10.30.2016

[film] Tanner Hall (2009)

元のトラックに戻ります。

10月8日、9日の土日に渋谷で行われた青春映画学園祭、ていうので計4本みました。
この土日、ちゃんとした映画マニアのみんなはアンスティチュのフランス幻想怪奇映画特集のほうなのだろうが、わたしはちゃんとしていないのだな。

どっちも雨のなか朝から並んだ。

映画を見れるのはうれしいしありがたいし、学園祭ていうお祭りなのだろうから偽IDとか作って楽しそうでよいのだが、学園も学園祭のノリもそもそもだいっきらいで、でも学園モノ映画は好きていう客もいることを忘れないでほしい。

8日の最初の1本。

Fernanda (Rooney Mara)が休み明けに女子寮のTanner Hallに母と戻ってくるところから始まって、その時ちょうど彼女の幼馴染のVictoria (Georgia King)が入寮してきて、幼い頃、VictoriaはFernandaのおばあちゃんのオウムをわざと籠から逃がした悪い子、ていう印象がFernandaからは消えなくて、ちょっとやな予感がして、実際そのとおり寮の玄関の鍵をコピーして好き勝手に外出できるようにしたり、ずけずけきんきんしたビッチの振る舞いをたっぷり披露してくれて、この他に奔放な小悪魔(←死語)ふうKate (Brie Larson)と、内気で絵を描くのが好きなLucasta (Amy Ferguson)と、この4人の寮生活を巡るいろんないざこざとか和解とか赦しとか。

Fernandaと彼女の母の友人の夫との切なくどんよりした(互いに突き抜けることができない)逢瀬とか、Victoriaのコピー鍵を使って抜け出して夜の遊園地にみんなで出かけたりとか、Kateと冴えない教師Chris Kattan (! Mango !)の火遊びとか、なにをやるにも悪いことばかりのVictoriaとか、どれも学園ドラマにありがちの設定ばかりなのだが、彼女たちはこの中で生きるしかない(Live Through This)、というのとなにをどう呪っても吐き出してもしょうがない、どうしろっていうのよ、というそれぞれの強い眼差しとその交錯を静かに追う。 誰も信じない。頼らない。でも。

それを美しいとも言わないし愛おしいとも思わない、最後にFernandaがVictoriaを受けいれるように、それは秋のTanner Hallの扉の向こうで、ただ起こったこと、それだけ。
車の窓越しに外を眺めるRooney Maraの姿は、"Carol" (2015)でのThereseにすうっと重なってくる。それは諦念ではなくて、決意と覚悟を固めて扉を開こうとしているとしか思えないの。

でもねえ、デートでレコ屋に行ってThe Replacementsのアナログを買うような中年男はしょうもないろくでなしだから注意しろ、てFernandaに言ってあげたい。

とにかく、ラストに流れるStarsの“Your Ex-Lover Is Dead”が見事に締める。 2010年9月にBrooklynでこのバンドのライブを見たとき、ライブの最後がこの曲で、イントロが鳴り出した瞬間に周囲の女性ほぼ全員が深く頷いて拳を握り、前を向いて一緒に歌いだしたことを思いだす。 この曲はこの時代の子達にとっての”Love will tear us apart”であり”There is a light that never goes out”なのだとおもう。

そして、同じようにエンディングにStarsの”Dead Hearts”が流れる”Like Crazy” (2011)もぜひ上映してほしい。 Anton Yelchin追悼もまだしてないでしょ。

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