6.19.2018

[film] L'amant double (2017)

11日の月曜日、なんかだるかったので会社を休んで、CurzonのVictoriaで見ました。
英国はこのままのタイトルで公開、米国のは“Double Lover”、日本のは『2重螺旋の恋人』? 。

François Ozonの新作で、原作はJoyce Carol Oatesの短編 - ”Lives of the Twins” – これを翻案したものだそう(未読)。 最初にJoyce Carol Oatesの名前が出ただけでああこれはこわいやつだわ、て思った。確かにこわかった。

冒頭、Chloé (Marine Vacth) が長い髪をばっさり切るところと診療台で両脚を広げているシーンがあって、神経質そうな彼女はずっと原因不明の腹痛を抱えているので別にセラピストを紹介してもらって、Paul (Jérémie Renier)のところを訪れる。 Paulは穏やかなかんじで治せるかどうかわからないけど、と言うのだが、彼女はだんだんよくなって(どんな治療をしたのかは不明)、Paulとも仲良くなって、やがてふたりは一緒に暮らすようになる。

その後Chloéは街中でPaulにそっくりな人を見かけて、でもPaulは知らん気のせい、というのだが気になって探っていくとそいつもセラピストで、Louis (Jérémie Renier 二役)といい、試しに訪れて治療を受けてみるとやたら挑発的で乱暴でドS風でなによこいつ、になるのだが、なんだか(昔のロマンポルノ風に)ずるずるいってしまい、そいつが言うにはPaulとは双子の兄弟だという。Paulはそのことを明らかにしていなかったのでなんかおかしいわ、と。

書くとつまんなくなるのでここでやめるけど、そこから更に掘って探っていったら驚愕の過去とか因果が明らかになってひええー、になるの。双子にまつわるいろんな類型とか言い伝え、あるいはオスの三毛猫(あの猫いいなー)の生殖確率にまで言及しつつ、それでも捕捉しきれずにこぼれる奇妙な愛の謎とか不可解とかに迫っていく。

前作の”Frantz” (2016)にもあったわたしが愛してしまったあなたは誰なの? というテーマが戦争を介した敵国間ではなく双子、という関係のなかでわんわんこだまして更に自分にまで降りかかってくるの。これ、双子を双子に割って固化してしまった暴力とか残虐さとかのほう - ホラーとかゴスとかSMとか - に行ってもおかしくないテーマなのだが、そっちには向かわずになんとか愛の領域に留まろうとする。それも、同じようなのがふたりいるんだからどっちでも、とか、めんどくさそうだからどっちもいらん、のではなくある意味とってもまじめに誠実に。

で、そのまじめさでもって”Frantz”でもPaula Beerをどこまでも苛めぬいていたが、ここではMarine Vacthに対してなかなかひどいことをする。ああいうつーんとしたタイプの女性をいたぶるのが相当お好きなようで、François Ozonてやっぱし相当の..

でも結果的にそういうのを通じて治療できたようだからよかったのかなあ、とか。

いっこあるとしたら、Chloéがそこまで執拗に追って求めていく愛というのが、全体を覆う冷たいトーンとなんか乖離している気がすること。そこまでしてあの双子に拘るか? 愛がほしいのか?  べつに猫でいいじゃん、とかその辺。いや双子の磁場というのはそこまで強力で怖ろしく逃れられないものなのじゃ、というのであればやっぱホラーにしたほうがよかった気もするしー。
あとこれ、相手を二重人格者の設定にしても変わらなくないか、とか。

でもぴりぴり(ハッタリ込み)の緊張感は毎度のFrançois Ozonだったかも。

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