16日のごご、幽霊にうっとりしたあとで、新宿に移動して見ました。
幽霊は怖くなかったけど、こっちはとっても怖かった。
『ベルファスト71』
英国軍で黙々と訓練をしていて、施設にいる弟の面倒も見ているGary (Jack O'Connell)が紛争地帯のベルファストに駐留する英国軍のひとりとして派遣される。
そこは普通の住宅街であるが、近隣住民の英国(軍であれなんであれ)に対する敵意や殺意はそこらのガキのも含めて半端じゃなくて、結構うんざりしょんぼりになる。
翌日、家宅捜索の後方警護に行くことになり、上官は戦闘にはならないはずだからヘルメットは不要、ていうのだが案の定一触即発になってふざけんじゃねえ、て住民達に囲まれて止むを得ず防戦しているとどこからか銃を持ってきたガキが目の前で発砲、一緒に訓練を受けていた相棒は即死してしまう。 動転しつつもなんとか逃げだして、追手を撒くのだが、右も左もわからない町で、誰が敵か味方かもわからない状態(敵対するカトリックとプロテスタントが通りを隔てて隣接している)で、逃げる、かくまわれる、爆破される、怪我をする、かくまわれる、逃げる、隠れる、がぐるぐる続いていく、そんな明けないひと晩のお話し。 90分台がちょうどよい。
同じ英国軍のなかでも軍と警察と工作部隊がいて、地元の支援組織のなかでもそれらのどこかに接点があったり、地元は地元としてまるっきり敵、まるっきり味方というわけではなく、当然顔を知ったりしているので、ソーシャルの線は単純ではない。 そういうなかで迷子になるなんて想像しただけで頭と胃がいっぺんに痛くなるのだが、とにかく逃げて、生き延びて自軍の、自分の顔を知っている人たちのところに行かないとやばい。 3m先は闇の状態。
"Die Hard"みたいな「ついてない」系のノリではなく、自分の周囲はとりあえずぜんぶ敵と思え、気を抜いたら殺される、殺さなければ殺される、の切迫感と、始終止まないとてつもない殺気の総量がすごくて、怖くて、ふるえるしかない。
最後にくるのは、すべてがなし崩しの、やはりそうなるしかなかったか、としか言いようのない凄絶な殺し合いで、これも誰しもが思うであろう「なんでここまで...」 の非情さと無力感がびっちり。
後始末の軍法会議みたいな場で、片方は「戦争だ」といい、片方は「治安活動だ」という (ほらな)。
最後の撃ち合いなんて敵の縄張りに迷い込んでしまったやくざ同士の抗争、のようにも見えるのだが、これはどんな国の紛争にも、戦争にも、治安活動にも、後方支援にも、71年とは言わずどの年号にも置換可能なそれで、それはつまり動いているののとどめを刺す、人が人を殺す、ということでしかないの。 わかってるよな。
というようなところで、「野火」と並んでいま見ておいたほうがいい映画だと思ったの。
音楽は、David Holmesさんで、ささくれに塩をすりこんで紙の端でつーってやるようなギターがしみて痛いよう。
8.25.2015
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