15日土曜日の午後、Picturehouse Centralで見ました。 公開直後だったのでなかなか盛況だった。
邦題はー… 邦題から”Asians”を外した件について、いろいろ言いたいことはあるけど、とりあえずはそれを決めた奴にShame On You . って言ってやる。こんなおもしろいのにさ。
Kevin Kwanの2013年のベストセラー小説をAll AsianのCastで映画化した「アメリカ映画」。
冒頭、95年のロンドンで、暴風雨の晩にホテルにチェックインしようとしたアジア人家族がホテル側
から差別目線たっぷり慇懃に追い払われそうになったところで、実は... というのが序章。そこから20数年を経たいま。
NYUで経済を教えているRachel (Constance Wu)が、ポーカーの必勝手(心理学的なほう)について講義したりしていて(これが後で効くの)、BFのNick Young (Henry Golding)から幼馴染のColin (Chris Pang)が結婚することになって自分はそこでBest Manをやるので一緒にシンガポールに行かないか - 家族にも紹介するよ、と誘われて、アジア行ったことなかったし、いいよ、って軽く返す。
出発の日、JFKに着いたら車から降りた途端に人が迎えに現れて、なんかの間違いよあたしらエコノミーなんだから、って言うと実はファーストで、ひょっとしてあんたのうちってお金持ちなの? て聞くとNickは微笑んで”We are comfortable”とか言ってて(一度言ってみたいもんだわ)、着いてみたらやっぱり.. で、いちおう結婚を考えている相手として紹介されるのだが、to-be舅のママはEleanor(Michelle Yeoh) で、おっかなそうったらなくて、やばいやられた.. って。
その後もいちいちYoung家のCrazy Richぶりにあきれるばかりで、大学時代の友人Awkwafinaのうちに行ったらえええあのYoung一族か、って驚愕されるし、そこらじゅうから値踏みされる目で見られるし、Bachelorette partyでは嫌な思いさせられるし、Nickといる時以外は恐怖・戦慄体験ばかりで、そうかと思えばおばあちゃんも入れてみんなでテーブル囲んで餃子作ったりのほっこりもあったり、これって昔からある結婚してみたら向こうの家は..(ガチの農家だった、ガチのやくざだった、等々)ホラー寄りの異文化衝突ロマコメに見えるのだが、ここでのポイントは、彼らのCrazy Richぶりというのは(単なる職業とか属性の話ではなく)彼ら一族(華僑)がみんなで戦いながら勝ち取って歩んできた歴史と不可分であるということと、他方でRachelは同じアジア系でもアメリカで生まれて育った根っからのアメリカ人で、後からEleanorによって暴かれてしまう出生からして決定的なギャップが横たわっていて、これってやっぱり乗り越えられないやつなんじゃないか? 将来どう考えてもNickは実家に戻るしかないみたいだし… って、RachelはAwkwafinaの家に籠って丸まってしまう。
こんなふうに普遍性のある背景・事情をきっちり押さえているから偉いのか、ロマコメの土俵でこれを堂々とやったから偉いのか、その両方なのか、どちらにしても終盤、Michelle Yeohが見せる藤純子 - 緋牡丹博徒 - ばりにしなるテンションがこのコメディの瞬発力を尋常ならざるなにかにしていて、すごいったらない。 し、機内プロポーズのカタルシスときたら”The Wedding Singer” (1998) 以来のすばらしさ、と言ってよいのではないか。(あの瞬間、後ろのほうから、まじで「はっ」て息を呑む音が複数聞こえた)
ていうシリアスな(ロマコメとしての、よ)お話しの背景に、Crazy Richなアジア民総出のバカ騒ぎぶりを – 安っぽく見える画面作りもわざと計算して – 置いて盛りあげまくるところと、サイドエピソードとして置かれるNickのいとこのAstrid (Gemma Chan)夫婦のお話し – いくらお金があっても幸せにはなれないって – もスパイスが効いててよいの。
あと、なぜここに偉そうな父親や長老翁が出てこないのか、(そういうのがぜったい渦の真ん中から湧いて出る)日本の家父長制との違いで考えてみるのもおもしろいかも。
原作のほうは3部構成になっているそうなので次も楽しみ。
Awkwafinaの一家って、まるで天才バカボンのうちみたいでおかしくて、彼らも含めて俳優さんは誰もみんなすごくうまいねえ。
でもさあ、NYからシンガポールに引っ越したら古本屋もレコ屋もないし、きっとつまんなくなるからやめたほうがいいよ。
あと、おいしい餃子が食べたくなるねえ。
9.19.2018
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