6月28日、水曜日の晩、グランドシネマサンシャイン(初めて)で見ました。字幕版が見れる最後の日だった。
中国のアニメーションで、邦題は『ライオン少年』、英語題は”I Am What I Am” (?)
日本では2022年に『雄獅少年 少年とそらに舞う獅子』のタイトルで字幕版が公開されたそう。
中国の伝統芸でもある獅子舞の技を競う若者たちを描く青春/スポ根(に近いかんじの)ドラマ。ここでの獅子舞は正月などのお祝いで舞うおめでたい縁起のよいあれ、というより大きな獅子の頭を被って前足を担当する1人と背中と後ろ足を担当するもう1人が獅子となり、そこに太鼓で拍子をとる1人が加わった計3人が一体の獅子として舞ったり跳んだり戦ったりするスポーツ – どちらかというとアクロバット・格闘技系の - としてあり、でもそれに触れたりやったりする機会はそうあるもんじゃなかったり。
広東の田舎で暮らす少年チュンは両親が都会の建築現場に出稼ぎに行っているのでしょんぼりぼんやり勇ましい獅子舞を眺めていると、獅子の頭を被った同じ名前の少女チュンがひとりでかっこよくいじめっ子系の男子をやっつけたのを見て自分でもやってみたい! ってなる。女の子のチュンは大会に出るくらいの実力の持ち主なのだが、少年チュンに君も獅子舞やりなよ、って誘って獅子の頭を置いてどこかに消えてしまう。
一緒にやる仲間として集めることができたのは女の子目当てで傍にいたマオと食べ物目当てで傍にいたゴウくらい。道具もなにもないけど、まずは師匠を探そう、って若い頃にはそこそこの踊り手だったらしいがいまはただの役立たずでサボってばかりの干物屋のチアンを見つけだして、渋る彼と機嫌のよくない彼の妻をなんとかたててがむしゃらな特訓になだれ込んでいく。
地区大会の予選をどうにか勝ちあがっていよいよ中央での本戦だ、ってなったところで出稼ぎに出ていたチュンの父が倒れて寝たきりの状態となって戻ってきて、獅子舞どころじゃなくなったチュンはお家を支えるために都会の工事現場での労働に出ていくことになり…
かつてどこかできっと見たことがあるスポーツもの(or 最近だとバンドもの?)のこてこての熱血展開そのままで、感覚としてはやはりスポーツ系というよりカンフー映画のそれに近くなってしまうかも。で、だからといってつまらない、ということでもなくて、お約束から外れた「意外な展開」になったらそれはそれでぶうぶう言うことになるのだろうと思われる – くらいの安定感、というのは誉め言葉にしてよいのかどうか。
特筆すべきは絵の美しさで、透明度と見晴らしのよい大陸のランドスケープ - 紅葉とか花とかも含めた - の鮮やかできめ細かいところと、そこを縦横に暴れまくる獅子舞の獅子のびらびらの毛玉(でいいの?)のしなやかな動きも含めた舞いの流麗で絵画のようなとこ。実際の獅子舞のそれよりも素敵なのではないか、とか。
人物はアニメに求められるそんなにきれいな顔立ちではない、松本大洋の描くガキどもの小汚いリアルがあって、その突飛さ剽軽さが獅子の頭の目のくりっとしたかわいいかんじにうまくはまっていて、それらが軽快かつ力強く跳ねまわるので全体として「ライオン少年」としか言いようのない少年たちの変容と成長をめぐるおとぎ話になっているような。
他方で、全体としては主人公 - 庶民の貧しさとか生活の辛さ - 日本の昭和30年代くらいの - がベースとしてある気がするので、中国のこととか何も知らないで見ると、こんなきつい世界あるの? なんでそんなふうになっちゃうの? どこにおとしたいの? って文句言いたくなってもおかしくないかも。獅子がどんだけジャンプしたって別の世界には跳べない。 でもなー、アニメーションなんだしジブリみたいのはムリにしても、最後は思いきり空を飛ばせてあげたってよかったのではないか、とか。
続編は決まってて既に動きだしているそうだが、虎と龍は出してほしいな。 できればトトロとカンフーパンダも。
7.03.2023
[film] 雄獅少年 (2021)
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