7.27.2017

[music] The Songs of Scott Walker (1967-1970)

25日の夜遅く、Royal Albert Hallでみました。

ロンドンの夏の文化イベントとしてBBC Promsていうのがあって、夏の夜長にクラシックを気軽に楽しんでもらおう、とRoyal Albert Hallを中心にTalkとかConcertとか、9月頃までいっぱいやっている。 クラシックはあまり詳しくはないのだが、安いチケットは£10くらいからあるし、とってもよさそう。 ガチのクラシックばかりかと言うとそうでもなくて、これとか、9月に"Stax Records: 50 Years of Soul"とか、現代音楽もちょこちょこある。 シリーズの番号でいうと、これはProm 15。

ドアオープンが21:45、開演22:15て、いいよなー。 NHKホールはこんなの逆立ちしてもやってくれないよね。

Royal Albert Hallのコンサートホールの方は初めてで、ステージ前はStandingになってて、そこは売り切れていたので、そのすぐ外側の椅子席。 Standingはぎっちりではなく、寝っ転がっているひともいるくらい。

さて、これ、事前にBBCのラジオでJavisとScott Walkerの対話とかも流れていて、本人は昔のにはあんま未練ないだろうなー、とは思っていたので、そうかー、くらいだったのだが、でもやっぱり、The Walker Brothersも”Scott” (数字)も好きなんだもの。

配布されたプログラムに既に曲目はプリントされていて、大所帯のオーケストラ(Heritage Orchestra)だしコーラス隊も入るのでそうなっちゃうよね、と。
シンガーは、Javis Cocker以外にJohn Grant, Richard Hawley, Susanne Sundførの計4名で、彼らが全18曲を、最初は2曲くらいずつ、終わりのほうは一曲ごとに交替しながら歌い、最後の"Get Behind Me"だけ全員で何小節かづつ歌った。  確かにこれ、ひとりで全部歌うのはものすごくしんどいかも、と聴いていておもった。

曲構成は67年から70年まで、と指定があるように、The Walker Brothersのではなく、"Scott”の1〜4と、"'Til the Band Comes In"(1970)からで、比率でいうと、①から1曲、②から2曲、③から4曲、④から8曲、"'Til the Band …” から3曲。 最初の2枚はJacques Brelとかのカバーが多い(これはこれで聴きたい)というのもあるのだろうが、やはり③ 〜 ④のやたら荘厳で秘境めいた世界をライブでぶちまけてみたい、というのがあったのだろう。 Co-DirectorのDick Hovengaさんもプログラムに掲載されたインタビューでそういうようなことを言っていて、もうひとりのDirectorであるSimon Raymonde(...やっぱり)とこの頃のScottの世界をなんとか形にしようと画策していたところに指揮者であるJules Buckleyさんが現れて、企画として纏まっていった、と(アレンジャーはJules 氏を含めて4人)。 これらの曲がこれまでライブで演奏されたことはなかったんだって。

というわけで、一曲目"Prologue"の冒頭のコントラバス(?)が流れ始めたところで、驚愕したのが音のよいことで、このホール、めちゃくちゃ音がよいのね。 有名なホールだし、あたりまえかもだけど、ああここでBowieとか聴いたらどんなにすごかっただろうか(あと、昨年のIggy Pop…)。

最初に登場した歌い手がJavisで、割と低めの、後期Bowieのように微妙に揺れる不安定な声ではらはらするのだが、Scott自身もそんなに歌が巧い人ではない、という点を合わせると、いちばん「らしい」かんじはした。
他の3名の歌はプロフェッショナルな安定感に溢れていて、これはこれで感動的に響き渡って震える。

すばらしかったのは中盤の”The Amorous Humphrey Plugg” (Susanne Sundfør) 〜 “Montague Terrace (in Blue)” (Richard Hawley) 〜 “Little Thing That Keep Us Together” (Javis Cocker)のあたり。 Javisのくねくね悶絶が最高に輝いていた。

バックのオーケストラは、The Walker Brothersの頃のPhil Spectorぽい音の壁とは違って、Sandy ShawとかDusty Springfieldのレコードで聴くことができる英国製の滑らかしなやかな音の織物で、時折激しく炸裂したりして、気持ちいいったらない。

そして、Scottはこれらの音の生地にポップスの常套である愛や恋だけでなく、生や死のことから政治や戦争のことまで -「世界」を織り込んで我々のもとに届けようとした。世界はこんなふうにある/見える、というのを美しさだけでなく混沌も混乱も込みでいっぺんに示そうとした。
ポップスの流れに身を置いてこんなことをやったのは、やれたのは彼が最初で、BowieもNick CaveもMorrisseyもRufusも、みんな彼の子供なんだと改めて思った。

終わったのは23:35くらい。
TVではBBC Fourで金曜日の22時にやるみたい。 見れないけど。

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