7.10.2017

[film] Boy (2010)

6日の木曜日の晩、Prince Charlesでみました。 2日続けてここに来る、というのはなんか行き場を失った感があるのだが。

Misc.Filmsていうあんまり劇場でかからない作品をピックアップして上映していこう、て共謀したがる変な集団がいて(共謀ばんざい!)、こないだはCurzonで"In The Cut" (2003) + Jane Campion Q+Aなんかをやっていたのだが、その人たちの企画による上映会。

https://www.miscfilms.com/

UKではDVDになっていなくて、劇場でもめったに見ることができないよ、てこまめに呼びかけていたせいか、珍しく行列ができていた。

1984年、New Zealandのどこかの湾沿いの小さな村にBoy (James Rolleston )がいて、内気な弟といとこたちとおばあちゃんの家で暮らしていて、母親はいない、父親はどこかに行っていて、BoyはMichael Jacksonが大好きで、いつもしょうもないことを夢見てへらへらぼーっとしてて、学校でもバカにされたりしている。 ある日父親(Taika Waititi)とその仲間のチンピラふたりが車で戻ってきて、この父親もしょうもない遊び人のちんぴらで、いろんなことが起こって、Boyとは喧嘩したりもするのだが、でも結局、ていうそれだけのおはなし。

すっとぼけた田舎のホームコメディというか、ガキがほんの少しだけ大人になるお話で、ものすごい展開やドラマがあるわけではないのだが、全体としてめちゃくちゃおかしくて、なんだこれ? と唖然とするばかり。 場内は爆笑の連続。 かんじとしては"Napoleon Dynamite"(2004) を見たときのあれに近い。 最近のだと『セトウツミ』あたりもそうかしら。

まず、オーストラリア英語を脱臼捻転させたような英語がよくわかんない、わかんないけど、ネジが抜けているんじゃないかっていうくらいいつも朗らかに笑っているBoyとか、その怪しい目つきも含めてどうしようもない小物チンピラ感の漂ってしまう父親 - 字幕にするときっと「父ちゃん」だよね - の通じているんだか通じていないんだか、たぶん間違いなく通じていない親子の会話とそれが転がっていく先のしょぼい顛末と、でもまあなんかいいかー、なかんじ、これらが自主製作とかホームビデオみたいな内輪ウケ狙いのなんかに終わっていないのは、学校とか車とか墓のシーンが編集も含めてとても丁寧に作られているからだと思った。 つい笑っちゃいながらもMJのビデオについ首を振って、たまに感動までしてしまったりするかんじ、というか。

あとはこのガキどもが見ている世界への態度、というかその見せ方だよね。 弟やいとこたち、友人、やくざなパパ、もういないママ、親戚の大人たち、MJ、ヤギ、全員横繋がりの総動員のAvengersなんだっていうことを、大人がわかったふうにその調和や統合や帰属を謳うのではなく、散らかし放題のチョークの落書き状態でそのまま台の上にひろげて、底の抜けた笑顔やしかめっ面で放り投げてどうかなー、みたいに見ている。
これはこれですばらしいことだと思うのだが。 
U2の"Boy”のとは全く異なる、もうひとつの - すばらしい笑顔なのよこのガキときたら。

父ちゃん役のTaika Waititiが監督もやっていて、このひとはこの秋、"Thor: Ragnarok" (2017) でついにメインストリームに躍りでる。
映画館では予告がかかり出しているが、"Boy"を見る限りぜったい外れないと断言しよう。(しちゃっていいのか…)

日本での公開は…  100年後だな。

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