気がついたら今年は半分終っていて、やってられんなくて、4日、イメージフォーラムで見ました。
“Leviathan” (2012) で有名になったとこが作ってきた作品の特集 -『ハント・ザ・ワールド - ハーバード大学 感覚民族誌学ラボ 傑作選』のうち、『モンタナ 最後のカウボーイ』。
原題の”Sweetgrass”は舞台となったモンタナ州の郡の名前にすぎなくて、「最後のカウボーイ」みたいな感傷的ななんかを期待しても無駄よ。 いるのは羊ばっかしよ。
“Leviathan”の、白目をむいた無言の魚介類が暗闇のなかでぬちゃくちゃべちゃべちゃのたくるばかりの映像がだめだったひとは多いかもしれないが、今度のは羊の群れ。あの無表情な奴らが「べー」「めー」「う”ぁー」「え”ー」「びぇー」とかサラウンドでわめきまくるのに10分以上耐えられないひとは見ないほうがいいかも。 あと、羊がいっぴき、にひき、さんびき… で眠りに落ちるひともやめたほうがいいかも(寝ちゃうから)。 あと、羊毛製品とかラム肉が好きなひとにはたまんないかも(たぶん)。
2003年、羊牧場での毛の刈り取りとか子羊出産とかそういう活動をひととおり紹介した後で、馬に乗った数名(カウボーイ?)と牧羊犬数匹と道路いっぱい埋めつくした羊さんたちが一般道を抜けて山のほうに旅にでる。夏の間、山を越え谷を越えてシルスマリアの雲よろしく灰色のもこもこの群れが約300kmを縦走して元のところまで戻ってくるまでの記録映像。 やたら数が多いので群れはなかなかまとまって動いてくれないし、山道は山道だから平坦じゃないし、熊とか狼とかでるし、引率する人たちは当然、なんか疲れてくるし。 ナレーションも時間や場所の推移を示す情報も一切でてこない。 朝も晩も、羊がばーばー鳴いているばかり。
道なんかなさそうな森のまんなかで群れが立ち往生してどうしようもなくなってしまうとことか、ほんとに大変そうでひとごとだけど泣きたくなる。 こんなときこそBabe(あの豚だよ)がいてくれたら百人(豚)力なのだろうけど、数が多すぎてあんな子豚じゃムリだろう、とか。
終ったあとの達成感もあるだろうなー、と思いつつ、ここは羊にもインタビューしてみたいところ、生きて戻ってこれてどうでしたか? とか。
あと、これは別にカメラを回しているからやったことではなくて、大昔から、アメリカのここだけじゃなくて、繰り返されてきた営為だということね。 羊のDNAにも刻まれている - わけないけど。
製作したハーバードの感覚民族誌学ラボ - Sensory Ethnography Lab (SEL)のサイトとかいろいろ見ていて、なんじゃろこれ、とか思ったのだが、要はこれまでのフィールドワークが聞き取りとか主に言語情報、定点観測情報とかを中心にイン/アウトを作っていたところの枠と幅を拡げて、そこに美学的な要素 - テクノロジーによって汎用化されたとこも含めて - を加えてどこまで学術的な客観性もたせることができるのか、みたいなところを目指しているのだろうか。
でも感覚、ていうなら匂いと温湿感も加えないと。 匂いはだいじよね。
おもしろい論文がふつーの読書に耐えられる、ようにふつーの映画鑑賞のように見ることはできるのだろうか。 説明なしナレーションなし、というとFrederick Wisemanのドキュメンタリーを思い起こしたりもするが、あれとはやっぱりぜんぜんちがうと思った。 対象がひとりでに語り出す、ように画面を繋いでいくWisemanに対して、決して語らない対象を執拗に並べて、そこに民族学的な意匠や意味を浮かびあがらせるようなアプローチ。 魚や羊が喋ったらおもしろいのにな。
あー 羊になりてえ。
7.06.2015
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