan Crawfordと、一途さ一生懸命さのみで貧しさの底からのし上がって来たJohn Garfield、みんなに畏れられるボスと、みんなに愛されて弄られる坊ちゃんのそれぞれの容貌とか態度の違いがこのこてこてクラシックなメロドラマに見事にはまっていて、どっちも境遇が違いすぎてあんまもらい泣きとかはできないけど、それでもクライマックスの夜の浜辺のシーンの情感、盛りあげっぷりはすばらしいとおもった。あと脇からPaulをじっと見つめるGinaとか、最後に正面衝突するママとHelenの女の闘いもなかなかすごい。みんながPaulを熱烈に欲しがるの。

これらを盛りあげるのがタイトルにもなっている”Humoresque”を始めとした(曲名わかんなくても)誰もが聴いたことあるようなクラシックの名曲たちで、たぶんそれぞれの曲の背景とか知っていたらもっと楽しめるんだろうなー、というくらいこってりした音楽映画でもある。 Paulのヴァイオリンは実際にはIssac Sternさん(このときまだ26歳くらい!)が弾いていて、ピアノのOscar Levantは当然自分でそのままばりばり弾いている。

日本だとこれが三味線とかになるのかしら。すでにどこかにありそうな気がする。

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