8.22.2017

[film] Entertaining Mr.Slone (1970)

BFI SouthbankでやっているJoe Orton原作の映画特集- "Orton: Obscenities in suburbia"から見たやつを纏めて書いておく。 まだいくつか上映されているけど、とりあえず。
こちらが勝手にイメージしていたLBGTQとの匂いはほとんどしない、英国的なきっついブラックユーモアとドタバタ - Monty PythonとかJonathan Swiftとか - の連続で、最後もなんだこれ、みたいな変なところに着地して知らんぷり(あれ、神さまは?)、みたいな。

What the Butler Saw (1987)

9日の晩にみました。

69年3月に初演されたJoe Orton最後の戯曲をBBC2の"Theatre Night"ていうシリーズが87年にTVドラマ化したもの。
精神科医のオフィスで秘書の求人を見てやってきた女性になんでか服を脱ぎたまえって命じたところに彼の妻が入ってきたので裸の彼女を診察台のカーテンの後ろに隠して、その上に妻と関係のありそうなホテルのポーターとか監察できた別の医者とか警察とか、こいつら全員変人で、横から後ろから勝手に現れてはしょうもないタイミングで絡んできて、みんながみんなその場で適当なことを言ってなんとかしようとするので収拾つかなくなって大混乱になって、最後もなんかとんでもないところに行って全員顔を見合わせてしまう。 
これがOrtonの映画に触れた最初のやつだったので結構びっくりした。

Entertaining Mr.Slone (1970)

12日の晩にみました。 64年の戯曲の映画化。
さえない中年のおばさんKath (Beryl Reid)が墓場に転がっていた得体の知れない青年Sloane (Peter McEnery)を拾って連れて帰り自分の家に間借りするように勧めてペットにすると、そこに暮らす彼女の父Kempとは衝突するのだが、兄のEdには彼のピンクのでっかい車 - Syd Barrettが所有していたやつだって - を運転させて貰ったりつけあがってだんだん態度がでっかくなっていって、間借り人が宿主をいいように支配して、と思ったら最後はあらら。

郊外の閉ざされた一軒家の奥で繰り広げられるエロにグロにSMに、相当陰惨なお話だと思うのに、そんなにじっとりしたかんじにならないのはなんでなのか。

Kathを演じたBeryl Reidは少し前に見た "The Killing of Sister George" (1968)でも愛に狂って、愛を失うことを恐れてどうしようもなくなっていく孤独な女性を演じていたが、これもまた凄まじくて戦慄する。 彼女って、TV版の"Tinker Tailor Soldier Spy"と"Smiley's People"でConnie Sachsを演じているのね。 見たいなあ。

音楽はGeorgie Fameさんでした。

Genius Like Us (A Portrait of Joe Orton)

13日の午後にOrton本人が出演したTV番組のフッテージとか家族や関係者がいろいろ証言する昔のドキュメンタリー番組を寄せ集めた枠があった。
ふむふむなるほどなー、ばっかりだったのだが、彼が図書館の本に悪戯して6ヶ月刑務所に入れられた件についてIslingtonの図書館のおじさんが悪戯された本ひとつひとつを真面目に丁寧に解説してくれるとことか、しみじみおかしい。こんどIslingtonのJoe Ortonが住んでいたあの辺に行ってみよう。

あと、Beryl Reidさんが自身のTVショーの寸劇で、ゲストのMalcolm McDowellを"Entertaining Mr.Slone"のSlone役にしてきゃーきゃーはしゃぎながら彼の服を剥いていくところとか、"What the Butler Saw"の95年のドラマ化でBrian CoxやClive Owen(ぜんぜん下っ端)が出ているシーンの抜粋とか、面白いのがいっぱい。

Loot (1970)

13日の夕方、Orton寄せ集めのあとに続けて見ました。
これも一軒のおうちを舞台に繰り広げられるどたばたで、悪巧みしているバカな若者ふたり組がいて銀行強盗して奪った金をどこに隠すかで、ふたりのうち一人のママが亡くなったのでその棺桶に、とかいうのだがそこに警部(Richard Attenborough)とかママの死に立ち会っていた悪ナース(Lee Remick)とかいろいろ絡んできて、じたばたしすぎてわかんなくなっていくお金と死体の在り処を巡ってどっちがどっちの大騒ぎになるの。
これも誰のせいでもない? ようなところでどたばたが勝手に連鎖して収拾がつかなくなっていって、最後はそっちか、みたいな。

これもひとによっては不謹慎極まりない、て言うのだろうがそれをちゃかちゃか落語みたいにやっちゃうのがOrton、なのかしら。

そして、これらのとっちらかったどたばた劇を見たあとで、もういっかい"Prick Up Your Ear"で描かれたOrton像に立ち返ってみると、なるほどなー、って改めて。 理由はないけどとにかく勢いと熱量だけはあって、ただただ突っ走って散らかし放題散らかして、たいした理由もなくぷつんと切って、いなくなってしまう悪戯小鬼、みたいな。

こうして浮かびあがる像があって、そこで浮かびあがった像の不在もまたくっきりと。後から。

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