土曜日、シネマヴェーラのSecaucus7のあと、アテネに行ってみました。
Jon Jostの特集から、1本くらいは見ておきたい、と。
今回の特集の最後の1本で、昨年の山形で上映された『失われた町のかたち』。
彼が90年代の後半、1年半くらいリスボンに滞在していた際に撮りためていた映像を昨年頃から編集していったもの。 上映前の挨拶では、この撮影は、そのままデジタルカメラで撮ることの練習でもあった、と。 フィルムだと撮ることがそのままコストにはねるが、ヴィデオはいくらでもまわしっぱなしにしておくことができる。 この違いは大きかったと。
というわけで、カメラはやや低めの位置に置かれたまま、ほとんど動かない。そういう置きっぱなしの垂れ流しが5~10分間隔くらいで「失われた町」であるリスボンのいろんな光景を切りとっていく。
なんか、リスボンということもあるのか、去年原宿のカフェでPedro Costaの「溶岩の家」スクラップブック刊行記念の展示があったときにみた、「ヴァンダの部屋」のアウトテイク映像みたいなかんじもした。
乾いた土と光、朽ちかけたような石造の家と壁、その向こうで動いている人影、とか。
撮っている自分は透明で、透明でありたくて、そうなるために置かれるカメラ。
そうやって息を潜めれば潜めるほど、ファインダーの向こうに踞る彼の姿と、彼がそこにおいて把握しようとする世界が、その緊張関係が現れてくる。
途中、Fernando Pessoaの"A Factless Autobiography"と、Pessoaのオルタナ人格であるÁlvaro de Camposの"The Tobacco Shop"が引用されていた(よね?)のが印象的だった。
どちらにも、"I am nothing"というフレーズが出てくる。昼間の自分はからっぽ、夜に自分は自分になれる。 昼と夜の切り返しのなかで静かに失われていく(失われてきた)町とそこに身を置く異邦人としての自分が。
Jon Jostで見たいのは77年の"Angel City"なのだけど、今回の特集には入っていなかったの。
3.10.2012
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