7.18.2015

[film] Turist (2014)

11日の土曜日の昼、有楽町で見ました。 なんでか満員だった。

『フレンチアルプスで起きたこと』  英語題は”Force Majeure”。  ふかこーりょく。

風光明媚なフレンチアルプスのスキーリゾートにバケーションでやってきた家族 - パパにママに姉弟の小さい子供の計4人、記念写真を撮っているところを見ると、とってもなかよしなミドルクラスのどこにでもいそうな素敵な家族。 4人揃ってスキー場を移動するときも、飽きて疲れたガキがグズったりするものの、そんなの珍しくもなんともない。

2日目、山に面したテラスのテーブルでランチを取っていると、ごごごごって音と共に雪崩がくる、最初はうそ? なに? とか言っていたのがまじで迫ってくるようなのでテラスはパニックになって、後でそれは観光用の演出(そんなのあるの?)だったらしいことがわかるのだが、問題はそこではなくて、パニックになったとき、パパだけ自分の手袋と携帯を持ってひとりで逃げた、と。 パパはいやいやそんなの誤解だすぐに戻ってきただろ、というのだが、ママはそうは思わない。

あなたは、みんなが悲鳴をあげているときに、ひとりで逃げた。 家族を置いて、自分だけ助かろうとした。(ゴシック太字)

普段だったらこの程度の気まずさとか亀裂は、翌日会社に行ったりすれば消滅してしまうのかもしれない。 けど、ふだんは忙しいパパも含めてみんながずっと一緒に顔を合わせて行動して、そこでの楽しみや歓びをわかちあうバケーションでこれが起こってしまったのはまずかったかも。
ほんの一瞬の反射行動の余韻がまっしろの雪原の一点のシミのように、ちょっとしたひび割れが雪崩を引き起こすかのように、誰にも止められない勢いで家族全体を覆って、ママは恨みできつい目になり、パパは憔悴し、子供はその雰囲気を察知して泣きながら閉じこもってしまう。

さすがにこれはまずいよね、と一旦仲直りのハグはしたものの、友人カップルと夜中に談笑しているところで、だれがどこのボタンを押してしまったのか、ママが再びこの件をひっぱり出し、テーブルの気まずさお構いなしでブルドーザーと化したママの勢いは止まらず、犬も喰わない地獄みたいになっちゃうの。

おっかないよう。雪山の白と、家族の闇と、他に抜けられようのないホテルと。
逃げることはできないし、正解はないし、でも誰もわるくないし、理屈を飲みこめないままぐるぐる回り続けて止まらないメリーゴーランド。 楽しまなきゃいけないところなのに何をやっても楽しくない、これを地獄と呼ばずしてなんと呼ぼう。

このがんじがらめの緊張関係はどこでどう収束するのか、あるいは臨界を迎えて惨劇になだれこむのか、最後までぜんぜん気を抜けなくてぐったりする。 で、なんでひとの家族の幸せのためにこんなに緊張しなきゃいけないのかわかんなくなって、更にあたま抱えたくなったり。

“The Shining” + ベルイマン、かなあ。
雪山のなんか冷たく寒い(あたりまえだけど)、きついかんじが怖さを際立たせて、もういいから殺せ、みたいな殺伐としたかんじになっていくのがたまんない。

でも、そもそも、父親ってそんなにしっかり家族を守らなきゃいけないもんなの?
(そのへんがラストのエピソードで..)

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