7.20.2023

[film] 甜蜜蜜 (1996)

7月13日、木曜日の晩、ル・シネマ 渋谷宮下の「マギー・チャン レトロスペクティブ」で見ました。
この特集、すごく見たいぜんぶ見たい – 特に『ロアン・リンユイ/阮玲玉 4K』(1991)と『クリーン』(2004) - なのに2本しか見れないまま終わってしまった..

邦題は『ラブソング』、英語題は “Comrades, Almost A Love Story”。原題をそのまま訳すと「とってもあまい」- エンディングで流れるテレサテンの曲名なのね(ティアン ミィ ミィ)。 35mmフィルムでの上映で、なんかよかった。

監督はPeter Chan、配給はGolden Harvest – エグゼクティブプロデューサーはRaymond Chow、香港でいろんな映画賞をいっぱい獲っている。

1986年、中国本土から香港に渡ってきたシウクワン(Leon Lai)は若い頃にこの地で一瞬で恋におちたWilliam Holdenとの思い出に溺れたまま時間が止まってしまった叔母の経営する売春宿のようなところに住処は確保したものの、働く場所については香港の言葉 - 英語も含めて - がほぼ使えないので右往左往の苦労をしてばかり、でもめげずに淡々とがんばっていて、なにかあると天津に残してきた恋人のシャオティンに手紙を書いている。

そんなある日、マクドナルドのカウンターで働くレイキウ(Maggie Cheung)と出会って、バイトを世話して貰ったり英語学校(Christopher Doyleが先生)を紹介して貰ったり、テレサテンのカセットを売る露店をやったり、なんとなく一緒に過ごすことが多くなっていくものの、彼とシャオティンの間柄は切れないので別れることにして、そのうち株の暴落で一文無しに転落したレイキウはマッサージ屋で働きながらやくざのPao (Eric Tsang)と付きあうようになって、彼の愛人から会社経営者にのしあがり、シウクワンはシャオティンを香港に呼んで結婚式をあげる。

しばらくしてふたりが町を車で走っていたらリアル・テレサテンがいて、いそいそとサインを貰いにむかうシウクワンの背中を見ていたらたまんなくなって吸い込まれるように愛を取り戻し、ふたりそれぞれ今の相手とは別れるから、って誓って離れるのだが抗争に巻きこまれて香港を離れるPaoについていくレイキウと、シャオティンと別れたシウクワンは再び離ればなれになる – と思ったら舞台は93年のNYに飛び、シウクワンはチャイナタウンで料理人をしていて、Paoと一緒のレイキウもNYに高飛びしていて、そのうちPaoは街角の喧嘩で殺されてしまい、でもシンクワンとレイキウは、すごく接近してもばったりぶつかることはなくて、でも95年、テレサテンが亡くなった日にふたりは電気屋のおなじウィンドウでTVを見ていて…

大陸的というのかシウクワンがどこまでものろまでのっぺりどんくさくて、それに従って話しは全然うまく転がっていかないのでこのバカぁ、ってうんざりすることばかり積みあがっていってどうするんだよ! ばかりなのだが、近くにあったふたりの顔が動物みたいに少しづつ寄っていってゆっくりキスをしていくところとか、Paoの背中に彫ってあるミッキーマウスとか、叔母さんのWilliam Holdenとか、どうでもいいところがたまらない困ったやつだった。

あと90年代のNYの街は住んでいたので、チャイナタウンの裏通りとか隅々を食い入るように見てしまう。テレサテンが亡くなった日のこともなんか憶えているなー。

テレサテンの歌が結んだふたりの.. で、それはとっても普通にありそうな歌謡曲の、カラオケの画面になりそうなメロドラマ(ふう)で悪くないのだが、でも実は86年のはじめからふたりはな.. と最後に軽くひっくり返してくれるお話しでもあった。『花様年華』(2000)もそうだけど、Maggie Cheungて、どれだけ年を重ねてもいろんな事情にまみれても、あのきょとんとした表情のままそこにいてくれる彼女像を求められてしまうのかー、とか。


東邪西毒:終極版 (1994)

6月29日、木曜日の晩、同じ特集で見ていたやつ。邦題は『楽園の瑕 終極版』 - 長いこと、「らくえんのえび(蝦)」だと思っていた。「きず」だったのか.. 英語題は”Ashes of Time Redux”。

監督はWong Kar-wai、撮影はChristopher Doyleで、出演者はMaggie CheungからLeslie CheungからBrigitte LinからTony Leungからすごく豪華.. なのだがみんな同じような傘被った焼け焦げた武者のいでたちなので誰が誰やらあんま見分けがつかない。 故事伝奇ちゃんばらもの、地の果てだから方角なんてどうでもよいかんじだが西の強者、東の剛者にいろんな曲者たちが絡んだりして順番に砂漠の彼方に消えていく - そこに留まるというより消えるためにやってくる西部劇みたいのを狙ったのだと思うが、服のぶぁさぶぁさいう音とかじりじり焦げたりのそういう熱みたいのが止まってしまった時間のなかにぜんぶあって、眺めているうちに終わってしまった。

なんとなく90年代のCDジャケットのグラフィックみたいなのを思い起こしたりー。

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