9.06.2022

[film] Love Crazy (1941)

8月31日、火曜日の午後、Criterion Channelで見ました。

8月、Criterion ChannelではMyrna Loy (1905-1993)の特集 - “Starring Myrna Loy”をやっていて、いくつか見た。見たのはこれの他に、”The Thin Man” (1934) 『影なき男』、“After The Thin Man” (1936) 『夕陽特急』、“Libeled Lady” (1936)『結婚クーデター』-どれも彼女とWilliam Powellとのコンビのやりとりと突っこみあいが楽しくて、いくらでも見ていられる。

Love Crazy (1941)

4回目の結婚記念日を前にしたSteve (William Powell)とSusan (Myrna Loy)の夫婦だったが、いろいろ企画していたその晩にSusanの母のMrs. Cooper (Florence Bates) – Steveとは仲悪い - が現れたり、アパートの階下にSteveの元カノのIsobel (Gail Patrick)が越してきて、夫がいるのにSteveに未練があって近寄ってくるのでばたばたしているうちに浮気疑惑が立ち上がり、Susanは姿を消して階下にいたバカっぽいアーチェリーの世界王者Ward Willoughby (Jack Carson)と一緒になり、離婚の裁判を起こされて、でも誤解なのだから離婚したくないというSteveが弁護士と相談したら精神障害って認定されれば離婚を遅らせることができる、って。で、初めは30日の検査入院のはずだったのに厳格な療養所に送られて、冗談じゃないってそこから脱走したら警察が追っかけてきて..  

という身から出た錆型のスクリューボール・コメディで、互いに意地を張ってだんだんおかしくなっていくWilliam Powellと彼を好きすぎていじめないわけにはいかないMyrna Loyのやりとりがたまんない。

あと、精神病院の院長に『生きるべきか死ぬべきか』(1942)のSig Ruman - ”Schultz!” - が出ていてたまんなかった。


Libeled Lady (1936)

監督は↑と同じJack Conway。大金持ちの社交家のConnie (Myrna Loy)が新聞社に婚約を巡る虚偽の記事を出されたって名誉棄損で500万ドルの損害賠償訴訟を起こして、頭を抱えた編集長のWarren (Spencer Tracy)は元記者でプレイボーイのBill (William Powell)に助けを求める。Billの企てはConnieに近づいて二人きりになったところで彼の「妻」がそこに現れて気まずいふうにして、結果訴訟を取り下げさせる、というもので、でもBillはまだ結婚していなかったので昔から付きあっていたGladys (Jean Harlow)に声をかけて計画を打ち明けて、ぜんぶ終わってうまくいったら君と結婚するから、って「妻」に仕立てて…  よくそんなこと思いつくな/思いついても実行しないよな、っていうのが実行されてこんがらがって転がっていくスクリューボールで、最後は重婚疑惑で二転三転して、それでもよかった… のかな?うん.. いいのかも、になるのは真ん中の4人のそれぞれがすばらしいからー。


The Thin Man (1934)  +  After The Thin Man (1936) - 邦題の『夕陽特急』って、やるきゼロだろ。

原作はDashiell Hammettの同名小説 (1934)で彼のピンカートン探偵社時代の経験に基づいた内容で、これが彼の最後の小説で、30年以上恋人関係にあったLillian Hellmanに捧げられている。主人公のNickとNoraの会話はこのふたりのそれがベース、らしいが、映画の脚本はAlbert HackettとFrances Goodrichの夫婦が書いて、より親密でコミカルなものになっているそう。

引退した探偵のNick Charles (William Powell)とNora (Myrna Loy)の夫婦がNYのクリスマスを楽しみにサンフランシスコから来ていて、そこで娘の結婚式の前に消えてしまった父親 – これが”Thin Man” – と同時に消えてしまった債券の捜査を依頼されて、折角休暇で来たのに、ってぶつぶつ言いながら捜査を始めるの。

推理もの、というよりは夫婦と犬のAsta (Skippy)が騒がしく(執拗に、というよりはどたばた楽しめに)周囲を嗅ぎまわって、最後に関係者全員を一室に集めて、ひとりひとりを問い詰めたりしながら犯人が暴かれる - 犯人が自分でスリップする - のを待つ – この形式は“After The Thin Man”でも同様だった。

映画はふたりと一匹が列車でサンフランシスコに戻るところで終わって、次の“After The Thin Man”は戻る列車の車中から始まって、サンフランシスコの家に戻るとAstaの妻が浮気したりしていて(黒犬が逃げていく)、今度は大晦日の晩に…

Noraのお金持ちの実家で、彼女のいとこのSelma (Elissa Landi)の夫Robertが3日前から行方不明になっている、というのでNoraは相談を持ちかけられる。RobertはSelmaの前の婚約者David (James Stewart)から離婚の示談金を提示されていて – Robertを探してチャイナタウンのナイトクラブに潜入したふたりだったがそこで殺人がひとつふたつ起こって..

映画としては、前作よりもこっちの方がおもしろかったかも。

やはり見るべきはNickの推理の鋭さ、というより - 推理自体は、なんかずるしてないか?みたいに甘い気がする – ずっと仲良くいちゃいちゃ言い合ってキスしたりハグしたりしながらなんとなく事件を解決してしまうNickとNoraの楽しさ、だろうか。「結婚がセックス、ロマンス、冒険の終わりを意味しないハリウッドのスクリーン上の最初のカップル」ってWikiにはあったが、そうなのかも、という楽しさ。

この”The Thin Man”シリーズは当たって、シリーズで6作も作られたって。”Thin Man”が出てくるのは最初のだけなのに。

Myrna Loy、とても素敵で、Katharine HepburnとCarole Lombardのふたりの女王の間に埋もれてしまいがちだけど、まだまだ見るべき作品はいっぱいあるようで、見たいな。

あと、犬のAstaを演じたSkippyは、”The Awful Truth” (1937)と”Bringing Up Baby” (1938)というrom-comの超クラシックにも出ている神犬、だよ。

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