7.20.2015

[film] 最高殊勲夫人 (1959)

12日の日曜日の夕方、「未来学会議」でなんかぐったりしたので思いっきり即物的でわかりやすいのが見たくなったら丁度こういうのをやってた。

特集『若尾文子 映画祭 青春』はもちろんできるだけ見たいに決まっているのだが、なんかあの時間割みると行く気が失せて、しかも全席指定とかだし、あれで青春を取り返すのは難しいかも。
見たいのは見るけどさ。

いかに成功したカップルに学びこれを複製増産して女系家族の強固な基盤を確立するか、ていうハウツーとサクセスストーリーがいっぱい。 で、そこでのMVW (“The Most Valuable Wife” - 英語題)に輝くのは誰?  ていうサスペンスフルなラブコメなの。 おもしろいよう。

冒頭が三原家の次男と野々宮家の次女の結婚式で、仲人は、えー玉の輿なんて言葉は昔のあれですが、とか言いつつ、でもこれは商社の社長である三原家長男一郎(船越英二)と同じ会社で秘書をやっていて現在の地位を手にした野々宮家長女桃子(丹阿弥谷津子)の交配事案のコピーで、司令塔である長女桃子の次なる野望は三男三郎(川口浩)と三女杏子(若尾文子)をどうやってくっつけて帝国を築きあげるのか、なの。 彼女の女王蜂のような野望がどこにあるのかいまいちよくわかんないけど。

でも、三郎は一郎とは別の会社に勤めているし、杏子は働かずにぷらぷらしているし、当のふたりもそんなおせっかいは最初から察知してて今の時代にまったくもってナンセンスだわ、てぷんぷんして、互いに共闘しよう、絶対思い通りにはさせるもんか、とそれぞれに婚約者とか恋人とかいますから、て宣言してつーんと横を向く。

こうして映画は、それがどうしたってのよあたしはやるわよ、ていう桃子の鼻息と、恋愛は好きにさせてもらいます、でもそう言いつつ互いがなんか気になってそわそわする若いふたりの行動を「ちがいます」とか「そんなことはありません」とか「関係ありません」とか「じゃあこうします」とか、さくさくした決断とアクションの連鎖でスピード感たっぷりに描いて目が離せない。

主人公達だけじゃないの。 杏子が一郎の会社の秘書室に入って社内恋愛のパワーバランスが崩れたことに危機感をもった男女複数の同志が、まだろくにつきあってもいない二名に居酒屋でビール6本で結婚しろって強要し、その晩のうちに社長宅に行って仲人の約束まで取り付けちゃう(当事者の男の方はべろんべろ)、とかなんかすごい。 たった半世紀前のにっぽんよ。

とにかくみんなうじうじ悩んだり語ったり立ち止まらないところがかっこいい。最後がどこに落ちるのかは明らかなのだが、そこにしたって感動からは程遠くて、バーで飲み物頼むみたいなノリと勢いで片付けちゃうの。

で、MVWは誰なのかというと今回の件については桃子で、しかし杏子もあたしだって、と意気込んでいるので覇権奪取は遠くないのだと思うが、それにしても改めて、彼女たちはいったいなにを目論んでいるのだろうか。

でも出てくるひとみんながチャーミングで、最後のストップモーションまでぜーんぶ許せてしまう不思議。

あと、とんかつばりばり食べたくなる。

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