ずっと見たかったやつを、30日の金曜日の晩、渋谷のライブハウスで爆音でようやく見ることができた。
『アイアン・プッシーの大冒険』。 原題は、ぜんぜんわかんないけど、”หัวใจทรนง” (Hua jai tor ra nong)。
VHSみたいな画質で、もうこれしか残っていないらしいのだが、これでぜんぜんよいの。
冒頭、街はずれのドライブインみたいな食堂にちんぴら連中が現れて因縁つけ始めると、バイクの後ろに乗っていた女装(どう見てもそう見える)のひとが圧倒的な強さでやっつけてバイクで去っていく。それが”アイアン・プッシー”と呼ばれるラムドゥアン(Michael Shaowanasai - 共同監督でもある)で、バイクを運転する彼もかつて麻薬で暴れていたところを彼女に救われて僕になったのだった。
ラムドゥアンはふだんはつるっぱげのやはり♂で、セブンイレブンのレジ係をやっていて、やばい仕事の依頼はレジスターのディスプレイに表示されるの。(そのシステム、やばくねえか)
で、依頼が来たので行ってみるとそこは寺院で、亀を川に投げたりしていると坊さんが現れて奥に案内され、お金持ちのポンパドーイ家に出入りしているヘンリーっていうのが怪しいのでそこにメイドとして潜入して捕まえてほしい、ていう依頼で、この辺からミュージカルの要素も加わって、邸の内部に入ってみると意地悪なメイド頭とかが普通にいて、ポンパドーイ家の息子のテーンと仲良くなってぽーっとなるのだが、テーンとヘンリーが麻薬で悪いことしているのを目撃してショックを受けて、アイアン・プッシーの運命やいかに、なのだが、シンプルなおかまヒーローものかと思ったらアイアン・プッシーの出生の秘密まで遡り禁断の蓮の葉みたいなとこまでいくので、とにかく目が離せないの。
「人生の困難は麻薬ではなく仏法で解決すべきよ」とか、「パリの上流階級なんかよりタイがいいの」とかいろいろ名言は飛び出すし、虎とか変な果実とかつっこみどころの数ときたらそれはそれは凄まじく、なんにしても物語の核心に関わるとこ - 「彼女はあなたの双子の妹なのよ!」にはたいへんびっくりした。
アピチャッポンの他の作品と比べると、識閾下で見てはいけませんて脳が排除しようとしている何かが画面上にびろびろしてしまっているやばさ、というのは共通しているかんじがした。アートプログラム中短編のいくつかにもあったべたな歌謡曲指向みたいのが全開になっているところも。
あと当然のように仏教・仏法の世界ね - 諸行無常ふう、なんとなく。
でもこれが『ブリスフリー・ユアーズ』と『トロピカル・マラディ』の間に作られた、ていうのはすごいわ。
途中からアイアン・プッシーはGenesis P-Orridge で、テーンは高橋幸宏で、ヘンリーはMorrissey、にしか見えなくなって、この三者が三つ巴になるドラマ、として見ても楽しいの。
10.02.2016
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