12月29日の午後、SOHOのCurzonで見ました。
Michael Hanekeの新作で、このシアターでは監督の旧作特集上映が組まれるくらい歓迎モードで評判もよいふうだったのだが、むかーし”La Pianiste” (2001)とか見てどこがおもしろいのだかさっぱりだったことがあるのと、この監督でこのタイトルで”Happy End”で終わるわけねえな、とか、でも
Isabelle Huppertさんが出ているし、とかいろいろ思って、とにかく年が明ける前に見ておくことにした。
予告を見た限りでは表面は裕福で幸せそうな一族の裏側で静かに進行している闇修羅場を描いたような、こないだ見た Sally Potterの”The Party” (2017) を思い起こさせるかんじもあって、でも当然のように違うところもいっぱいあった。
冒頭、画面が小さい長方形のスマホの動画映像で、そこに吹き出しで実況コメントが入る。洗面台に向かう女性の寝支度とか、クスリを飲ませたら動かなくなっちゃったハムスターとか。これを撮ったのは母が同じクスリを飲んで昏睡状態になってしまった13歳のEve (Fantine Harduin)で、母がそうなってしまったので彼女は疎遠になっていた父Thomas (Mathieu Kassovitz) - 今は別の女性と結婚している – のカレーにある邸宅に引き取られる。
あとは突然建築現場が崩落するビデオ映像があって、この建物を持っているのがAnne (Isabelle Huppert)とGeorges (Jean-Louis Trintignant)のLaurent一族で、他にはEveを引き取ったThomasとか酒ばかり飲んでいるPierre (Franz Rogowski)がいて、この事故に責任を感じたPierreは被害者の家族のところに訪ねていってぼこぼこにされたりしている。
物語はカレーにあるLaurent一族の邸宅を中心に、ここに引き取られて、でもすることもないのでずっとスマホをいじっているEveと、ここの主で、車イスに縛られ認知症に苦しむGeorgesと、新しい家族と共に幸せそうだが実は裏でやらしいことをしているThomas と、難民問題 - 邸宅のあるカレーには難民キャンプがある - や労働者差別に心を痛めて酒浸りのPierreと、いちばんまとも(そう)でばりばりのAnneの、それぞれの衝突や確執を追う。特にひとりぼっちでこんなところに連れてこられたEveとGeorgesとの、EveとThomasとの不機嫌・不寛容全開の静かな衝突、このふんぞり返った一族が大っ嫌いでぶち壊してやりたいPierreといった若者たち(という程強調されていないけど)の像がおもしろい。
そして、家族のあれこれとは別にスマホを通して世界を見ている(かのような)Eve、難民問題に没入しすぎて身動きがとれなくなってしまうPierre、というふたつのティピカルな世界への接し方を通して、いまの”Happy End”のありようを綴る。”Happy”とは誰の、どんな、どの程度の状態のことを言うのか、とか。そしてそこにおける”End” (Ending?) の意味とは、とか。
ていうところまで見なくても、ばらばらな家族(もう家族なんてどうでもいいと構成員みんなが思っているような家族)がじたばたする様を描いたホームコメディ、と見てしまってもよいのかもしれない。 それぞれの関係の線が見えにくいのと思わせぶりな長回しにうんざりするところもあるけど、ラストのパーティのところはなんか痛快だし。
あと、やはりIsabelle Huppertさんはここでも最強なのだった。
1.04.2018
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