しばらく邦画が続いたので洋画も~ 程度。 15日の晩に銀座でみました。『孤独な天使たち』。
英語題は"Me and You"で「ぼくときみ」。せいぜい「ぼくとオリヴィア」くらいなんだけど...
Bernardo Bertolucciの新作。10年のMOMAのレトロスペクティブに車椅子で登場した彼が、そのとき撮っていると言っていた新作はこれだったのね。(ちなみにそのときにかかったのは『暗殺のオペラ』だった)
冒頭、明らかにお金持ちのアパートからOvalの螺旋階段をぐるりと降りてくる主人公(ロレンツォ)のヘッドホンで鳴るのが、The Cureの"Boys Don't Cry"で、エンディングでは、Bowieの"Space Oddity"のイタリア語版と英語版が高らかに鳴り響く。 この2曲に挟まれた少年の映画が悪いわけがあろうか。
ロレンツォ(14歳)はちょっと過保護に育てられたマザコンぽい子で、友達もいなくて、でも神経質で引込み思案の彼がスキー合宿の申し込みをしたというのでママは喜ぶ。
でも実際にはスキーの支度していってきますーと言って、バスには乗らずにその代金をちょろまかし、7日分の食糧調達して、ペットショップで蟻が入った水槽を買って、合鍵をこさえて、誰も入ってこない自分のアパートの地下室に閉じこもるの。 そこに寝床をこさえていくらでも音楽聴いたり本読んだり自堕落したりし放題。 誰もがやるようなひとり基地ごっこを。
そうやってひとり楽しく楽しみはじめたころに、闖入者が現れる。 ヤク中の義姉(母親がちがう)のオリヴィア(23歳)で、蓄えておいた食べものも飲みものも遠慮なく取っちゃうし、ゲロ吐いたりうなされたりうるさいし、蟻の水槽も割っちゃうし男呼びこむし、怒るとみんなに言いふらすから、と脅したり、厄介で面倒で散々なの。
でも一触即発の殺し合いにはならなくて、お互い溜息をつきながら少しづつ寄っていって、そうして7日間が過ぎて、ふたりはちょっとだけ大人のお別れとやさしいハグを。
ロレンツォ役の子がよくて、髭が生え始めて吹き出物だらけで青い目で、RHCPのFleaの若い頃みたいな小汚く生臭いかんじで、キャラクターの生きているかんじでいうと『分身』並みだったかも。
オリヴィアもいかにもいそうな、そこにいるだけでいらいらやかましいオーラを放つ猫で。
彼と病院にいるおばあちゃんとのエピソードもよいの。
"Space Oddity"のところはそりゃ出来すぎ、とわかっているのにやられてしまう。 初期のBowieというのはそういうものだから。
最初と最後の曲(この2曲は大人が選んだかんじ)以外に、ロレンツォが聴いているのは、MuseにRHCPにArcade Fire。 地下に籠るような暗い目のガキがこんなのを聴くか? というのはちょっとひっかかるけど。
ちなみに、原作本の冒頭にはF. Scott Fitzgeraldの"The Crack-up" -『崩壊』とAimee Mannの"Save me"の一節が引用されている。
原作の終りはちょっと辛いのだが、映画の終り、朝の光のなか、路地のあっちとこっちでふたりが離れていくところの美しさは間違いなく映画だけのもので、あとにふたりの誓いがぽつんと残る、その余韻もよくてさー。
5.24.2013
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