7日の金曜日のごご、『高慢と偏見とゾンビ』のあと、新国立で「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」を見て、夕方にアンスティチュの『フランス幻想怪奇映画特集』でこれをみた。
何故かさいごまで血まみれの金曜日でしたわ。
『ガーゴイル』
おもしろかったー。
道路に佇んでいる女 (Béatrice Dalle) がいて、ちょっと挑発的に見える彼女のところに男が寄っていって、ふたりはキスしたりしているのだが、少し時間が経つと女を探しにきたと思われる男が現れて、女の傍らで血まみれで横たわる男の死体を見つけるが、とくに驚く様子もなく淡々と後片付けをする。
パリに向かう機内でハネムーンに向かうアメリカ人新婚夫婦のShane(Vincent Gallo)とJune (Tricia Vessey)がいて一見幸せそうなのだが、夫のほうは妻を血だらけに切り刻んでしまう悪夢にうなされて機内トイレに籠ったりしている。
フランスの女は迎えにきた男が邸内に監禁のようにして囲っていて、その夫であるらしい男はかつて研究所にいたらしいのだが、いまは普通の病院で開業医をしている。留守番をしている女はぶっきらぼうに鍵を壊しては外に彷徨い出て同じことを繰り返す。
ShaneとJuneはホテルにチェックインして、ふつうに観光とかもするのだが夫はなにかを探しているように頻繁に出かけていくしなんか深刻だし落ち着かないし、ベッドに入っても肝心なところにくるとシャワーに行ってしまうのでJuneは悲しむ。
このぜんぜん関係なさそうな二組のカップルが過去に同じ臨床研究を通して発見された症例だか病だかに関わっているらしいことがなんとなくわかってくるのだが、彼らのことが周囲を巻きこんだ大騒ぎに発展するかんじもないし、その病の起源が解るわけでもそれを治す決定打が現れるわけでもない、彼らが誰かに退治されるわけでもない。 彼らは夜の闇の奥、地下の部屋や扉の影、過去の関係者の記憶の隅でひっそり忘れられたようにいて、セックスの快楽の紙一重、その向こうで血みどろのがぶがぶが繰りひろげられて、始末の悪いことにそれは本人の意思では止められないらしい。 “Trouble Every Day” - それはそうなんだけど、それってパーティで酔っ払いが殴り合いするのとあんま変わらないのかも、とか。
頻繁にクローズアップされる人の後ろ頭、その向こう側に何かがあるんだかいるんだか、全くわかりゃしないのだが、その後ろ頭が怪物のような惨劇を引き起こしてしまうその怖さ。でもあんま怖くないの。これを怖いというのなら夜の闇は、人の頭はぜんぶ怖いんだ。
Béatrice Dalleの、Vincent Galloの不気味な暗さ、あの目の硬さがぼん、てスクリーン上に投げ出されるようにして置かれていて、たまんなかった。
音楽はもちろん、Tindersticks。 血が滴るようなストリングスの艶。
これがデジタルで上映されてる姿ってちょっと想像つかないかも。
このアンスティチュの特集もスウェーデン映画特集もぜんぜん行けないのでずっとむくれている。
10.15.2016
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