7.12.2023

[film] Léon Morin, prêtre (1961)

7月2日、日曜日の夕方、日仏学院のメルヴィル特集で見ました。邦題は『モラン神父』、英語題は”Léon Morin, Priest”。見たことあるやつだったと思ったのだが見ていなかったかも。

原作はゴンクール賞を受賞したBéatrix Beckの同名小説(1952) - アメリカでのタイトルは” The Passionate Heart”。モノクロの撮影はHenri Decaë。

ナチス占領下にあるフレンチアルプスの小さな町で、ユダヤ人の夫を戦争で失い小さな娘をひとりで育てているBarny (Emmanuelle Riva)がいて、添削の机仕事をしながらオフィスにいる女性にぼーっと見とれたり、占領軍から守るために娘に洗礼を受けさせたり- でも自分は無神論者だしおもしろいこともないので、教会の野郎をからかってやれ、ってわざわざ告解に行って、ブルジョアじゃなさそうな田舎っぽい名前から”Léon Morin”ていうのを選んで、彼の登場を待つ。

こうして現れたMorin (Jean-Paul Belmondo)は確かに態度も外見もつるっとやわそうな若者で、Barnyは焚きつけてやれ、くらいのかんじでカトリックなんて、神様なんてさー、みたいな議論を吹っかけてみるのだが向こうは全然動じなくて真面目に余裕たっぷりに返してくれて、別れ際にはあなたはこれを読んでみるといい、って参考文献まで渡してくれる。

ま、いいか暇つぶしだし、程度だったのだが、会って議論を重ねていくうちにお互い離れ難くなっていって – Barnyにはそのように見えて、それはMorinの宗教者としての当然の態度なのかもしれないけど、それだけじゃないのかもしれない、ひょっとしたら。

まだ戦後でもなんでもない、占領下にある田舎で、自分はなんでこんなふうに燻らなければならないのか、神なんてどこにもいないじゃないかどうしてくれるんだ? というBarnyの怒りに近い鬱憤とMorinの揺るがない信心が正面からぶつかって、それが変わっていく戦況に関係あるのかないのか、BarnyのMorinへの恋愛感情に変わっていく。彼女の思いがどうなっていくのか、それはMorinの信仰を揺さぶったりそこになだれ込むとこまで行くのか。 その緊張の糸ときたらまるでギャング映画やサスペンスホラーのそれで、最後までなにがどう転ぶかわからない、Morinの法衣がいつ血で染まったり炎に包まれたりするのかはらはらだったのだが、彼があの笑みを浮かべつつ天に召されることはないのだった。 とにかく『賭博師ボブ』と同じようにほぼなにもしない主人公を中心に、揺るがないなにかと揺れまくるなにかが衝突して小さな音をたてて、世界はちっとも動かないったらない。

これ、本当は娘を抱えて戦争ですべての行き場を失ったかわいそうなひとりの女性のドラマとして描くこともできたはずなのに、そうはしなかった。『賭博師ボブ』と同じように愚直に自分の仕事、というかやることに没入して結果的に周囲をガタガタの不幸にして、それでもぜんぜん応えてないバカな男のお話し、をまるでファンタジーのように描いた - これってなんだろ? って見るべきなのか。

それにしてもJean-Paul Belmondo、前の年には”À bout de souffle” (1960) -『勝手にしやがれ』に出ているんだよ。それなのになんであんなに爽やかに微笑んでいられるのか。これだけで神なんているもんかぼけ、になるよね。


Voyage à travers le cinéma français (2016)

7月2日の昼、日仏学院のメルヴィル特集で見ました。 つまりこの日は午前に日仏行ってこれ見て、有楽町に行って『青いカフタンの仕立て屋』を見て、夕方にまた日仏に戻って『モラン神父』を見た、と。
邦題は『フランス映画への旅』、英語題は”My Journey Through French Cinema”。この翌年に10エピソードからなるTVシリーズも作られている。

Bertrand Tavernier(1941-2021)による3時間21分のドキュメンタリーで、彼自身の企画と選定、ナレーション(自身も画面に出てくる)による私的フランス映画史講義。 アメリカで同じようなことをやっている(というかこういうことをできる)のはMartin ScorseseかPeter Bogdanovichくらい。

年代としてはRené Clair、Jean Renoir、Julien Duvivierあたりの1930年代から入って、自分が映画と出会った頃のJacques Becker、Robert Bresson、Marcel Carnéを経由して、自分が始めて製作の現場に関わったJean-Pierre Melvilleからヌーヴェル・ヴァーグまでざっと年代順に。作家だけでなくJoseph KosmaやMaurice Jaubertといった映画音楽作家まで、次々にいろんなクリップが並べられて、どれも当然のようにおもしろそうで、あっという間に終わって、まだ見てないのだらけだわお腹へったもっと、しかないの。

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