12.21.2018

[film] Coming Home (1978)

8日の土曜日の夕方、BFIのJane Fonda - 今日12月21日が誕生日ですって! - 特集で見ました。35mm上映で『帰郷』。

BFIは自分にとってほぼ学校とか塾みたいな存在になっているのだが、この辺の60年代後半から70年代の「名作」を35mmで見れるのは嬉しい。ぜんぜん書けていないけど、最近見たのだと、”A New Leaf” (1971)とか、“What's Up, Doc?” (1972)とか、”Poor Cow” (1967)とか、こういうのってTSUTAYAとかのDVDではなくて、35mm上映で見るのが正しいとしか言いようがないの。フィルムの傷みや退色の具合も含めてほんとに美しくて、もちろん、何故それを美しいと思えてしまうのかについて、考える意味はあると思うけど、少なくともデジタル化で失われてしまうものってある。ということってデジタル化されてしまった後ではわからない。追えない。

今年ドキュメンタリー映画 - “Hal” が公開されたHal Ashbyの監督作で、Jane Fonda自身のプロダクションからリリースされた。

冒頭にLuke (Jon Voight)を含む戦地から怪我や障害で戻ってきた元軍人たちが病院内で議論しているところがあって、続いて黙々とランニングしているばりばり現役軍人ぽいBob (Bruce Dern)がいて、その妻がSally (Jane Fonda)で、Bobが戦地に赴く前の晩から見送りまで、そんなに湿っていなくて淡々と見送った後に、戻ってきた軍人たちのいる病院でのボランティアの介護を申し出る。

お国のために戦地に行ってしまった夫の思いに少しでも寄り添えれば、くらいの気持ちで国のために戦地から戻ってきた軍人たちのケアに手を付けてみたSallyだったが、患者たちの惨状・荒れ具合ときたらひどいもので、自分の認識の甘さを思い知らされて、特に下半身不随で横たわった状態でしか動けないLukeとは初めは衝突して、のちにだんだん近づいていって、そうすると彼の表情も変わって車椅子でいろいろ動いていけるようになる。

見る前は70年代アメリカの典型的な反戦映画、ってイメージを持っていたのだが、Boy Meets Girlのお話しに、それでも間に挟まってくる「戦争」をなんなのこれ? って言っているようなかんじ。 Bobからは頻繁に手紙が来て、彼の休暇の際、香港に会いに行ったりもするのだが、Lukeと会うようになってからはなんかうっとおしくなっていく。 それはBobのことを心配するのに疲れた、というよりもLukeの正論 - 国のためと思って戦って結果こんなんなったけど本当にバカだった(自分もどいつもこいつも) – ていうところに落ちて、Bobが無事に戻ってきてもちっとも嬉しくない、むしろ浮かれて更に偉そうになっているのでうんざりで。

というのをメロドラマ的な密なうねりの中で描くのではなく、当時の音楽(どまんなか)を背景にスケッチとして散らしていって、戦争が変えてしまった”Home”のありようについて考えさせる。そしてそれは湾岸 ~ イラク戦争を経てもぜんぜん変わっていない、むしろPTSDのような後遺症、症例として、特別なケアを必要とする重い「病気」として隅に押しやって、そうやって一向に止まる気配を見せないアメリカの軍国主義についても –。

というのとは別に、いろんな戸惑いを全身でひっかぶってつんのめりあたふたし、それでも人を愛さないと、ってLukeのところに走るSallyと、それを見守りつつ自らも変わっていくLuke(と我々)がいて、その過程のなかに”Home”としてのアメリカ、が見えてくることを狙ったのだと思うのだが、とにかくこの作品のJane Fondaは途中で素敵に変貌する髪の毛とかも含めて、いいなー、って。


これの後にBFIのコメディ特集で、”Alternative Comedy: The Early Years”ていうのがあった。
11月末にこの特集で見た80年代初のTVプログラム - “The Young Ones”、その更に前にBBCやITVでやっていた30分枠のコメディ番組を3本、番組のProducerだったPaul Jacksonさんのトークの後に見る。 どれも今のSNLのような観客が囲むところでのスタンダップコメディに生のバンド演奏が入って、”The Young Ones”に出ていた俳優さんたちも登場する。 笑いのネタとしては今見てもそんなにおもしろいものではないのだが、この番組を見て、これなら自分もやれるかも、ってコメディを志す若者が - ちょうど当時のパンクと同じように - いっぱい出たのだと。 なるほどねえ、だった。


ところで、The Guardian紙のBest Films of 2018、1位はやはり”Roma”でした。NYではこれの70mm版を上映するって。すごく見たい。 あと、今年のここの1~4位まではまったく違和感ないかんじかも。

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