少し遡って少しだけ書いておく。
BFIでは7月~8月に"Gross Indecency - Queer lives before & after the 67's Act"という特集(訳すと『とっても卑猥 - 67年以前と以後のクィアーの生きざま』てかんじ? )をやっている。 英国のCriminal Law Amendment Act 1885のSection 11 - ここで実際に性交していなくても男同志でやらしいこと -"Gross Indecency” -をしていたら罰することができるようになった- そいつが廃止されて50年という節目の回顧なのだが、毎年やっているLBGT Film Festivalとは別枠でものすごく力を入れてやっていて、その中で見た何本かを。
Victim (1961)
7月22日の晩に見ました。これはBFIだけじゃなくて他の映画館でもリバイバルで上映されていた。
最初になにかを抱えた若者が警察に追われて逃げていて、友人や本屋のおじさんや弁護士Melville Farr(Dirk Bogarde)に助けを求めていくのだが困惑されて冷たくされて、結局彼は逃げきれずに捕まって、やがて獄中で自殺してしまう。
彼が持っていたブツはこれを周囲にばらされたらえらいことになりますよ、て組織が脅迫のネタで使う写真とかでMelvilleのところにも警察がやって来て、こういう写真 - 車の中で彼と青年がなにかしているような - が見つかったのですが、と。 法曹界のエースとされて妻もいて、の彼にとって全てを失うやばいやつだったのだが、彼がとった行動は。
LBGT云々ていうよりもノワールや犯罪サスペンスとして最後までものすごく見応えがあって、なんといっても苦悩しつつも行動を起こすDirk Bogarde(モノクロ苦悩顔が似合う)がめちゃくちゃかっこいいの。
こういう話はいっぱいあったんだろうなー。
The Killing of Sister George (1968)
8月3日の晩に見ました。
64年のFrank Marcusの芝居を Robert Aldrichが映画化したもの。
June Buckridge (Beryl Reid) は長年続いているTVのソープオペラ"Applehurst"の出演者で、相当長く出ているので周囲からは番組でのニックネームの"George"で呼ばれていて、そこでの男前なキャラクターも自身に染みついていて、彼女は自分の家に若い娘のAlice - "Childie"(Susannah York) を囲っているのだが、彼女が愛想をつかして出て行っちゃうのではないか、というのを病的に恐れている。 番組の方ももう長いので切られる可能性が十分にあるし周りの何人かは切られていくし、それを握っているプロデューサーのMrs. Croft (Coral Browne)がいちいち気に食わないのだが、彼女がAliceのほうに近寄っていくのを知って。
長く続いたドラマの役が日常も含めていろんなものを支配したり縛るようになっていて、その縛りがなくなったとき、つまり"George"が殺されたときに何がどうなってしまうのか - もう若くないGeorgeの怒りとか焦りとか哀しみを主に女性3人の閉じた関係のなかで無情に、容赦なくサディスティックに叩き出していく演出がすごくて怖くて、そのへんのダイレクトな凄惨さ、でいうと、女たちのドラマ(でもないか)だった”The California Dolls"(1981)なんかの数百倍ダークで恐ろしい。 役がいつまでも続かないことも、Aliceとの関係が続かないことも、それが御法度であることもおそらくGeorgeには十分にわかっているのだが、どうしろってんだ牛にでもなるか、ていう魂の叫び。 舞台版でも最初からGeorgeを演じていたBeryl Reidがすごすぎるの。 特にラストなんて。
On Trial: Oscar Wilde (1960) + discussion
7月3日の晩に見ました。 上映の後にBFI関係者を含めたディスカッション。
Oscar Wildeの裁判 - 最初にあげたCriminal Law Amendment Act 1885のSection 11が適用された具体的なケースの裁判の過程を忠実かつ正確に再現したもの、ということだったのだが、半分以上がものすごく難しい法廷英語の嵐で、はっきり言ってちんぷんかんぶんだった。 ただその後のディスカッションで、この適用(彼のケースを有罪とすること)がどれだけ後に深刻な影響をもたらすことになるのか、は当時相当に真剣な議論がなされたし、こうして記録に残されて今現在も検証したり振り返ったりできるのだな、ということはわかった。 だーかーら記録の破棄なんてとんでもないことなんだってば。
BFI(国の機関)が、なんでこんなにこの問題 - LBGT - に力をこめて繰り返し特集をやっているのか - BFIだけじゃなくてBBCでも特集番組を結構やっている - というと、これが人権問題に直結するからなの。 50年前(ほんの50年前)の英国は国レベルで自国民に対して重大な人権侵害をしていた、結果としてカウンターも含めて様々な文化が培われたかもしれないけれど、そのことに対して思いっきり反省して二度とこういうことが起こらないようにする、そういうことなのだと思うし、それをやって損なわれるものなんて、何もないよね。
繰り返すと、LBGTは個々人の、特殊な嗜好や性癖の問題ではなくて人権のありように直結することだ。 それを義務教育から外すとか言っているどっかの国は正しい人権感覚や意識の醸成を放棄している(ように見える)、ていうことなんだよ。 人権に関しては自分の国はこうだから(それでいい)、ていう話じゃないの。 言葉とおなじで他の国の人たちときちんとしたコミュニケーションができなくなるよ、そんなんでいいの? っていうくらい重大なことなのにメディアはぜんぜん騒がないし、もう日本て国はほんとうに鎖国して幼児化退行してあの時代に戻りたいのだな。 しんでろ。
8.14.2017
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