6月のBFI SouthbankではIda Lupino 特集 - “Ida Lupino: Actor, Director, Writer, Producer, Star” - をやっていて、どれもすごくおもしろそうで、でもMeltdownだなんだでぜんぜん通うことができなくて、結局見れたのはこれを含めて5本(全15本 - トークとかも含むけど - のうち)だけ。あーあ。
これは14日の木曜日の晩に見ました。問答無用のサイコ犯罪もののクラシックなのに見たことなかった。
冒頭に、これはあなた自身の身にも起こることかも知れませんよ、って出る。
で、最初に今回の犯人と思われる男がそれまでに犯してきた一連の殺人が短く紹介されて、そいつ= ヒッチハイカー がメキシコの方に釣りに出かけたふたりの仕事仲間に拾われ、そいつが車内で突然極悪人に変貌し、銃でふたりを脅して力を握っていいように振る舞っていくところ、襲われたふたりの恐怖 - 殺されないためには運転するしかない、でも運転してもどこに連れていかれるのかまったくわからない - をねちっこく丹念に描く。
犯人の狙いはボートを拾えるカリフォルニアのバハまで行ければ、それまでこのふたりを足 & 人質として確保しておければ、で、囚われたふたりの方のは相手の隙を見つけたり先々に手掛かりを残して警察がなんとか突きとめてくれるのを祈るか、で、途中で車が使いものにならなくなってからは残された体力、というのがどちらにとっても重要な決め手になってくる。それらが体力を除けば互いによく見えない状態のまま、日が沈んでは昇っていく。 終わりがまったく見えない。
普通のドラマだったら犯人の背景や心理をもう少し掘り下げたり、その状況から抜け出そうとするふたりの心理的な葛藤や駆け引きやいちかばちかの賭けに時間をかけたりする気がするのだが、ここにはそういうのはあまりなくて、突然現れた不条理に慌て戸惑い、銃の暴力に蹂躙されてどうすることもできなくなってしまう怖さ、フリーズして疲労に負けて怖さが蝕んでいく恐怖、この恐怖が更にそのフリーズ状態を進行させて思考を麻痺させていく救いのなさがじりじり精緻に描かれていて、その辺はやはり女性監督、というかIda Lupinoのすごさというべきか。
これ、最近よく言われる襲われたり拐われたりしたときなんで抵抗しないのか、ていうガサツで愚鈍な男共が振りかざす理屈を軽く蹴飛ばす内容でもあって、この状態で抵抗なんてしたら殺されるんだよ、わかんないのか? ということを映像できちんと示してくれる。
この恐怖映画で描かれているのはほぼそれのみ、と言ってよいくらいで、最後に解決しても爽快感はあまり来ないの。束縛状態から解放された安堵はくるけど、トラウマのようにあの恐怖はべったり張り付いて消えなくなっていることがわかる。 次に車に乗るときに同じことが起こらないって誰が言えようか、と。
この、外面だけだととても埃っぽくて男とか獣の臭い満載の作品を35歳の女性が撮っちゃったというすごさ、かっこよさときたら。
ああ夏至をとうに過ぎて、6月が、1年の半分が行ってしまうよう - -
6.30.2018
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