12.06.2018

[film] 9 to 5 (1980)

11月28日水曜日の晩、BFIのComedy Genius特集で見ました。前にも書いたように、これの4Kリストアにあわせたリバイバル上映とJane Fondaの登場(+ 特集)がこの企画の目玉のひとつだし、立て看板も出ているので見てみようかな、と。

ヒットした主題歌のことは知っていたし、”9 to 5”というのが会社の始業時刻と終業時刻を示すものだというのも確かこれで学んだのだが、当時ちーっとも見る気がしなかったのは、自分はこういう世界に入っていくことになるなんて1ミリも思っていなかったからで、同様の理由で”The Secret of my Success” (1987) -『摩天楼はバラ色に』も見てない。(”Working Girl” (1988) は見たな。 Girlsモノだと思ったのかな)

おめでたいことだったねえ、と思うし、ほうれ見たことか、とも思う。気が付いたらこんなんなってて、どうすんのさ、って。

Judy (Jane Fonda)は彼と別れて人生をリセットすべく職を探して、なんとか大企業の秘書の職を得て、てきぱきした上司のViolet (Lily Tomlin)にくっついていくのが精一杯で、でもだんだんそこのボス(Dabney Coleman)の横暴さ – Violetのやったことを自分の手柄にする、けど昇進は別の男に、とか、同僚を平気でクビに、とか - にあきれてきて、そこに同様にセクハラの対象に曝されてあったま来ているDoralee (Dolly Parton)も加わって、酔っ払ってはっぱ吸ってあのクソ野郎をどうやって虐めるか八つ裂きにするか、とか妄想して盛りあがっている(あるある)。

翌日Violetはぼうっとした頭でボスのコーヒーに殺鼠剤を入れてしまい、椅子から転げ落ちて気を失っただけの彼を勘違いして病院送りにして、死んでなくてよかったのだが、ちょっと待てこのままこいつをどっかに閉じ込めておければ、と思いついて、彼が裏でやってる悪事の証拠を取り寄せるのと、彼がオフィスにいないうちに好き勝手にやっちゃえ、って改善活動して、でもやがて戻ってきやがったら逮捕するとか息巻いてて。(本当は最初のすれ違いのときに殺して死体も差し替えておけば .. ってこれじゃサスペンスになっちゃうか)

最初は虐げられている3人のOLが力をあわせて性悪上司をとっちめるシンプルな奴(or それを通して自分を取り戻していくJudyのお話し)かと思っていたら、3人もそれぞれ相当にワルで、そのえげつないやり合い刺し合いが楽しいのだが、最後は結局どれも会社のためみんなのためになっちゃうのでなんですかこれ? っていうブラックユーモア。 でいいの?

(たぶんだれもやらないだろうけど)これを今の会社のコンプラ教材として使って「誰のどこがいけなかったと思いますか?」とかやってみたらどっち側にも相当酷い点がつきそうだし、「じゃあどうすべきだったのでしょう?」てやると、もっと早い段階でSpeak Upを! とかになるんだろうか。 でもさあSpeak Upできない状態にあったからこうなっていったわけで、そういう状態にしておいたのは会社だってこと、そしてそれをいまになってしゃあしゃあとSpeak Upだの言い出したのも同じ会社だってこと忘れちゃだめよ。社会の縮図だねえ、とか言うのは簡単だけど、こんなの社会の縮図にしたってくそ不愉快だから、この映画くらいの適当に壊れたかんじでいいのかも。

そういう点で割と最近の”The Wolf of Wall Street” (2013) は壊れててよかったねえ。(あれは実話で、実際に壊れたわけだが)

共同脚本のPatricia Resnickさんは当時のオフィス事情をきちんとリサーチして書いているのでOA機器(って今は言わないの?)以外のところの雰囲気、空気感みたいのはあんなふうかも(こそこそ話しててもだいたい伝わってきちゃう、とか)。 そういう辺りから今の会社・オフィスのありようを含めて振り返ってみたりするのにはよいネタかも。

コメディとしては、そんなに笑えないかなあ。以下の記事にあるようにフェミニストの映画ではないよね。 系列としてはやがて“Horrible Bosses” (2011) あたりに繋がっていくどたばた系のやつよね。

https://www.theguardian.com/film/2018/oct/19/is-9-to-5-really-a-feminist-movie

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