もう夏は彼方にいってしまったかんじの冷えこみ。
23日、日曜日の午前10時、BFIのIMAXで見ました。
公開前の週までの宣伝攻勢はすさまじくて、空港に向かう道路のビルボードはこれと"Game of Thrones"のSeason 7ばっかりだった。
(GoT、見たいな。 どうやったら見れるのかな)
この前売りも公開2週間くらい前に取ったのに、もう端っこの時間のしか空いてなかった。
上映前の予告は、”The Last Jedi” 〜 “Blade Runner 2049” 〜 “Justice League”のみっつ。
みんな腕組みして「うむ」って。
年内にチャーチルの評伝映画が2本も公開されるとか、"Their Finest"みたいな戦時下ドラマが当たるとか、BFIでも女性が中心のプロパガンダ映画特集を組むとか、これとか、TVでもDunkirkの真実、みたいな特集番組がいっぱいとか、やはりBrexitを前に英国がんばれ、英国ばんざい、になっちゃっているのだろうか、とは思う。 ただ日本の(特に最近の)右傾化とは背景も含めてやはり全然ちがうよね、ではあるのだが。
説明みたいのは冒頭にすこしあるだけ。
英仏の約400,000人の兵士がダンケルク(発音は「ダンケ(クに近い)ーク」なんだけど)の浜辺に追い詰められて逃げようがなくなった、ていう状況と、①浜辺に延びた堤と ②英国の対岸からの船団と ③英国空軍からの3機 のそれぞれの時間軸の説明が字幕で出たあとは、これら3つの局面がなんの説明もなしに繋げられ切り替えられていく。
ここからの画面で追うことができるのはそこに関わっている人達だけで、その背後でどのような判断や決断がどうなされたのか、それがどう伝えられて個々の行動に繋がっていったのかの場面、状況は一切出てこない。 ①はまだ若い、冒頭で武器を失ったまま右往左往敗走する兵士Tommy(Fionn Whitehead)の目線、②は船でそこに向かって救出に向かう民間船の船長(Mark Rylance)と息子たちの目線、③は空軍の戦闘機乗り - Tom Hardyともうひとりの目線 - 全体の戦況は全く不明、指揮命令もくそもない、自分で判断して生き延びる(生きたいのであれば)しかない状況に投げこまれた彼らの半径数メートルの視線と思考 - 立ち止まって考える時間はないのだが - を中心に描かれる。
陸海空の連携とか、苦渋の決断とか、危機を乗り越えた先の解放(勝利)感、といった従来の戦争映画に求められそうな構図や展開は殆どなく、全員がひたすら逃げたり、死なずに生きるための目の前のことにいっぱいいっぱいになっていて、視点が切り替わってもその切迫感としんどさは生々しく手元に残って休まらない。 これを106分間に収めたのはよいことで、これで2時間超えたら見ているこっちもぐったりになっていたのではないか。
Nolanのひとつ前の"Interstellar" (2014) でも ①滅んでいく地球 ②地球のどこかで糸口を探す人たち ③それを宇宙に探しにいく人たち、の異なる3つの時間軸をシームレスに繋いで、逃げ場のないところに我々を追いこんでいったが、手口としては同じようなかんじで、でもこっちはSFではなくて史実がベースだし、結果がどうなるかわかっているぶん少しは楽かも、と思うかもしれない。 実際には結末がわかっているんだからぐいぐい虐めてやれ、でとにかくサディスティックなこと容赦ない。
包囲されているほうに行けば銃撃される、浜辺で待てば飢えて凍えてしんどいばかりの出口なし、船に乗れば爆撃されて火責めか水責め油責め、味方であっても誰も信用できない、どこに行っても底なし出口なし地獄、の厭戦感を目一杯あおる、という点では「野火」に近いかもしれない。
これが名誉ある撤退だの、勝利に向けたマイルストーンだの、そんなのだれが信じるかボケ、という地点まで我々を連れていく。「戦争映画」? どうでもええわ。
それで十分ではないかしらん、て思った。 手に汗だけは死ぬほど握ってぐったり。
IMAXの70mmがもたらす視野はすばらしかった。ネットのどこかにIMAX70mm、フィルム70mm、フィルム35mmのレンジの比較があったと思うが、海上、空中、浜辺(水平線、防波堤の線)、水面下、といった場面を水平に、垂直に往ったり来たり横切ったりしようとするとき、この映画の場合はIMAX70mmの画角は適正なのだな、というのがよくわかった。
もういっこ、とんでもねえのがHans Zimmerの音楽。 爆撃とか砲撃が炸裂するシーン以外、延々、それ以上に煩く拷問のように偏頭痛のように圧してくる耳鳴り系轟音のやかましさがあって、これ、老人とかの体によくないんじゃないの、と余計なことを思ってしまうくらいうるさい。 最初からどうしようもない殺人的な爆音。
間違っても「奇跡」の話でも美談でもない、大量の犠牲者も出た悲惨で残酷な実話で、今の日本みたいに軍部の上が日報を握り潰すようなとこでは間違っても起こりえないお話だから。 最近の洋画のプロモーションはほんんっとにバっカみたいところに行くから念のためね。
BFIでは、こないだのEdgar Wrightと同じように、この映画に影響を与えたChristopher Nolan選のクラシックを上映している。
やはり戦争映画ではなくて、サスペンスなんだよね。
http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/films/news/dunkirk-film-movie-christoper-nolan-war-inspirations-bfi-southbank-season-a7753831.html
バターとジャムを塗っただけの食パンが食べたくなる。 あれ、売店で売ればいいのに。
7.25.2017
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