で、こっちが正真正銘のフェミニスト映画 – いや、なんとかイストとかイズムとかいうより正義とはどういうものか、に正面から向き合ったドキュメンタリー映画。とにかくおもしろい。
3日の月曜日の晩、BFIで見ました。 この日のこの晩、隣のRoyal Festival HallではMichelle Obamaの本の出版にあわせた彼女のトークがあって、自分ももちろんメンバー先行予約の朝にネットで突撃したわけだがオープン2時間前に入ったのに前方に3000人のキューができてて、2時間後に轟沈した。来シーズンはもっと上のレベルのメンバーになるべきか、まじで検討する。
で、当日もリターンチケットを狙って粘ったのだがネットではダメで、その替わりじゃないけど、とこっちを取った。 英国では1月に正式公開となる映画の早めのプレビューで、上映後に共同監督(制作も)のふたり - Betsy West, Julie CohenのトークとQ&Aつき。
93年に女性で史上2人目の米国最高裁判事となった現在85歳のRuth Bader Ginsburg – “Notorious R.B.G.” としてカルチュラルアイコンにまでなってしまった彼女のキャリアを追ったもの。
監督のふたりによるとドキュメンタリーを作りたいと彼女に申し入れたのは2015年の秋で、その頃はネットでこんなに騒がれるひとになるとは思っていなかった、と(映画のプロモーションにはよいことだったけど、便乗企画ではないのよ)。
ブルックリンのユダヤ系の家庭に生まれてCornellで夫となるMartin Ginsburgと出会って結婚して当時女性がぜんぜんいなかったHarvard Law Schoolに進み、夫の仕事にあわせてColumbiaに移って、子育てをしながら勉強して法学の教授になって、訴訟案件も手掛けるようになる。
映画は93年、クリントンによって最高裁判事に指名された際の上院での弁論 – Orrin Hatchとの対決 - をひとつの軸に、それ以前の分も含めて彼女が裁判で戦って勝ち取ってきた女性差別事案のいくつかを紹介していく。
その中には有名な、それまで男性のみが入学を許可されてきたVirginia Military Institute (VMI)の件(1996)などもあって、要は、女性が、女性であることを理由に除外されたり排除されたり不当な扱いを受けたりすることは憲法の精神からすれば間違っているのだ、と(異議なし)。このことを言葉を選んで、ロジカルに戦略を立てて、ゆっくりソフトな声で喋って丁寧に相手を潰していく。「傾向」とか「慣習」とか、そんな言いぐさは瞬殺される。 差別というのは差別している側が「知らなかった」「意識していなかった」で済まされることが多いけど、肝心なのは差別されている側が「いま」感じている苦痛の方であり、これは法によって断固救われなければいけないものだ。
というようなことを彼女は畳みかけるように、ではなく、とてもスローにわかりやすい言葉で説いていく。でもその破壊力ときたら爆弾以上で、でもそれに火を点けて放ってくるのは折れそうなくらい華奢で小柄な青い目をしたおばあさんである、という痛快さ。
彼女の対応した判例を追っていくと、法を通して強烈に世界を変えていったひとだねえ、て改めて思ったし、放送業界でキャリアを積んできた監督のふたり(女性)も自分が入った頃と比べると彼女が変えてくれた風景は確実にあるというし、今のこんなご時勢に彼女が注目されるのは当然のことなのだわ。
翻ってしみじみひどすぎる今の日本の差別事情に泣きたくなる(日本のLegal Landscapeって、米国だと70年代くらいのレベルよ)。入試の件なんて明確に犯罪だと思うし、女性活用を謳うなんとか委員会に男性しかいないとか、法感覚以前のところで倫理的に腐っている – だってみんなへらへら他人事じゃん - としか言いようがないし。
という法律と正義を巡る彼女の活躍とは別に、ずっと一緒に連れ添った夫Martinとの純愛としか言いようのないエピソードも横に流れていて、いいなー。
上映後のQ&Aで、彼女に映画を見せた時の反応は? という質問に、彼女が涙を見せたのは彼女が自身で音楽 - オペラへの愛を語るところで、Martinのところは結構悲しいシーンもあるのにぜんぜん平気で以外だったと(Martinについては、彼の写真とかが出てくるだけで嬉しいんだって)。
あと、先月肋骨3本折ったけど、もう元気でエクササイズも再開していて、今のところ引退するつもりもないって。
”9”がよい数字(最高裁判事の数)だから90までは、とか言っているって。
最後にDiane Warren - Jennifer Hudsonによるパワフルとしか言いようのないテーマ曲 - ”I’ll Fight”ががんがんくるし、笑えるところもいっぱい - SNLでKate McKinnonがRBGのネタをやるのを見るとことか - あるよ。
これ、日本では絶対公開されないとだめ。法曹関係者は全員必見必修だし、企業もしょうもないセクハラ対策ビデオとか流すんだったらこれを見せろ。
法律の知識ゼロでもへいきだから(学校で法律も法学もいっこも取らなかったの。経済も)。人権や正義がどうやって実現されるのか、なぜそれが必要とされるのかについて教えて、考えさせてくれる最高の教材になっているから。
RIP Pete Shelley.. ありがとうございました。
12.07.2018
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。