7.03.2017

[film] Okja (2017)

もう今年あと半分を切ってしまった。 ふつうにありえないわ。

1日の土曜日の昼、SOHOのCurzonで見ました。
木金の晩にでも見たかったのだが、ぱんぱんで動けなくて、でもすぐにでも見たくて。

予告を見たときからこれはずるいだろう、としか言いようがなくて、だってバカでっかいカバみたいなブタの話だよ。

冒頭は2007年、Mirando Corp.のCEOになったばかりのLucy Mirando (Tilda Swinton)から、Non-GMOの画期的なスーパー子ブタができたのでそれを世界中の信頼できる養豚家にばらまきました。 10年後にどこのスーパーブタがスーパーなのかコンテストするから待っててね! とアナウンスして、そこから舞台は2017年の韓国に移動する。

Mija (Seo-Hyun Ahn)は山奥ででっかいOkjaと柿を採ったり水浴びしたり、のんびり過ごしていて(いいなー)、そこに動物タレントのJohnny Wilcox (Jake Gyllenhaal) とMirandoの連中が現れて、いやあすばらしいブタに育ててくれたねえ、て賞賛してちょっとした隙にOkjaを連れていってしまう。必死に追いかけるMijaのところに黒頭巾の集団 - ALF (the Animal Liberation Front)が現れて、そこのリーダーのJay (Paul Dano) が言うには、ぼくたちは動物の権利を守るために闘っている君の味方だから安心して、なのだが、ここでも手違いがあって(英語はだいじね)、Okjaはコンテストの開かれるNYに運ばれていってしまう。

他方で、Okja(+ ALF)がソウルの街中で逃げよう/逃がそうとして大暴れした映像をネットに出されてしまったMirando側はそれをソーシャルに取り繕うべく、NYの会場でのOkjaとMijaの感動の再会シーンを演出しようと画策、MijaをNYに呼ぶことにして、やがてイベントの当日がやってくる。

前半の山奥のシーンは実写版トトロみたいなのどかな楽しさに溢れていて、そこからOkjaを巡る追いかけっこのはらはらどきどきになって、最後は腹黒い奴らは剥いても剥いても、のディストピア状態のなか食肉のありようについて深く考えさせられて、と、てんこ盛りで、とってもおもしろかった。 あの後、Mijaはどんな大人になっていくのだろうな、とか、そういう点ではパパママが子供連れで家族で見に行ってもすてきな娯楽映画だと思った。

かわいいもの大好き!のペット産業と、おいしいもの大好き!の食肉産業の根っこは人間サマの快楽にどこまでも奉仕し、その充足のためにモノ言えない動物たちをいくらでも虐待して犠牲にする、という点で繋がっている、それをドライブするのは結局のところお金で、お金がないと誰もが生きていけないし  - と、そこまで深く掘ったり訴えたりしているわけではないけど、そういったことを考えるひとつのきっかけにはなるかも。 それでうんざり絶望してヴェジタリアンになっても別にいいじゃん、て思う。

あるいは、最後にでてくるスーパーブタの養豚場、あそこで飼われているのは我々なんだな、とか。
あるいは、Mijaの両親は『千と千尋の神隠し』みたいにブタに変えられてあそこにいるんだな、とか。

といったような方に思い詰めなくても、Okjaの耳とか四つ足を眺めているだけで、なんかいいの。 "Dave"もそうだったけど、基本ブタにはめっぽう弱い。

俳優陣も見事で(韓国のひとはよく知らないのだが)、Tilda SwintonもJake Gyllenhaalも、狂喜しながら米国人の下品なマネージャンキーっぷりを披露しているし、Paul Danoはこれをやれるのは俺しかいないんだ、の勢いで見得切って輝いているし、彼らの間を『千と千尋… 』の千尋みたいな顔の女の子がばたばた走り回って叫んでいるの。

Netflixなので日本ではTV画面なのかもしれないけど、これはでっかい映画の画面で、Okjaの超ブタっぷりを見てやってほしい。

音楽は"Free Fire" (2016)でも流れていたJohn Denverの"Annie's Song"が唐突に流れて、こっちのが痛快で気持ちよいかも。

ラストは"Meat Is Murder"でも流してやれ、とまじで思ったが残念ながらそこまでは。

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