7.25.2015

[film] Baisers volés (1968)

20日の月曜日、連休最終日、どうせすることないんだわ。

Bunkamuraでやっている特集『ヌーヴェルヴァーグの恋人たち』は、なんかほんと適当に寄せ集めただけだろ、て気もするのだが、フィルム上映もあるようだし、とアントワーヌ・ドワネルもののふたつめ、みっつめ、よっつめを纏めてフィルムで見てみよう、と。

Antoine et Colette (1962)

『アントワーヌとコレット<二十歳の恋>より』
「二十歳の恋」 - “L’amour à vingt ans” - はオムニバスで、オープニングの字幕を追っていると元東京都知事の名前を見かけて一瞬ぞっとする(それくらい嫌)のだが、トリュフォーのこれは29分の短編。

『大人は判ってくれない』(1959)から3年後、17歳(あれ? はたち?)になったアントワーヌ・ドワネル(Jean-Pierre Léaud)はアパートで一人暮らししながらレコード会社(Philips)に勤めて盤をプレスしたり(いいなー)楽しそうで、そんなある日友人と行った音楽会でコレット(Marie-France Pisier)を見かけて一目ぼれ、音楽会に行くたびに彼女を見るので我慢できなくなってデートに誘ってみる。彼にとってこれは初恋で、おおまじで、そのうち両親にも紹介されて仲良くなり、思い切って彼女のアパートの通りを隔てて反対側のアパートに引越したりするのだが、彼女はなかなか親密になってくれなくて、どうするアントワーヌ(の初恋)、なの。

モノクロのカメラはRaoul Coutard、音楽はGeorges Delerue、これだけでぜったいなのよ。

まあね、最初からうまくいくんだったらドワネルものなんて成り立たないのよね。 というわけで;

Baisers volés (1968)

『夜霧の恋人たち』 英語題は、“Stolen Kisses”。

アントワーヌは軍隊で「谷間の百合」なんか読んでいるのだが、あんた兵隊として使えないから、て除隊になって、恋人のクリスチーヌ(Claude Jade)のパパの紹介でホテルのフロントの夜勤をやってみたらミスして浮気の修羅場を作り出してしまってその場でクビ、こんどはそこに居合わせた探偵の紹介で探偵社に勤めるようになって、そこから靴屋の主人の依頼で自分を嫌っている従業員を調べてほしい、て言われて靴屋の店員になりすましたら、主人の御婦人(前歯でわかった、きらきらのDelphine Seyrig!)に恋をしてしまい、でも彼女のことを「ムッシュー」て呼んじゃって、ああはずかしいごめんなさい、て手紙を書いて探偵も辞めて、今度は修理工になってクリスチーヌんちのTVを直しにいくの。

仕事も恋も一生懸命でじたばた走りまわるアントワーヌの奮闘がコメディぽく描かれて「夜霧の恋人たち」のしっとりしたイメージからはほど遠いのだが、修業時代の落ちつかない甘酸っぱさが全開、自分でもよくわかってないきょとんとした表情で、情動の赴くままに突っ走らざるを得ないアントワーヌがたまんなくすばらしい。 Wes Anderson映画の主人公の原型はまちがいなくここに。

ラストのCharles Trenetの歌がまた素敵でねえ。

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