16日の火曜日、東京とかで見た美術系のあれこれをまとめて。見た順番で。
この日は人間ドックがあって、ふつうはお昼を食べて13時過ぎまでかかるもんなのに、この日は11時半くらいで終わってしまった。次のやつの予約は14:30で、これを前に倒せないか聞いてみたのだが動かせなかったので、2時間半くらい空きができた。のでまずは上野にいく。
生賴範義展 @ 上野の森美術館
いろんな男子(だよねえ)がわーわー言っていたのでやはり見たほうがよいのかしら、くらい。
わたしにとってこの人は『帝国の逆襲』のポスター(これは出た当時ものすごくはまった)とサンリオSF文庫くらいなのだが、他にもいろいろ出ていて、それにしても全体に漂う昭和の香りみたいなこれってなんの成分なのかしら? とか思いながら見ていた。
南方熊楠-100年早かった智の人 @ 国立科学博物館
熊楠が知の巨人であることはもう明らかで、知りたいのはその膨大な集積結果どーん、のほうではなくて、彼がほぼ未開の地だった海外に出てそこの図書館とかに通って、あまりよく知らない言葉で書かれた文献にあたりながら(フィールドワーク)自分の問題意識に沿う形でどんなふうに知を選り分けて撚って紡いでいったのか、のほうで、それがよくわかる展示になっていたのでよかった。
彼がロンドンにいたときの徘徊地図があって、割とご近所であることがわかったのでもう少しあったかくなってきたらお散歩してみよう。
国立近代美術館の『北斎とジャポニスム』はパスした。 ジャポニズム、ってよくわかんないのよね。 ここから竹橋に移動。
没後40年 熊谷守一 生きるよろこび @ 東京国立近代美術館
初期の混沌にまみれた「轢死」(1908)の圧縮感がすごくて、あの塗り固められた壁の奥からあの独特の(境界)線とか盛土のような塊の面とかが延びたり生えたりしてくるさま(を辿っていくの)がおもしろい。その線と面の冒険がマティス的な反重力の調性に向かっていったのは、そうなっていっちゃったのだろうなー程度に、晩年の仙人みたいな世捨て人みたいな貌を見て思った。
ここに来るときのひそかな楽しみになっているMOMATコレクション、今回のもよかった。
特別展のに連なる「生きるよろこび」というタイトルで、速水御舟の『蟻』とか(蟻なのよ蟻)。竹内栖鳳の『宿鴨宿鴉』とか、松林桂月の『春宵花影図』とか、小杉放菴(未醒)の『椿』(の猫)とか、岡堅二の『楽苑』とか、動物の絵が好きな人には必見なのがいっぱいだよ。
あと、2階のギャラリー4での『難民』という小特集も。「難民」という言葉がなぜ重く響いてくるのか。「難」というのがどことどこの間(or 我々の目と画布のあいだ?)で起こっていることなのかがよくわかる熱のこもった内容だった。
ここまで見て一旦もどってお医者関係が終わったのが15時過ぎ、そこからえいっと横浜に行ってみる。
石内 都 肌理と写真 @ 横浜美術館
皮とか殻とか皮膚とか布とか、存在を外側で覆ったり包んだり囲ったりするなにかがあるとして、その外側の覆いは時間の経過と共に劣化したり朽ちたりしていくもので、これが肌の理(はだのことわり)- 肌理として現れて、写真というのはその理(ことわり)のある断面を切り取ることでそこまでの、これからの時間の経過全体を見渡せるようにする。 がさがさの肌理の向こうに透けてみえる柔らかそうななにか、を。そういうものを撮るのだという強い意思に貫かれた写真たちだとおもった。
なんでそういうものを撮るのか? そこにこそ時間というものの謎、存在というもの(ついでに死というもの)の不思議がぜんぶある・現れてくるから。
70年代の横須賀のとか、古い建物のシリーズがぐっとくるのは、単に自分が年寄だから。たぶん。
カタログを買ったのだが置いてきてしまったことにさっき気づいてしょんぼり。
生誕100年 ユージン・スミス写真展 @ 東京都写真美術館
20日の土曜日の午後、「ライオンは今夜死ぬ」の後で見ました。メインでやっていた(と思われる)展示『アジェのインスピレーション - ひきつがれる精神』のほうは、いろいろ立ち止まって考えてしまいそうな気がして、この日は滞在最終日で立ち止まって考えている暇はなかったのでパスした。
石内都が肌理の作家だとすると、ユージン・スミスは輪郭の作家で、慎ましく肌理なんて言っていないで存在そのものを浮かびあがらせるべく生の輪郭がぶっとく前面に現れる。 なんでそこまでしようとしたのかというと、それらは絶対に世に知らしめる必要のあるなにかで、そうすることでくすんだこの世の中を変えることができると信じていた、写真がもたらす正義とその可能性を信じていたからだとおもう。 彼がいたら難民をどんなふうに撮っただろうか。
見れなくて残念だったのは、銀座のシャネルでやっていたFrank Horvat。
谷川俊太郎も少しだけ - 見たら文句言ったかも、だけど。
1.27.2018
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