9.25.2018

[film] Blighty (1927)

恒例の日曜日午後のサイレントで、これも”World War One: Regenerations”の特集からの1本。
このシリーズ、他にはルノワールの『大いなる幻影』 (1937)とかも上映する。(おそらく、ドイツ、英国、フランス、と三ヶ国の映画を1本ずつ取りあげているのか)

英国製の、戦闘シーンが出てこない第一次大戦もので、製作はサイレント時代のAlfred Hitchcockの作品を作っていたGainsborough Pictures、これもこの時期のHitchcock作品を多く手がけたEliot StannardとIvor Montagu(Hitchcockの”The Lodger: A Story of the London Fog”がスタジオからの注文で潰されそうになったのを救ったひと – これもおなじ1927年か)がシナリオを書いている、ということで、おもしろいかも、と。  うん、おもしろかった。

ロンドンに邸宅を構える貴族のSir Francis(Annesley Healey)とLady Villiers (Ellaline Terriss)と娘のAnn (Lillian Hall-Davis)がいて、息子のRobin (Godfrey Winn)はハイデルベルクの大学に留学しているのだが、サラエボ事件が起こって戦争が始まり、彼にも召集令状が来て、明るく行くよ! って言うので家族は心配するのだが、クリスマス迄には終わるかしら、とか言っている。

Robinは出征して、何度か英国には戻ってきてその度に順調に出世していくのだが、いつも立ち寄っている食堂の女性(Nadia Sibirskaïa)と恋に落ちて、だんだんに帰宅する頻度が減っていって、彼は一度一緒に帰ろうと誘うのだが、彼女はこんな自分は移民として見られてしまうに決まっているので、と乗ってこない。

もうひとり、家族の運転手のMarshallも同様に出征していて、彼も何度か戻ってきてRobinのことを伝えたりしているのだが、負傷したりしているうちにAnnと恋に落ちて、国を越えた戦争が、階級や民族を越えた恋愛とかを連鎖して引き起こしていく。ここは特に強く語られているわけではないけど、そういうドラマがある、と。

で、戦局が厳しくなってきた頃、手紙が届いて、Robinが亡くなったと。悲しみに暮れる家族のもとにMarshallの手引きで赤ん坊を抱いた彼女が現れる。戦争の終わりを受けて歓喜に溢れた群衆がトラファルガー広場を埋めつくす絵と、新たな家族を静かに迎い入れる一家の像の対比がずっと残るの。 どちらも立て直さなきゃいけないにしても、この犠牲ってなんなのだろう?

これはやはり戦争 – おそらくは第二次大戦というよりは第一次大戦のほう - が起こらなければあり得なかったお話しで、それもただならぬ大事、というよりは誰の身や家族にも起こり得たようなことを繋いで、離れ離れになってしまった者 - その片方は戦争ていういつ亡くなっても文句をいえない状況に突っ込まれている - 同士の、ずっと一緒にいたいのになんで、とか、こんなに想っているのになんで、というこみあげてくるものをめいっぱい切なく見せてくる。

食堂の彼女がもうじき戦地に向かおうとしているRobinのヘルメットに手をあてて、これが彼の頭を守っているんだ、これだけなんだ、ってしみじみ見つめてきゅう、ってなるところとか、すごくよいの。 彼女の縮れた髪の毛と黒い瞳と。

イントロで触れられていたが、Robin役のGodfrey Winnさんはこのあと俳優だけでなくジャーナリストとして活躍してラジオショーもやって、W. Somerset Maughamの友人として彼の作品(後で調べたら” Strictly Personal” - 1941 だった)にもモデルとして出てくる、英国では有名なひとになったのだそう。

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